陝甘総督

陝甘総督について

陝甘総督（せんかんそうとく）は、清朝の重要な地方官職の一つであり、現在の中国における陝西省と甘粛省を管轄しました。満州語では「šansi g'ansu -i uheri kadalara amban」と表記され、その役割は単なる地方行政官にとどまらず、軍事面においても大きな権限を持っていました。この官職は、清朝の成立初期からその変遷を経て、地域の安定と発展に大きく寄与しました。

沿革

陝甘総督の歴史は、清朝の初期に遡ります。

1644年（順治元年）： 陝西総督が設置され、総督府は固原に置かれました。この時、四川省も管轄下にありました。
1657年（順治14年）： 総督府は漢中に移されました。
1664年（康熙3年）： 山陝総督と改称され、山西省も管轄するようになり、総督府は西安に移転しました。
1675年（康熙14年）： 陝甘総督と再び改称され、山西省は管轄から外れ、山西総督が新たに設置されました。
1680年（康熙19年）： 山陝総督に名称が戻され、山西総督が廃止されたため、山西省の管轄も再び山陝総督の元に戻りました。
1723年（雍正元年）： 陝甘総督と再び改称。山西省は管轄から外れ、山西巡撫がその任を担うことになりました。
1731年（雍正9年）： 陝西省と甘粛省のみを管轄し、四川省は管轄から外されました。
1736年（雍正13年）： 再び四川省を管轄下に置き、川陝甘総督と改称されました。
1754年（乾隆19年）： 総督府が蘭州に移され、甘粛巡撫が廃止され、総督がその役割を兼任することとなりました。
1759年（乾隆24年）： 甘粛総督が設置され、粛州に総督府が置かれ、陝西省も管轄下に置かれました。川陝総督府は四川に移されました。その後、陝甘総督が復活し、蘭州に総督府を置き、巡撫を兼任しました。
1882年（光緒8年）： 新疆省が設置され、陝甘総督の管轄下に置かれました。

このように、陝甘総督の管轄範囲は時代とともに変化し、その名称も複数回変更されました。これらの変遷は、清朝の地方行政における試行錯誤と、各地域の政治的、軍事的状況の変化を反映しています。

歴代の陝甘総督

数多くの官僚がこの重要な役職を歴任しました。以下に、主な歴代陝甘総督を列挙します。

イェンギシャン（尹継善）（1748年-1749年, 1750年-1751年, 1753年署理）
瑚宝（フボー）（1749年）
黄廷桂（1751-1753年, 1755-1759年）
永常（ユンチャン）（1753年-1754年）
劉統勛（署理，1754-1755年）
ウダシャン（呉達善）（1759年, 1766年-1768年, 1771年）
楊応琚（1760年-1766年）
明山（ミンシャン）（1769年-1771年）
文綬（ウェンシェウ）（1771年-1772年）
海明（ハイミン）（1772年）
レルギェン（勒爾謹）（署理，1772年, 1772年-1776年, 1776年-1781年）
畢沅（署理，1776年, 1783年）
李侍尭（1781年-1784年）
フカンガン（福康安）（1784年）
慶桂（キングイ）（署理，1785年）
永保（ユンボー）（署理，1786年）
勒保（レボー）（署理，1787年, 1788年-1795年）
宜綿（イミン）（1795年-1796年, 1797年-1799年）
陸有仁（暫署，1796年-1797年）
英善（インシャン）（代署，1797年）
恒瑞（ヘンシュイ）（署理，1799年）
松筠（スンユン）（1799年-1800年, 1809年）
長麟（チャンリン）（1800年-1801年）
恵齢（フイリン）（1801年-1804年）
ナヤンチェン（那彦成）（署理，1804年, 1810年-1813年, 1822年-1825年）
ウェシブ（倭什布）（1804年-1806年）
全保（チュワムボー）（1806年-1807年）
方維甸（署理，1806年）
長齢（チャンリン）（1807年-1809年, 1813年-1814年, 1817年-1822年, 1825年）
蔡廷衡（護理，1807年）
和寧（ヘニン）（署理，1809年, 1817年）
先福（シャンフ）（1814年-1817年）
高杞（ガオキ）（署理，1814年）
朱勲（署理，1821年）
鄂山（オシャン）（署理，1825年, 1826年, 1830年）
楊遇春（署理，1825年-1826年, 1827年-1835年）
フスンゲ（瑚松額）（1835年-1840年, 1840年署理）
ネルギンゲ（訥爾経額）（1840年）
エンテヘンゲ（恩特亨額）（署理，1840年-1841年, 1841年-1842年）
フニャンガ（富呢揚阿）（1842年-1845年）
恵吉（フイギ）（1845年）
鄧廷楨（署理，1845年）
ブヤンタイ（布彦泰）（1845年-1849年）
林則徐（署理，1845年）
楊以増（署理，1847年）
キシャン（琦善）（署理，1849年, 1849年-1851年）
サインガ（薩迎阿）（暫署，1851年）
裕泰（ユタイ）（1851年）
シュヒンガ（舒興阿）（署理，1851年, 1851年-1853年）
易棠（署理，1853年, 1854年-1856年）
楽斌（ロビン）（1856年-1860年, 1860年-1861年）
常績（チャンジ）（護理，1856年）
林揚祖（署理，1859年, 1860年二次署）
福済（フジ）（署理，1860年）
麟魁（リンクイ）（1862年）
沈兆霖（署理，1862年）
シリン（熙麟）（1862年-1864年）
恩麟（エンリン）（護理，1862年, 1864年）
楊岳斌（1864年-1866年）
ドゥヒンガ（都興阿）（署理，1864年）
左宗棠（1866年, 1869年-1880年）
ムトゥシャン（穆図善）（署理，1866年, 1867年-1869年）
楊昌濬（1880年-1881年, 1888年-1895年）
曽国荃（1881年）
譚鍾麟（1881-1888年）
陶模（署理，1895年, 1896年-1899年）
魏光寿（署理，1899年, 1900年）
崧蕃（スンファン）（1900年-1905年）
何福堃（護理，1900年, 1901年二次護）
李廷簫（代護，1900年）
升允（シェンユン）（1905-1909年）
* 長庚（チャンゲン）（1909-1911年）

これらの総督たちは、それぞれの時代において地域の安定と発展に貢献しました。

陝甘総督は、清朝の歴史において重要な役割を果たした官職であり、その変遷は当時の政治状況や社会情勢を反映しています。この官職を通じて、清朝の統治機構の一端を理解することができるでしょう。

もう一度検索