陸佃

陸佃（りく でん、1042年 - 1102年）は、中国北宋時代の文人官僚であり、字を農師、号を陶山と称しました。越州山陰（現在の浙江省紹興市）の出身で、陸游の祖父にあたります。

神宗、哲宗、徽宗の三代に仕え、その才能を発揮しました。1070年（熙寧3年）には省試で首席（省元）となり、殿試でも第5位という優秀な成績で合格を果たしました。当初は王安石の弟子として知られていましたが、政治的な潮流の中で「新法・旧法の争い」においては、どちらにも偏らない中立の立場を貫きました。この姿勢は、彼の人物像を特徴づける重要な要素と言えるでしょう。

徽宗の時代には、尚書左丞（副宰相・参知政事にあたる）という उच्च職にまで昇りつめましたが、その後、元祐党禁（旧法党への弾圧）に巻き込まれ、不遇な左遷を経験することになります。政治の世界の厳しさを物語るエピソードです。

陸佃は、文人としても才能に恵まれており、多くの著作を残しました。現存する主なものとしては、以下のものがあります。

『埤雅』：『爾雅』の系譜に連なる名物学書・辞書であり、当初は『物性門類』という題名でした。博物学的な知識が豊富に盛り込まれています。
『爾雅新義』: 『爾雅』の研究書と考えられます。
『鶡冠子注』：『鶡冠子』の注釈書ですが、その質については評価が分かれています。
『陶山集』：陸佃の詩文集であり、彼の文学的な才能を知る上で貴重な資料です。

残念ながら散佚してしまった著作としては、『老子注』、『使遼録』、『礼象』などが挙げられます。

また、陸佃は交友関係にも恵まれていました。画家の李公麟とは親交があり、彼を官職に推挙したという逸話も残っています。また、『神宗実録』の編纂に参加した際には、黄庭堅と意見を巡って論争したこともありました。遼への使者も務めるなど、外交面でも活躍を見せています。

子には陸宰がおり、その子が南宋の愛国詩人として知られる陸游です。陸游の活躍は、祖父である陸佃の存在があってこそと言えるかもしれません。

陸佃は、政治家として、文人として、多岐にわたる才能を発揮し、北宋時代に確かな足跡を残しました。彼の著作は、当時の社会や文化を知る上で貴重な資料であり、今日においても研究の対象となっています。

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