電電ファミリー

電電ファミリー：日本の通信事業を支えた企業群

日本の通信インフラ発展において重要な役割を果たした「電電ファミリー」とは、かつての日本電信電話公社（現NTT）と密接な関係にあった企業群を指します。中でも、日本電気（NEC）、富士通、沖電気工業の3社は「電電ファミリー御三家」と呼ばれ、電話交換機の製造で中心的な役割を担いました。

歴史

1980年代：公社独占と電電ファミリーの連携

1980年代半ばまでは、日本の通信事業は日本電信電話公社がほぼ独占していました。公衆交換電話網（電話回線）の維持管理には、電話機、交換機、通信網といったインフラ整備が不可欠であり、電電ファミリー各社が連携してこれら開発・整備を担っていました。各社はそれぞれの得意分野を活かしつつ、公社主導の下、日本の通信網を支える重要な役割を担っていました。

1985年 4月の電気通信事業法施行により、日本電信電話公社はNTTとして民営化され、通信事業への新規参入（新電電）が始まりました。これは、日本の通信市場に大きな変化をもたらす転換期となりました。それまで築き上げてきた電電ファミリーの連携関係にも、新たな競争の波が押し寄せました。

1990年代：携帯電話の普及

1990年代に入ると、携帯電話の普及が加速し、通信市場は新たな局面を迎えました。電電ファミリー各社は、携帯電話関連の技術開発やサービス提供にも積極的に取り組み始めます。固定電話を基盤として発展してきた企業にとって、モバイル通信市場への対応は新たな挑戦であり、同時に大きなビジネスチャンスでもありました。

2000年代：3Gとガラパゴス化

2000年代には、第3世代携帯電話（3G）が登場し、2001年には日本で世界に先駆けてW-CDMA方式の3Gサービスが商用化されました。しかし、日本市場では独自の技術・サービスが発展し、「ガラパゴス化」と呼ばれる閉鎖的な状況も生じました。この状況は、後に訪れるスマートフォン時代における国際競争力の低下に繋がります。

2010年代：スマートフォンの衝撃と再編

2010年代に入ると、iPhoneやAndroidスマートフォンが世界的に普及しました。この変化は日本の携帯電話業界に大きな衝撃を与えました。中国、韓国、台湾などのスマートフォンメーカーの急成長により、技術革新のスピードに遅れを取った日本メーカーは次々とスマートフォン事業から撤退していきました。電電ファミリー御三家の一つであったNECも、2013年にスマートフォン事業から撤退しました。

この時代には、電気通信工事メーカーの再編も加速しました。コムシスホールディングス、エクシオグループ、ミライト・ホールディングスの3社を中心に業界再編が進み、市場の寡占化が進みました。

2020年代：5G・6G時代へ

2020年代に入り、5G、そして将来の6Gといった次世代通信技術開発が重要課題となっています。NTTは、NECや富士通との連携強化を図り、5G・6G関連技術の開発やインフラ整備を進めています。これは、日本の通信業界が国際競争力を維持し、さらなる発展を遂げるための重要な取り組みです。NTTによるNECへの出資や富士通との業務提携は、電電ファミリーの新たな連携を示す象徴的な出来事と言えます。