携帯局

携帯局とは

携帯局とは、無線局の種別の一つで、陸上、海上、上空といった場所を移動しながら、または特定の場所に留まって運用する無線局のことです。総務省の電波法施行規則によって定義されており、携帯電話とは全く異なるものです。

定義

電波法施行規則第4条第1項第13号では、携帯局を「陸上、海上若しくは上空の一若しくは二以上にわたり携帯して移動中又はその特定しない地点に停止中運用する無線局（船上[[通信局]]及び陸上移動局を除く。）」と定義しています。ここでいう「陸上」には、河川や湖沼などの水域も含まれます。また、携帯移動業務とは、携帯局と携帯基地局の間、または携帯局同士の間で行われる無線通信業務を指します。

開設の基準

携帯局の開設には、総務省令「無線局（基幹放送局を除く。）の開設の根本的基準」に基づいた以下の条件を満たす必要があります。

1. 運用目的：
地上・海上・上空の二つ以上の区域で移動しながら運用すること。
船舶や航空機の航行安全を目的としないこと。
船舶間または航空機間で移動しながら運用する場合も同様。
船舶以外の移動体（海上を航行するもの）や航空機以外の移動体（上空を航行するもの）で使用すること。
2. 移動範囲：
海上での運用は日本周辺海域、上空での運用は日本領土および周辺海域の上空に限る。
3. 無線設備：
持ち運びが容易であること。
航空機搭載の場合は、使用する周波数帯によって空中線電力に制限がある（1Wまたは5W以下）。
4. 通信の相手方と内容：
免許を受けようとする者の事業または業務遂行上必要最小限であること。
5. 使用者の制限：
免許人以外の者が使用しないこと。
6. 法令遵守：
開設目的や通信事項が法令に違反せず、公共の福祉を害さないこと。
7. 運用への影響：
他の無線局の運用や電波監視に支障を与えないこと。

概要

携帯局は、一般的なトランシーバーや携帯電話とは異なり、主に船舶や航空関係者が業務で使用する無線機を指します。かつてはヘリコプターからの空撮映像伝送にも用いられていましたが、近年では産業用ドローンなどの無人移動体にも利用が広がっています。

携帯局は移動局の一種であり、陸上での使用が主となる無線機は陸上移動局として免許されます。携帯局は、主に日本国内で使用され、通信の相手方は原則として事業者の他の携帯局または携帯基地局に限られます。船舶局や航空機局の代わりにはならず、海上・航空交通管制などの安全にかかわる通信には利用できません。

主な利用者としては、船舶・航空機の製造・修理業者、海運業者、ヘリコプターを運用する官公庁や報道機関、海事・航空関係の学校・研究機関などが挙げられます。また、無人移動体の操縦や画像伝送などの単方向通信にも利用されています。

免許・登録

原則として外国籍の者には免許は与えられませんが、電気通信業務を行う場合は例外として免許されることがあります。RZSSB方式や狭帯域デジタル通信方式の携帯局は特定無線局として包括免許の対象です。ほとんどの場合、技術基準適合証明等を受けた適合表示無線設備を使用するため、簡易な免許手続きが適用されます。空中線電力10mWを超える5GHz帯無線アクセスシステムの携帯局は登録局となります。

免許の有効期間は原則5年ですが、包括免許以外の場合は最初の免許に限り、4年を超え5年以内の5月31日までとなります。

用途

携帯局は、国家行政用（警察、海上保安）、放送用、一般業務用など多岐にわたる用途で利用されています。一般業務用には、近距離映像伝送や無人移動体画像伝送システムが含まれます。消防や水防、道路管理などにも用いられますが、これらの用途に当てはまらない場合にも携帯局として分類されます。

局数

包括免許の無線局免許状には開設可能な局数の上限が記載されますが、必ずしもすべてが稼働しているわけではありません。無線局登録状には局数は記載されません。自衛隊が使用する無線機は、免許・登録が不要なため、無線局数の統計には含まれません。

通信の相手方

携帯局の通信相手は、原則として同一免許人所属の携帯局または携帯基地局に限られます。ただし、他の免許人所属の携帯局・基地局との通信が許可されている場合もあります。これは、携帯移動業務の無線局が、原則として同一免許人内での通信に利用されるためです。

旧技術基準の機器の使用

旧技術基準に基づく無線設備は、一定の期限までしか免許されませんでしたが、コロナ禍により使用期限が延期されています。ただし、検定合格機器は設置が継続される限り使用可能で、再免許も可能です。

運用と操作

携帯局の運用は無線局運用規則に従って行われます。操作には、原則として第三級陸上特殊無線技士以上の資格が必要ですが、特定無線局や一部の簡易な操作は資格が不要です。

検査

特定無線局は落成検査が省略されます。定期検査は行われず、変更検査も落成検査と同様に扱われます。自衛隊の移動体無線機については検査が除外されます。

沿革

携帯局という種別は、電波法施行規則制定当初は存在せず、移動局として扱われていました。1958年に携帯局の定義が追加され、その後も何度か定義が変更されてきました。1971年に免許の有効期間が5年となり、1976年には現在の定義に近い形となりました。その後、電波利用料制度化、無線業務日誌の備付けの不要化、無人移動体画像伝送システムの制度化など、さまざまな制度改正を経て現在に至ります。

その他

携帯局は、携帯電話とは全く異なる無線局です。携帯電話端末は、陸上移動局として扱われます。

脚注

電波法、電波法施行規則、無線局（基幹放送局を除く。）の開設の根本的基準など、関連法令を参照してください。

関連項目

無線局
移動局
携帯基地局
携帯移動地球局

外部リンク

総務省電波利用ホームページ
ドローン等に用いられる無線設備について（その他）

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