陸栄廷

陸栄廷：旧桂系を率いた清末民初の軍人・政治家

陸栄廷（りく えいてい、1859年 - 1928年）は、清末から中華民国初期にかけて活躍した軍人・政治家です。チワン族出身であり、広西軍（桂軍）の創始者として知られています。李宗仁らの新広西派（新桂系）に対し、陸栄廷の桂軍は旧広西派（旧桂系）と呼ばれています。また、中華民国の初代広西都督を務めました。

生い立ちと初期の活動

陸栄廷は貧しい農家に生まれ、少年時代は盗賊や会党の一員として生計を立てていました。1882年、水口関の清軍に投降する一方で、現地の会党「三点会」にも加入しています。1884年の清仏戦争では清の正規軍として参戦しますが、終戦後に除隊され、再び盗賊に戻ります。しかし、フランス軍を相手にした活動が多かったため、民衆からは慕われていたと言われています。

清朝正規軍へ

1894年、陸栄廷は広西提督の蘇元春に招かれ、正規軍の管帯となります。1903年から1905年にかけて広西省で発生した会党の大規模な蜂起鎮圧に従事し、その功績が認められました。1904年冬には、両広総督の岑春煊から広西辺防軍「栄字営」統領に任命され、約4千人の部隊を統括します。この部隊が、後の桂軍の中核となります。

1907年12月、陸栄廷は竜済光らとともに、孫文らが起こした鎮南関蜂起を鎮圧。この功績により右江鎮総兵に昇進しました。

広西省の実権掌握

1911年11月、広西巡撫の沈秉堃が武昌起義に呼応して広西省の独立を宣言し、広西軍政府が樹立されると、陸栄廷は副都督に就任しました。その後、沈と王が広西省を離れたため、陸が実権を掌握。革命派との関係が悪かった陸はこれを鎮圧し、省政を主導するとともに、桂軍を確立しました。

1912年2月、袁世凱から正式に広西都督に任命され、1913年の二次革命では袁世凱を支持し、省内で蜂起した革命派を鎮圧。1914年に寧武将軍、翌年には耀武上将軍に任命されています。

護国戦争と広東督軍就任

1916年、陸栄廷は護国戦争が起こると、袁世凱打倒へと方針を転換。広西省の独立を宣言し、護国軍側に参加しました。この背景には、広東都督の竜済光を優遇する袁世凱への不満や、広東への勢力拡大の意図があったと指摘されています。袁世凱が失脚すると、桂軍は広東へ進攻し、竜済光を追放。陸栄廷は1916年10月に広東督軍に就任し、広東・広西両省を支配する両広巡閲使となりました。

護法軍政府での失脚

1917年、孫文が護法戦争を発動すると、陸栄廷は南方政府の重鎮としてこれを支持。護法軍政府の元帥に選出されますが、孫文の下風に立つことを拒否し、総裁就任に留まりました。その後、岑春煊を主席総裁に擁立し、桂軍が主導権を握りますが、権力独占や北京政府との融和姿勢が反発を招き、孫文ら他の総裁と対立。さらに、広東支配に対する広東人の反感も高まりました。

1920年7月、陳炯明率いる粤軍（広東軍）が陸・岑への攻撃を開始。同年11月までに桂軍は広東から駆逐され、広西へ撤退しました。

再起と最期

広東支配を諦めきれない陸栄廷は、北京政府の支援を受けて再進攻を計画しますが、1921年6月、孫文の指示を受けた陳炯明が粤軍を率いて広西省へ逆進攻。陸栄廷は下野を余儀なくされ、上海へ逃れました。

その後、陳炯明と孫文が決裂した隙を突いて、1923年に広西全省善後督弁に任命され、再び広西省の統治者となります。しかし、省内を掌握しきれず、沈鴻英の勢力や、李宗仁・白崇禧率いる新広西派（新桂系）が台頭。3勢力の対立が激化する中、1924年に陸は桂林で包囲され、南寧を占領されたことでさらに追い込まれます。桂林を放棄し、湖南省へ逃れた陸栄廷は、1924年10月に下野を宣言。1928年11月6日、上海で死去しました。

人物評価

陸栄廷は、盗賊から身を起こし、広西省の統治者にまで上り詰めた人物として、一定の評価を受けています。特に、広西省に近代化をもたらした功績は評価されています。彼を最終的に駆逐した新広西派の指導者たちも、陸本人に対しては必ずしも悪感情を抱いていなかったと伝えられています。

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