阿部謙夫

阿部謙夫：北海道の発展に貢献した多才な人物

阿部謙夫（あべ しずお、1894年4月13日 - 1972年1月2日）は、技術官僚、実業家として、日本の、特に北海道の発展に大きく貢献した人物です。

若き日の研鑽とキャリアの始まり

札幌に生まれた阿部は、幼少期から優秀な成績を修め、第一高等学校、東京帝国大学工科大学土木工学科を卒業しました。逓信省に入省後は、九州逓信局で水力課長として河川水量の調査に携わり、発電事業の基礎を築きました。その後、東京市道路局では、関東大震災後の復興事業として道路のアスファルト舗装に尽力。鉄道省では、信濃川発電所の建設や丹那トンネル工事における出水原因の調査など、国家のインフラ整備に貢献しました。

北海道新聞社、そして北海道放送へ

1945年、阿部は北海道新聞社の取締役となり、翌年には社長に就任。労働争議の収束に成功し、経営を安定させました。1951年には、北海道初の民間放送局である北海道放送（HBC）を設立し、初代社長として放送事業の発展に尽力しました。テレビ放送開始時には、手稲山に送信所を建設するという先見の明を発揮し、広範囲な地域への電波送信を実現しました。北海道新聞社社長を辞任後は、北海道放送の社長に専念し、メディアを通じた地域社会への貢献を続けました。

多岐にわたる社会貢献

阿部は、本業の傍ら、北海道総合開発委員会委員、共同通信社理事会長など、数多くの公職や社会団体の要職を歴任しました。北海道肢体不自由児福祉協会会長、北海道更生保護協会会長、札幌交響楽団理事長など、福祉や文化振興にも力を注ぎました。特に札幌交響楽団に対しては、設立当初から資金面で支援を行い、その発展に大きく貢献しました。

水文学者としての一面

阿部は、技術者としてだけでなく、水文学の研究者としても知られています。1926年には『土木学会誌』に論文を発表し、1933年には日本初の水文学の教科書である『水文学』を出版しました。晩年、水文学者の山本荘毅との出会いを果たし、自身の研究が評価されたことを大変喜んだといいます。

晩年と死

1972年、阿部は食道癌により生涯を閉じました。その功績を称えられ、従三位勲二等旭日重光章が追贈されました。墓所は札幌市の平岸霊園にあります。

阿部謙夫は、技術者、経営者、社会貢献家として、多岐にわたる分野で卓越した才能を発揮し、北海道の発展に大きく貢献した人物として、その名は永く記憶されるでしょう。

栄典・受賞歴

1940年（昭和15年）11月 - 紀元二千六百年祝典記念章
1942年（昭和17年）2月 - 勲四等瑞宝章
1945年（昭和20年）7月 - 鉄道功績章
1945年（昭和20年）10月 - 正四位勲三等瑞宝章
1960年（昭和35年）11月12日 - 紺綬褒章
1962年（昭和37年）4月19日 - 藍綬褒章
1963年（昭和38年）10月26日 - 紺綬褒章飾版
1965年（昭和40年）11月3日 - 勲二等瑞宝章
1966年（昭和41年）11月3日 - 北海道文化賞
1968年（昭和43年）8月1日 - 札幌市創建百年記念式 開拓功労者表彰
1971年（昭和46年）11月6日 - 北海道新聞文化賞
1972年（昭和47年）1月2日 - 従三位勲二等旭日重光章
* 1973年（昭和48年）9月1日 - 北海道開発功労賞

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