露鵬幸生

露鵬 幸生

露鵬 幸生（ろほう ゆきお）は、1980年3月9日にロシア連邦・北オセチア・アラニヤ共和国ウラジカフカス市で生まれた元大相撲力士です。本名をソスラン・フェーリクソヴィッチ・ボラーゾフといい、ロシア国籍を持つオセット人です。入門時は大鵬部屋、後に大嶽部屋に所属しました。最高位は2006年3月場所の東小結。得意技は右四つからの寄りや上手投げでした。弟は元幕内力士の白露山であり、外国出身者として初めての兄弟関取となりました。

来歴

露鵬はレスリングの経験があり、父親はレスリング指導者でした。16歳でレスリングを始め、18歳の時には世界ジュニア選手権で優勝したとされています（ただし、国際レスリング連盟の公式記録には名前が見当たらないという情報もあります）。130kg級までしかないレスリングで体重が増えたため、20歳で相撲に転向。2001年の世界相撲選手権重量級で3位、欧州選手権では優勝という実績を残しました。

2002年2月、第48代横綱・大鵬の紹介で来日しました。弟の白露山が所属していた北の湖部屋に入門を希望しましたが、外国人力士は一部屋一人という規則があったため、最初は北の湖部屋で3ヶ月過ごした後、大鵬部屋へ移籍しました。四股名の「露鵬」は、師匠である大鵬と自身の出身地であるロシアの「露」を組み合わせたものです。2002年5月場所で初土俵を踏み、序ノ口・序二段で連続優勝、初土俵からの19連勝など順調に出世を重ねました。

2004年1月場所に十両へ昇進し、同年9月場所には新入幕を果たします。露鵬は結果的に大鵬が育てた最後の幕内力士となりました。新入幕の場所では東前頭15枚目で10勝5敗と大きく勝ち越し、敢闘賞を受賞。その後も安定した成績を残し、2006年1月場所では東前頭2枚目で勝ち越して、翌3月場所にはロシア出身力士として初めて三役となる東小結へ昇進しました。しかし、この場所は4勝11敗と大きく負け越し、三役の壁に苦しみました。

土俵内外での波紋

露鵬の相撲人生では、土俵内外での問題行動がしばしば注目されました。2006年7月場所の千代大海戦では、勝負が決まった後も土俵下で相手を睨みつけ口論となり、協会から厳重注意を受けます。この騒動の後、興奮した露鵬は支度部屋の風呂場ドアガラスを割り、破片が千代大海に刺さるという事件を起こしました。また、この件を取材していたカメラマン2人の顔を平手で殴打し、負傷させています。この暴行事件により、露鵬は3日間の出場停止処分を受け、師匠も減俸処分となりました。この一件では、師匠の大嶽親方（元関脇貴闘力）とも掴み合いの喧嘩に発展したと報じられています。

翌2007年5月場所でも行司に悪態をついたり、対戦相手を必要以上に土俵下へ突き落としたりするなど、問題行動が続きました。協会からはこれ以上の問題を起こせば処分を検討すると警告を受けていました。

大麻問題と解雇

そして2008年9月、日本相撲協会が実施した抜き打ちの簡易尿検査で、露鵬と弟の白露山から大麻の陽性反応が検出されました。兄弟は警察の事情聴取を受けましたが、大麻の所持や使用を否認しました。自宅捜索でも大麻は発見されませんでした。しかし、専門機関による精密検査でも陽性反応が出たため、協会は同年9月8日の理事会で両力士の解雇を決定しました。

この処分に対し、露鵬と白露山は解雇無効を求める訴訟を起こしましたが、最終的に敗訴が確定しました。この件は角界に大きな波紋を広げ、後に露鵬が「捕まる前に（大麻を）隅田川に捨てた」と話していたという証言も報じられています。また、師匠だった16代大嶽親方（貴闘力）は、露鵬とその後入門した大砂嵐の不祥事が、外国人弟子に対する自身の後継者の印象を悪くしたと語っています。

人物・エピソード

土俵内外での粗暴な振る舞いが目立った露鵬ですが、師匠である大鵬に対しては深い尊敬の念を抱いていました。大鵬部屋の世話人だった友鵬氏の著書によれば、露鵬は大鵬の指導に最後まで忠実であったといい、また大鵬も露鵬を非常に可愛がっていたといいます。新入幕の際に初めて獲得した懸賞金を大鵬に渡そうとしたエピソードや、解雇された際にも大鵬にだけは連絡を入れて謝罪したことなどが、師弟の絆の深さを示すものとして語られています。

また、同郷の若ノ鵬（後に大麻問題で解雇）を相撲界に誘ったのは露鵬であるといわれています。その他、新入幕の場所に起きた故郷の学校占拠事件の犠牲者のために敢闘賞の賞金を寄付したり、台湾巡業で酔いつぶれた把瑠都を介抱したりするなど、人情味のある一面も持ち合わせていました。土俵入りで使用していた電飾の化粧回しも印象に残っています。

引退後

角界を去った後、露鵬はロシアに帰国しました。2013年には一般客として場所観戦に訪れた際に、関係者以外立ち入り禁止の支度部屋に入り、注意を受ける出来事もありました。その後、2021年には故郷である北オセチアの相撲連盟会長に就任し、相撲の振興に携わっています。

主な成績

通算成績：267勝198敗18休（勝率.574）
幕内成績：182勝160敗18休（勝率.532）
現役在位：38場所
幕内在位：24場所
三役在位：3場所（小結3場所）
三賞：1回（敢闘賞1回 - 2004年9月場所）
* 各段優勝：序二段（2002年9月場所）、序ノ口（2002年7月場所）

金星獲得はありませんでした。

露鵬は、その豪快な相撲と個性的な言動で注目を集めた力士であり、ロシア出身力士の先駆けの一人として歴史に名を残しましたが、度重なる問題行動、特に大麻問題により不本意な形で土俵を去ることとなりました。しかし、故郷では相撲の普及に尽力しており、新たな道を歩んでいます。

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