間島出兵

間島出兵（かんとうしゅっぺい）

間島出兵は、1920年（大正9年）に日本の陸軍が、中国の吉林省延辺朝鮮族自治州にあたる間島地域で行った軍事作戦です。この作戦は、日本の統治に抵抗する朝鮮人独立運動家や、地域で活動していた匪賊、馬賊などを鎮圧・掃討することを目的としていました。

背景

1910年の韓国併合後、日本の支配を逃れた一部の朝鮮人は、中国やロシア領内へ亡命し、抗日宣伝や反日教育を行っていました。1919年の三・一運動を契機に、間島地域では独立軍と総称される武装組織が活発化し、居留地の朝鮮人から物資を調達したり、中国官憲やロシアの過激派と連携して勢力を拡大していました。日本側は、これらの武装組織に関わる朝鮮人を「不逞鮮人」と呼び、中国側に討伐を要請していましたが、成果は得られませんでした。

1920年に入ると、ゲリラ事件が頻発しました。朝鮮銀行券の強奪事件や、面長・面書記の銃殺事件などが起こり、同年6月には、朝鮮人武装組織が豆満江を渡って日本の警察や守備隊と銃撃戦を起こしました。この事件をきっかけに、日本軍は本格的な追撃を開始し、鳳梧洞（ほうごどう）の戦いが発生しました。この戦いで日本軍は勝利したものの、上海の大韓民国臨時政府は誇大な戦果を発表し、韓国政府も現在に至るまでこの戦いを重要視しています。

同年8月には、朝鮮総督府の嘱託を受けた馬賊が独立軍の根拠地を襲撃し、9月には張作霖が独立軍の討伐を開始するなど、情勢は緊迫していました。同年9月には、琿春（こしゅん）で馬賊による襲撃事件が発生し、日本領事館が焼失、多数の死傷者が出ました。これを「不逞鮮人」の仕業と断定した日本政府は、居留民保護を名目に間島出兵を閣議決定し、中国側との交渉を開始しました。

経過

間島出兵には、第19師団を中心に、第14師団や第11師団、第13師団の一部が参加しました。作戦の主体となったのは第19師団で、他の部隊は封鎖や示威行動を行いました。第19師団長の高島友武中将は、作戦を二期に分け、第一期は武装集団の根拠地掃討、第二期は残党掃討、武器の押収、親日的な地域宣伝を行いました。

主な戦闘

青山里（せいざんり）の戦い： 東支隊（山田隊）が青山里付近で独立軍と交戦。日本軍は一時撤退を余儀なくされました。
漁朗村（ぎょろうそん）の戦い： 騎兵連隊が金佐鎮率いる武装組織の襲撃を受けました。
* 古洞河（こどうか）の夜襲： 東支隊長自らが率いる部隊が、洪範図（ホン・ボムド）率いる部隊を夜襲しました。

これらの戦闘で、日本軍は独立軍に一定の打撃を与えたものの、独立軍は安図県方面へ撤退しました。

結果

間島出兵は、独立軍の掃討に一定の成果を挙げましたが、朝鮮と中国の間の間島問題は未解決のままでした。満州を逃れた朝鮮人武装組織は、ロシアの自由市に集結しましたが、内部対立から壊滅しました（自由市惨変）。青山里の戦いで指揮を執ったとされる金佐鎮は、その後暗殺され、洪範図はカザフスタンへ強制移住させられ、その地で没しました。

間島出兵後も、間島地域では共産党暴動や排華事件が発生し、1931年の満州事変後も抗日パルチザンが活動を続けました。

間島惨変（かんとうさんぺん）

間島出兵の過程で、日本軍による朝鮮人の虐殺事件が発生したとされています（間島惨変、庚申惨変）。韓国側の主張では、数千人が虐殺され、家屋や学校、教会などが焼き払われたとされていますが、日本側の資料では、射殺された朝鮮・中国人の数は500人余りであるとされています。

間島出兵は、朝鮮独立運動に大きな影響を与え、その後の日韓関係にも深い影を落としました。

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