雨山合戦

雨山合戦（あめやまかっせん）

雨山合戦は、戦国時代の弘治2年（1556年）に、三河国額田郡雨山（現在の愛知県岡崎市雨山町）で起こった戦いです。この戦いは、守護大名・今川氏に対する三河国人たちの反乱「三河忩劇」における重要な出来事の一つです。合戦の舞台となった「雨山砦跡及び雨山合戦地」は、岡崎市の指定史跡となっています。

背景

当時の三河国では、織田氏と今川氏の勢力争いが激化しており、国内の小領主層である国人たちは、どちらにつくべきか苦慮していました。弘治元年（1555年）から弘治4年/永禄元年（1558年）にかけて、国人たちは今川氏に対して大規模な反乱を起こし、これが三河忩劇と呼ばれる一連の騒乱となりました。

作手地方を拠点とする奥平氏の家臣団内では、奥平貞勝が今川氏に与する一方、息子の奥平定能は反今川の姿勢を鮮明にしたため、日近合戦などの戦闘が発生しました。額田郡雨山の阿知波城（雨山城・雨山村古屋敷とも呼ばれる）を拠点とする阿知波定直（後の雨山奥平家）、定助、奥平貞良らもこの動きに呼応し、今川氏との対立を深めていきました。

合戦の経緯

弘治2年8月4日（1556年9月7日）、今川勢は雨山への侵攻を開始しました。『武徳編年集成』によると、今川方の野田城主・菅沼定村が雨山川の谷を攻め上ってきたのに対し、阿知波定直・奥平貞良らは山谷を天然の城郭とし、両側の山が最も迫る場所に木戸柵を設けて迎え撃ちました。この雨山合戦の際に築かれた防御施設が、阿知波城の別称である雨山砦の由来であるという見方もあります。

また、今川義元が三河牧野氏の家臣・能勢甚三に宛てた感状などの史料から、雨山川の下流側だけでなく、三河山地の稜線を挟んで雨山の背後にあたる宝飯郡千両（現在の豊川市千両町）側からも、山越えによる侵入が試みられていたことがわかっています。この地でも奥平勢との間で激しい戦闘が繰り広げられました。

木戸柵前に到達した菅沼定村は、その地形が天然の要害であるものの、敵兵の数が少ないため突破は容易だと判断し、攻撃を開始しました。しかし、谷地形を利用して接近した奥平貞良の弟・奥平五郎右衛門が放った矢が菅沼定村の喉に命中し、菅沼定村は討死。後続の兄弟や郎党たちも次々と討ち取られ、今川勢は初戦で大きな痛手を被り敗北を喫しました。

合戦の結末

雨山砦での初戦を制した奥平勢でしたが、後続の今川氏の大軍を前に、遂に降伏を余儀なくされました。反乱を主導した奥平定能は、高野山へ追放されることで事態は収束し、奥平氏は再び今川氏に帰順することとなりました。

雨山合戦の古戦場は、平成4年（1992年）6月15日付けで岡崎市の史跡に指定され、現在もその歴史を伝えています。

参考文献

平井聖ほか 1979「雨山砦」『日本城郭大系』第9巻（静岡・愛知・岐阜）新人物往来社 p.320
文化財図書普及会編 1997『愛知県中世城館跡調査報告Ⅲ（東三河地区）』 （愛知県教育委員会編 2001『都道府県別・日本の中世城館調査報告書集成』第10巻〈中部地方の中世城館4-愛知-〉所収）
「額田の諸城」pp.194-197
「雨山城」 p.237
新編岡崎市史額田資料編編集委員会 2010年3月31日「雨山村古屋敷」『新編岡崎市史額田資料編 I』p.300
新編岡崎市史額田資料編編集委員会 2011年3月31日「戦国織豊時代」『新編岡崎市史 額田資料編 Ⅱ』pp.154-157

関連項目

三河忩劇
日近合戦
* 雨山奥平家

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