隆の鶴伸一

隆の鶴伸一（たかのつるしんいち）

隆の鶴伸一は、1976年 6月18日に鹿児島県出水市で生まれ、鳴戸部屋に所属していた元大相撲力士です。本名は積山伸一（せきやましんいち）で、身長188cm、体重175kgという恵まれた体格の持ち主でした。特徴的な長く伸びた揉み上げと、左四つからの寄りを得意とする力士として知られています。最高位は西前頭8枚目（2003年3月場所）で、現在は年寄・田子ノ浦として相撲界に携わっています。

生い立ちと入門

理髪店の長男として生まれた隆の鶴は、1992年3月場所に初土俵を踏みました。同期入門には、後に同じく関取となる若の里やタレントとして活躍する隆乃若がいます。三段目までは順調に番付を上げていきましたが、幕下を目前にして、幼少期から抱えていた足の病気が悪化し、1995年7月場所と9月場所を連続で休場、手術を受けることとなりました。休場明けには序二段まで陥落しましたが、同年11月場所で全勝優勝を果たし、翌1996年1月場所、3月場所でも三段目で勝ち越しました。しかし、今度は両足に激痛が走るようになり、再度手術を余儀なくされました。

試練と復活

2度目の手術は、両足の親指を切断して神経を取り除くという大手術でした。これにより11ヶ月もの入院生活を強いられ、1996年7月場所から5場所連続で休場、番付は三段目から番付外まで落ちてしまいました。両足の親指を切断したため、足袋が欠かせない生活となりました。しかし、1997年5月場所に再度前相撲を取ると、翌7月場所から7場所連続で勝ち越し、1998年7月場所に幕下へ昇進、幕下中位から下位に定着しました。2000年11月場所で自己最高位の西幕下4枚目で4勝3敗と勝ち越し、続く2001年1月場所も東幕下3枚目で4勝3敗と勝ち越し、入門から9年をかけて2001年3月場所に新十両へと昇進を果たしました。

幕内昇進とその後

新十両から1年10ヶ月後の2003年1月場所には新入幕を果たしました。腰高ではありましたが、恵まれた体格を生かした攻めの相撲が持ち味でした。しかし、2003年5月場所には初日から10連敗を喫し、11日目から休場、0勝11敗4休という惨敗を喫してしまいます。翌7月場所では十両に陥落、さらに翌9月場所には幕下まで落ちてしまいます。しかし、その場所では6勝1敗と大きく勝ち越し、翌2002年1月場所に1場所で十両に復帰しました。2004年9月場所で再入幕を果たしましたが、翌11月場所で4勝11敗と大きく負け越し、2005年1月場所に十両へ陥落してからは十両での土俵が続きました。

引退と親方への転身

2006年3月場所、西十両10枚目の位置で初日に勝利したものの、その後14連敗を喫し1勝14敗と大敗。翌5月場所では幕下へ陥落してしまいました。その5月場所では本来の相撲が全く取れず、6連敗を喫し、12日目に引退届を提出しました。29歳での引退でした。引退後は準年寄・隆の鶴として鳴戸部屋の部屋付き親方となり、同年10月9日に断髪式を行いました。

年寄としての活動

2007年5月31日には、準年寄の期限切れを前に、同期生の若の里から名跡を借りて年寄・9代西岩を襲名しました。両親が聴覚障害者であることから手話を使うことができ、聴覚障害者に相撲の魅力を伝える役割も期待されました。2011年11月7日に師匠である13代鳴戸親方（元横綱・隆の里）が急逝したため、翌8日に急遽鳴戸の名跡を取得し、14代鳴戸を襲名して鳴戸部屋を継承しました。

田子ノ浦襲名と部屋の継承

日本相撲協会の公益財団法人への移行に伴い、年寄名跡を協会が一括管理することになった際、14代鳴戸は年寄・鳴戸の名跡証書の所有者との話し合いが難航し、協会が定めた期限までに提出することができませんでした。そこで、2012年2月に急逝した14代田子ノ浦（元幕内・久島海）の夫人が所有する年寄・田子ノ浦の名跡を正式に取得し、2013年12月25日に日本相撲協会へ年寄・田子ノ浦の名跡証書を提出、正式に16代田子ノ浦を襲名しました。これに伴い、鳴戸部屋の名称も田子ノ浦部屋へと変更されました。2019年11月場所は膝の痛みのため休場し、審判は不知火(元小結若荒雄)が代わりに行いました。

闘牙とのライバル関係

隆の鶴は、闘牙（高砂部屋）と容貌が瓜二つであることで有名で、両者の対戦は大きな話題を呼びました。2001年3月場所の十両での初対戦から、幕内、十両と何度も対戦を重ね、通算成績は隆の鶴の5勝3敗でした。闘牙もまた、2006年3月場所に大敗し、隆の鶴と同時に幕下に陥落、闘牙が引退を表明すると隆の鶴も引退を表明するなど、両者には何かと縁がありました。容貌は似ていましたが、組み止めてから攻める隆の鶴に対し、突っ張ってから叩き込む闘牙と、相撲のスタイルは対照的でした。隆の鶴の断髪式には、一門が違う闘牙が招かれ鋏を入れました。

新型コロナウイルス対応ガイドライン違反と処分

2020年7月場所中には、新型コロナウイルス対応ガイドライン違反が発覚し、相撲協会から厳重注意を受けました。これは、外出先で飲酒した際に、弟子のSNSに写真が投稿されたことが原因です。相撲協会は不要不急の外出を禁止していたため、この行為は問題となりました。しかし、協会コンプライアンス委員会の調査の結果、感染防止対策は講じられていたと判断され、最終的にけん責処分となりました。

主な成績

通算成績：393勝358敗70休勝率.523
幕内成績：26勝45敗4休勝率.366
現役在位：85場所
幕内在位：5場所

各段優勝

序二段優勝：1回（1996年1月場所）

改名歴

積山伸一（せきやましんいち）1992年3月場所-2001年1月場所
隆の鶴伸一（たかのつる -）2001年3月場所-2006年5月場所

年寄変遷

隆の鶴伸一（たかのつるしんいち）2006年5月-2007年5月［準年寄］
西岩伸一（にしいわ -）2007年5月-2011年11月
鳴戸伸一（なると -）2011年11月-2013年12月
* 田子ノ浦伸一（たごのうら -） 2013年12月-

隆の鶴伸一は、数々の試練を乗り越え、相撲界に貢献した人物として記憶されるでしょう。

もう一度検索