陸上特殊無線技士

陸上特殊無線技士とは

陸上特殊無線技士（りくじょうとくしゅむせんぎし）は、電波法で定められた無線従事者の一種であり、陸上無線局の無線設備を操作するために必要な国家資格です。英語では「On-The-Ground Special Radio Operator」と表記されます。通称として「陸特」と呼ばれることもあります。

資格の種類

陸上特殊無線技士には、以下の4つの種類があります。

1. 第一級陸上特殊無線技士（一陸特）: 最も広範囲の無線設備を操作できる資格です。
2. 第二級陸上特殊無線技士（二陸特）: 一陸特に次いで広範囲の無線設備を操作できます。
3. 第三級陸上特殊無線技士（三陸特）: 特定の範囲の無線設備を操作できる資格です。
4. 国内電信級陸上特殊無線技士（国内電信）: 国内における無線電信の操作に特化した資格です。

これらの資格は、かつての特殊無線技士（多重無線設備）などが統合・再編されたものです。また、一部の資格は海上特殊無線技士の資格とみなされることもあります。

操作範囲

各級の陸上特殊無線技士が操作できる無線設備の範囲は、電波法施行令によって定められています。以下に、その概要を示します。

一陸特: 陸上無線局の多重無線設備（500W以下、30MHz以上）を制限なく操作できます。その他、二陸特・三陸特の操作範囲と同様の無線設備を操作可能です。
二陸特: 三陸特の操作範囲に加えて、中短波帯の無線設備や衛星波を利用したVSAT制御地球局、レーダーなどを操作できます。
三陸特: 地上波による通信に限定され、同報系防災行政無線、警察無線、消防[[無線]]、鉄道無線、タクシー無線、無人移動体画像伝送システムなどの技術操作が可能です。
国内電信: 船舶無線または航空無線以外のモールス電信による国内通信の操作が可能です。

なお、陸上特殊無線技士の資格では、アマチュア[[無線技士]]の範囲の操作は行えません。

無線設備の技術操作と通信操作

無線設備の操作は、「技術操作」と「通信操作」に大別されます。

技術操作: 無線設備の保守、点検、調整など、技術的な操作を指します。
通信操作: 無線通信を行うための操作を指します。

一陸特、二陸特、三陸特の操作範囲は主に技術操作であり、通信操作は簡易なものに限られます。モールス符号による無線電信の送受信を行う場合は、別途資格が必要です。

資格取得の方法

陸上特殊無線技士の資格を取得するには、以下のいずれかの方法があります。

1. 国家試験に合格する: 日本無線協会が実施する国家試験に合格する必要があります。
2. 養成課程を修了する: 総合通信局長の認定を受けた団体が実施する養成課程を修了する必要があります。
3. 学校で科目を履修し卒業する: 総務大臣が認定した科目を履修し、学校を卒業することで資格を取得できます。
4. 所定の資格および業務経歴を有する: 一部の資格と実務経験により、二陸特の資格を取得できます。

国家試験

国家試験は、年3回実施され、筆記試験またはCBT方式で実施されます。

試験科目:
一陸特: 無線工学、法規
二陸特: 無線工学、法規
三陸特: 無線工学、法規
国内電信: 法規、電気通信術（モールス電信）
試験手数料: 一陸特6,300円、二陸特・三陸特5,600円、国内電信級5,500円（2020年4月1日以降）

養成課程

養成課程は、認定された団体（認定施設者）が実施します。

受講資格: 一陸特の受講には、工業高等学校の電気通信科卒業以上の学歴が必要です。また、選抜試験に合格することでも受講資格が得られます。
授業形式: eラーニングによる授業も可能です。
修了試験: 筆記試験（多肢選択式）またはCBT方式で実施されます。

学校卒業

大学や高等専門学校で、総務大臣が認定した科目を履修し卒業することで、資格を取得できます。

資格および業務経歴

第一級海上[[無線通信士]]、第二級海上[[無線通信士]]、航空無線通信士の資格を持ち、6ヶ月以上の実務経歴がある場合、二陸特の資格を取得できます。

資格の活用事例

陸上特殊無線技士の資格は、さまざまな分野で活用されています。以下にその例を示します。

[[電気通信事業者]]: 携帯電話基地局などの無線設備の保守・運用
放送事業者: FPU、STL、ヘリテレシステムなどの無線設備の保守・運用
官公署: 警察無線、消防[[無線]]、防災行政無線などの無線設備の保守・運用
公共事業者: 電力、ガスなどの無線設備の保守・運用
陸運事業者: 鉄道無線、タクシー無線、バス無線などの無線設備の保守・運用
警備業者: 無線設備を用いた警備業務
テーマパーク: 無線設備を用いた業務連絡

これらの分野では、無線設備の設置・保守・運用において、陸上特殊無線技士の資格を持つ技術者が不可欠となっています。

変遷

陸上特殊無線技士の制度は、時代とともに変化を遂げてきました。

1990年: 一陸特・二陸特・三陸特・国内電信の操作範囲が規定されました。
1992年: 三陸特が盲人でも取得できるようになりました。
1996年: 長期型養成課程や科目確認校卒業による取得が可能になりました。
2009年: 営利団体が養成課程を実施できるようになりました。
2013年: 養成課程でのeラーニング授業とCBT試験が可能になりました。
2019年: 三陸特が身体機能の障害に関わらず取得できるようになりました。

その他の情報

任用の要件: 一陸特は、登録検査等事業者の点検員、判定員、技術基準適合証明の登録証明機関の証明員などの業務を行うことができます。
受験・受講資格: 電波法施行規則に定められた講習の受講資格や、甲種消防設備士試験の受験資格として活用できます。
技術基準適合の確認: 一陸特は、技適未取得機器による実験等の特例における届出に際し、機器が電波法の技術基準に適合することを確認できます。
実態: 陸上移動局や携帯局の管理者として、三陸特以上の資格が必要となる場合があります。警察無線や消防[[無線]]など、特定の無線局では、二陸特以上の資格が求められることがあります。
一陸特試験対策: 一陸特は、他の資格と比較して難易度が高いため、国家試験対策講座が開催されています。
海上系・航空系の無線従事者の陸特取得: 海上系・航空系の無線従事者が陸特を取得するための軽減策があります。

まとめ

陸上特殊無線技士は、無線通信技術の発展とともに、その需要が高まっている重要な資格です。無線通信に関わる仕事を目指す方は、この資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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