雲仙温泉

雲仙温泉は、長崎県雲仙市に位置する、日本初の国立公園（雲仙天草国立公園）に指定された温泉保養地です。その歴史は古く、キリシタン殉教の悲史の舞台としても世界的に知られています。

泉質と効能

泉質は硫黄泉で、血行促進、疲労回復、リウマチ、慢性皮膚疾患などに効果があるとされています。ただし、これらの効能は全ての人に当てはまるわけではありません。

温泉街の様子

温泉街は、雲仙妙見岳の南西、標高700メートルの場所に位置し、鴛鴦ノ池の南側に広がっています。1990年に噴火した普賢岳と、それによって誕生した雲仙最高峰の平成新山は、妙見岳の反対側にあるため、温泉街から直接見ることはできません。雲仙山頂へは、島鉄バスセンターから仁田峠まで乗り合いタクシー（中型バス）が運行しており、仁田峠と雲仙妙見岳山頂は雲仙ロープウェイで結ばれています。春にはウンゼンツツジ（ミヤマキリシマ）が咲き誇り、道中を楽しむことができます。

温泉街は、噴気帯である「雲仙地獄」を囲むように存在し、その地獄内には遊歩道が整備されています。

共同浴場

雲仙温泉には、新湯地区に新湯温泉共同浴場、古湯地区に湯の里温泉共同浴場、小地獄温泉地区に小地獄温泉館など、複数の共同浴場があります。

湯の里温泉共同浴場: 雲仙温泉で最も古い共同浴場で、「だんきゅう風呂」の愛称で親しまれています。これは、かつてラッキョウの漬け樽を湯船として使っていたことに由来します。
新湯共同浴場
小地獄温泉館: 1731年に開かれた湯治場で、幕末には吉田松陰も訪れたと伝えられています。1919年に共同浴場として開館し、1993年に「雲仙温泉小地獄温泉館」となりました。

雲仙地獄

雲仙には30にも及ぶ地獄があり、遊歩道沿いには真知子岩、婆石、鏡石、キリシタン殉教碑、聖火燃ゆ之碑といった奇岩や石碑が点在しています。地獄展望台や足湯なども設けられており、観光客に人気です。

主な地獄

清七地獄
八万地獄
雀地獄
お糸地獄
大叫喚地獄
邪見地獄

その他、泥火山も見どころの一つです。

その他の名所・施設

温泉神社
雲仙ビードロ美術館
雲仙スパハウス
カトリック雲仙教会
雲仙お山の情報館
原生沼かきつばた公園
白雲の池
絹笠山

歴史

「雲仙」は、古くは「温泉（うんぜん）」と表記され、701年に僧侶の行基によって開かれた温泉山満明寺に由来します。同時に、四面神を祀る温泉神社も建立されたとされています。

温泉が湯治に利用されるようになったのは1653年のことで、加藤善右衛門が古湯に「延暦湯」を開いたのが始まりです。江戸時代には、出島のオランダ商館医であったケンペルやシーボルトによって、ヨーロッパにも紹介されました。

明治時代になると観光客が増加し、満明寺の僧侶による有料の地獄案内が行われました。長崎港が国際貿易港として発展したことで、長崎に滞在する外国人や、上海租界や香港に住む西洋人の避暑地として繁栄しました。ノーベル文学賞を受賞したパール・S・バックやヘレン・ケラーも一時滞在しています。外国人客が多く訪れたことを受け、昭和初期には外国人向けの洋式ホテルである雲仙観光ホテルが建設されました。

長崎から雲仙・小浜両温泉への交通路は、諫早までの鉄道から、最初は船による航路が開かれ、その後、島原鉄道、温泉軽便鉄道、小浜地方鉄道が整備されました。しかし、後2社が合併した雲仙鉄道はバスにシェアを奪われ、まもなく廃線となりました。

年表

701年：行基により温泉山満明寺が建立。
1911年：当地と小浜[[温泉]]間に自動車道路が開通。
1920年：吉井勇、斎藤茂吉が当地を訪問。
1922年：当地と島原間に自動車道路が開通。当地と小浜[[温泉]]間の路線バスが開業。
1934年 3月16日：国立公園に指定。この際、「温泉」から「雲仙」に改められる。
1934年 5月6日：長崎県営バスにより、当地と長崎間の路線バスが開業。
1935年 10月10日：雲仙観光ホテルが開業。
1937年：温泉岳測候所が観測を開始。
1956年 6月15日：国民保養[[温泉地]]に指定。
1957年 7月15日：雲仙ロープウェイが開業。
1962年 3月10日：国民保養[[温泉地]]の範囲が、小浜[[温泉]]まで含むように変更。
2021年：雲仙地獄が土砂崩れに見舞われ、一部の旅館・ホテルで温泉配管が損傷する被害が発生。

アクセス

車: 長崎自動車道諫早ICより国道57号経由で約60分。
バス: 長崎駅前より長崎県交通局特急バスで約100分（1日3往復）。
鉄道: 長崎本線諫早駅より島原鉄道バスで約70分、または島原鉄道島原駅より同バスで約50分（いずれも概ね1時間に1便）。
飛行機: 長崎空港よりバスで約100分。

脚注

関連項目

島原半島ジオパーク
松竹映画『君の名は』（1953年 - 1954年）のロケ地（雲仙地獄）。岸惠子が寒さ対策でショールを巻いたことが「真知子巻き」の流行を生んだ。
温泉卵

外部リンク

* 雲仙温泉観光協会

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