霧島温泉郷

霧島温泉郷：歴史と自然が織りなす癒しの湯

霧島温泉郷は、鹿児島県霧島市と湧水町にまたがる霧島山の中腹に位置する温泉群の総称です。この地域には、古くから人々に親しまれてきた多くの温泉が点在しており、その豊かな自然と歴史は訪れる人々を魅了し続けています。

狭義の霧島温泉郷

一般的に霧島温泉郷と呼ばれるのは、大浪池の南西斜面、中津川流域に位置する温泉群です。これらの温泉は、それぞれ独自の歴史と泉質を持っています。

硫黄谷温泉

1714年に飯田喜八によって発見された硫黄谷温泉は、江戸時代の温泉番付にも「薩摩硫黄湯」として記載された名湯です。皮膚病に効能があるとされ、多くの人々がその湯を求めて訪れました。江戸時代の地誌には、打たせ湯や殿様湯の記述もあり、当時から特別な温泉として扱われていたことがうかがえます。1866年には坂本龍馬夫妻も訪れています。残念ながら、1949年の台風による山崩れで移転を余儀なくされ、現在は泉源のみが利用され、近隣のホテルに送湯されています。

明礬温泉

明礬山から湧き出る温泉で、その名が付けられました。1869年頃には宿泊施設も設けられましたが、山崩れにより廃止され、現在は泉源のみが利用されています。

栄之尾温泉

1744年に安藤仲兵衛国広によって発見された栄之尾温泉は、硫黄谷温泉と同様に打たせ湯の設備があり、効能も似ているとされていました。しかし、湯の性質は穏やかで、症状に合わせて選ぶことが推奨されていました。1861年には薩摩藩藩主の避暑地として利用され、1866年には坂本龍馬・お龍夫妻が訪れ、日本最初の新婚旅行とされています。渓谷に湧く温泉は現在、林田温泉にあるホテルの露天風呂として利用されています。標高800mの山中にあるため、冬季は閉鎖されます。

林田温泉

栄之尾温泉に隣接する林田温泉は、1929年に林田熊一によって開発されました。私設道路などが整備され、近代的な温泉保養地の先駆けとなりました。（現在の霧島いわさきホテル）しかし、2017年11月6日をもって無期限閉鎖となっています。

丸尾温泉

1819年に横尾権太によって発見された丸尾温泉は、霧島温泉郷の中心的な存在となっています。温泉街も形成されており、多くの観光客で賑わっています。

栗川温泉

1835年に牧彦八によって発見された栗川温泉は、丸尾温泉とともに古くから親しまれてきました。

温泉街

丸尾温泉を中心に、温泉街が形成されています。飲食店やお土産店などが立ち並び、観光客で賑わっています。

歴史

霧島温泉郷は、山中に位置しているため、明治以前は馬や駕籠でしか容易に行くことができませんでした。しかし、1914年に牧園駅（現在の霧島温泉駅）から温泉までの道路が整備され、1933年には霧島神宮駅から丸尾温泉までの道路も整備されたことで、多くの湯治客が訪れるようになりました。

アクセス

鉄道：日豊本線霧島神宮駅、または肥薩線霧島温泉駅からバスやタクシーを利用。

空路：鹿児島空港からバスやタクシーを利用。

自家用車：九州自動車道横川インターチェンジから、鹿児島県道50号牧園薩摩線、国道223号を経由。

広義の霧島温泉郷

霧島温泉郷は、狭義の温泉群以外にも多くの温泉地を含んでいます。

湯之野温泉

豊富な噴気があり、湧出した温泉は周辺施設に配湯されています。

新湯温泉

1875年に高久保豊蔵によって発見され、1881年から湯治場として利用されるようになった硫化水素泉です。1954年の地滑りで壊滅しましたが、後に復旧しました。

湯之谷温泉

古くから地元の狩人に利用されていた温泉で、1880年に浴場が開設されました。1952年の台風被害で移転しています。

塩湯温泉

手洗温泉

現在は創価学会の研修道場となっており、一般の利用はできません。

山之城（やまんじょ）温泉

古くから知られている温泉ですが、硫化水素ガス濃度が高く危険なため、立ち入り禁止となっています。

関平温泉

1832年に原田丑太郎によって発見され、傷に効能があると言われてきました。温泉水は「関平鉱泉」として販売されています。

鉾投（ほこなぎ）温泉

1572年の木崎原の戦いの際に利用されたと伝えられる野湯です。

野々湯温泉

かつては地元住民のための小さな浴場でしたが、現在はログハウスやキャンプ場などを備えた総合的なレクリエーション施設となっています。

殿湯温泉

1710年頃に霧島神宮の造営工事をきっかけに開発されました。

目の湯温泉

霧島最古の岩風呂とされる野湯で、丸尾自然探勝路沿いに位置しています。

横瀬温泉

1865年に共同浴場が設置されました。

栗野岳温泉

元禄、宝永年間頃から湯治場として利用され、豊富な噴気を活用した蒸し風呂や炊事が楽しまれています。

金湯温泉

個人が浴槽を設置し、近所の人にも開放しています。

銀湯温泉、太良温泉

現在は利用されていません。銀湯温泉の近くには大霧地熱発電所があります。

参考文献

牧園町郷土誌編さん委員会編　『牧園町郷土誌』　川畑義照（牧園町長）、1991年。
黒川達爾雄　『かごしま文庫41　いで湯の国・鹿児島』　春苑堂出版、1997年、ISBN 4-915093-48-4。

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