霊山寺(りょうせんじ)
霊山寺は、
奈良県奈良市中町に位置する霊山寺
真言宗の大
本山です。
山号は登美山または鼻高山、
本尊は薬師
如来です。
行基と
菩提僊那によって開かれました。寺名の読み方は「りょうせんじ」が正式ですが、「りょうぜんじ」や「れいざんじ」とも呼ばれ、地元ではいずれの呼称も用いられています。
奈良市の西郊、富雄川沿いに位置し、戦乱を免れたため古い面影を残しています。特に、世界の
バラを集めた
バラ庭園が有名です。
歴史
霊山寺は富雄地区にあり、富雄川の支流である湯屋川を挟んだ丘陵に、
鎌倉時代に建立された本堂(
国宝)や
三重塔(
重要文化財)などの建物が建っています。これらの古建築に加え、
金箔で覆われた黄金殿、
バラ園、温泉、ゴルフ練習場、大霊園など、多様な設備を備えているのが特徴です。
寺伝によれば、
小野妹子の子である小野富人が、
壬申の乱に関与したとして
右大臣の地位を辞し、現在の霊山寺境内にあたる登美山に隠棲しました。
天武天皇12年(
684年)に
熊野本宮大社に参籠した際、薬師
如来(熊野速玉大神の本地仏)が現れ、そのお告げに従い登美山に
薬師三尊を祀り、薬草を栽培し薬湯を施したとされています。富人は登美
仙人、または鼻高
仙人と呼ばれるようになりました。
神亀5年(
728年)、聖武
天皇の皇女である阿倍内親王(後の孝謙
天皇)が病に苦しんでいた際、
天皇の夢に鼻高
仙人が現れ、登美山の薬師
如来の霊験を説いたため、
僧・
行基を登美山に派遣して祈願させたところ、皇女の病が癒えました。
天平6年(
734年)、聖武
天皇は
行基に命じ、登美山に大堂を建立させました。
天平8年(
736年)に来日した
インド僧・
菩提僊那(
東大寺大仏の開眼供養の導師)は、登美山の地形が故郷
インドの
霊鷲山に似ていることから、この大堂を霊山寺と名付けました。聖武
天皇からは「鼻高霊山寺」の額を賜ったと伝えられています。
平安時代には、
空海が霊山寺を訪れ、登美山に龍神を感じ、奥之院に大辯才天女尊として祀りました。これにより、
法相宗の
寺院であった霊山寺は、
法相宗と
真言宗の二宗兼学の
寺院となりました。
寺伝では聖武
天皇の勅願により
行基が開いたとされていますが、正史には記述がなく、開創の時期や事情、中世以前の歴史は不明な点が多いです。しかし、現存する本堂と
三重塔は
鎌倉時代の建築であり、
本尊の
薬師三尊像は
平安時代後期に遡ることから、古くから栄えた
寺院であったと考えられます。戦火を免れたため、建物や仏像に古いものが残っています。
鎌倉時代には
僧坊が21ヶ寺を数えましたが、近世には
江戸幕府の朱印寺として一定の規模を維持しました。
明治時代の
廃仏毀釈以降は衰退しましたが、
1951年に独立して霊山寺
真言宗を称しています。
昭和期以降は、
本尊の薬師
如来とともに、奥之院の辯才天が信仰の中心となり、
1935年に大辯才天堂が建立されました。円照尼が「辯才天のお告げ」によって多くの堂や施設を建立しました。
境内
境内東側の正面入口には、一般的な
仏教寺院とは異なり、朱塗りの
鳥居が立っています。これは、信仰の中心である大辯才天堂への入口を示すものです。
鳥居をくぐると、右側(北側)には
バラ庭園、天龍閣、大辯才天堂、黄金殿、白金殿などがあり、奥の石段上には
国宝の本堂が建っています。左側(南側)には
仙人亭、薬師湯、ゴルフ練習場などがあり、奥の石段上には
三重塔が建っています。
三重塔近くには南大門跡があり、当初は南側が正面入口であった可能性が高いです。
主要な伽藍
本堂(国宝):入母屋造、本瓦葺き。弘安6年(1283年)の建築。鎌倉時代和様仏堂の代表作。秘仏本尊の薬師三尊像(重要文化財)を安置。
三重塔(重要文化財):
弘安6年(
1283年)頃の建立。高さ17メートル、檜皮葺き。
鐘楼(重要文化財):室町時代初期の再建。
十六所神社(重要文化財):南北朝時代の建立。霊山寺の鎮守社。
大辯才天堂:1935年建立。辯才天の本地仏である聖観世音菩薩を祀る。
黄金殿:
1960年建立。大辯才天女尊を祀る。内外を
金箔で覆う。
白金殿:1977年建立。大辯才天女尊と眷属大龍神を祀る。プラチナ箔を使用。
薬師湯:
1942年に霊山寺温泉として建立、1982年に改築。
バラ庭園:1957年開設。世界のバラを集めた庭園。
文化財
国宝:本堂
重要文化財:三重塔、鐘楼、十六所神社本殿、木造薬師如来及両脇侍像、木造持国天・多聞天立像、木造十二神将立像、木造阿弥陀如来坐像、木造大日如来坐像、木造十一面観音立像、木造地蔵菩薩立像、木造毘沙門天立像、木造彩色華鬘、銅製薬師三尊懸仏、黒漆厨子
札所
西国薬師四十九霊場 第2番
仏塔古寺十八尊 第5番
大和十三仏
霊場 第10番
大和北部八十八ヶ所霊場 第31,32,33番
大和地蔵十福
霊場 第6番
神仏霊場巡拝の道 第28番
アクセス
近鉄奈良線 富雄駅より
奈良交通バス8分、霊山寺バス停下車すぐ
*
近鉄奈良線 学園前駅より
奈良交通バス10分、千代ヶ丘二丁目バス停下車徒歩15分
霊山寺は、豊かな歴史と文化、美しい自然に囲まれた魅力的な
寺院です。ぜひ一度、訪れてみてください。