電聖戦

電聖戦とは

電聖戦（でんせいせん）は、プロ棋士とコンピュータ囲碁プログラムが対局する、公式の定期戦として2013年から2017年まで開催されていました。電気通信大学エンターテイメントと認知科学研究ステーションが主催し、会場は電気通信大学内に設けられていました。

概要

電聖戦では、その年のUEC杯コンピュータ囲碁大会で決勝に進出した2つのプログラムが、日本棋院所属のプロ棋士と対戦しました。ルールは日本ルールに準拠し、持ち時間は30分、それを超過すると1手30秒が与えられました（ただし、第5回大会の第2局のみ、持ち時間60分、超過後1手60秒）。

第1回から第4回までは、コンピュータ囲碁の棋力がプロ棋士に及ばない部分があったため、コンピュータ側にはハンデとして置碁が適用されました。手合割は、UEC杯での対局内容を考慮して、対局前に決定されていました。しかし、第5回では互先、コミ6目半という条件で対局が行われました。

対局の賞金も定められており、UEC杯準優勝プログラムが出場する第1局目には10万円、優勝プログラムが出場する第2局目には20万円が授与されました。

各大会の様子と評価

第1回大会

石田芳夫は、Zenについて「普段の指導碁ならヨセで15目は得する自信があるが、コンピューター相手ではよく分からなかった」と述べています。Crazy Stoneに対しては、「急に冷静になったり、高度なテクニックを使ったりして、天才かと思った。普段は冷静なのに、思わず熱くなった」と評しつつも、「アマ六段くらいの力は十分あるが、プロレベルにはまだまだ。よほど大きな進化がない限り、10年では厳しいと思う」と評価しました。

第2回大会

Crazy Stoneは、思考エンジンにZenが用いられている天頂の囲碁で対策を練ってきた依田紀基の意図を外す着手を連発し、序盤から優勢を維持しました。その後も手堅い打ち回しで4子のリードを守り切り勝利しました。しかし、終局間際の小ヨセからダメ詰めに入るかという場面で、アマチュア級位者でも損と分かるような着手を連発する場面もありました。開発者のレミ・クーロンは、これはコンピュータが目数の差で勝利することを目指さず、半目でも勝てばいいという回路になっているためだと説明し、今後の改良点であるとしました。

依田はCrazy Stoneとの対局後、「コウ争いなんかも意外と分かっている。結構踏み込みは鋭い」と述べています。

Zenは、序盤やや打ちすぎな手が目立ち、少しずつ形勢を損ねていきました。それでもヨセの段階ではやや優勢でしたが、失着が出て形勢は依田に傾き、そのまま中押し負けとなりました。チームDeepZenの加藤英樹は、Zenが途中まで形勢を楽観視していたと語りました。

依田は今後の改良点について、「コンピュータは死活が強いイメージがあるが、意外と死活が読めていない意味がある。白としてもどこまで読めているのかよく分からないが、そこはもうやってみるしかない」と述べました。

今後の抱負について、クーロンは「来年は3子局になると思うが、さすがに勝つのはとても難しそうだ」、加藤は「先生たち（依田ら）の話でモンテカルロ碁の欠点は分かってきた。ゆっくりになるかもしれないが、今後も進歩を続けていく」と述べました。

なお、依田は電聖戦の翌日にCrazy Stoneと改めて対局し、中押し勝ちを収めています。

第3回大会

趙治勲は対局前の挨拶で「最近人間に勝てなくなってきたから、その憂さ晴らしにしたい」などと笑顔で語りました。Dolbaramとの対局では、依田紀基が「治勲先生はちょっとコンピューターを侮っていた。碁になっていない」と語りました。対局後、趙は「打っていて、熱くなってしまった。完全に負かされた。次の三子局は、けんかせずに逃げ回っていきたい」と述べました。

Crazy Stoneとの対局では趙が中押しで勝ち、「手どころにめちゃくちゃ強い。途中、乱暴してきて、血が通った人間のようだった。いずれは人間をギャフンと言わせてほしい」と、笑顔で締めくくりました。

第4回、第5回大会

第4回、第5回大会も開催され、コンピュータ囲碁の実力向上と、プロ棋士との対局を通じて、その進化が示されました。

電聖戦