青木宣純

青木 宣純

青木 宣純（あおき のぶずみ）は、幕末の安政6年（1859年）に生まれ、大正13年（1924年）に没した日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将でした。明治期における最も初期の「支那通軍人」の一人として、その生涯の大部分を中国大陸との関わりに費やし、通算13年もの間、現地で活動しました。

佐土原藩士であった青木新蔵の長男として生を受けた宣純は、早くから軍の道を志し、陸軍幼年学校を経て明治10年（1877年）に陸軍士官学校に入学しました。明治12年（1879年）に砲兵少尉に任官し、翌年、士官学校を卒業（旧3期）しています。

陸軍士官学校の教官や参謀本部での勤務を経た後、宣純は明治17年（1884年）10月から約3年間にわたり清国へ派遣され、広東や北京に駐在しました。これは、彼が「支那通」としてのキャリアを本格的に歩み始める重要な一歩となりました。帰国後も近衛砲兵連隊勤務、陸士教官、参謀本部員などを歴任し、さらにはベルギーへの留学も経験するなど、幅広い識見を養いました。

明治27年（1894年）に日清戦争が勃発すると、宣純は第1軍参謀として従軍しました。戦後、再び参謀本部勤務に戻ると、明治30年（1897年）10月からは清国公使館付の役目を務め、約2年半滞在します。この時期、清朝の権力者であった袁世凱から強く請われ、新建陸軍の軍事顧問として、その育成と指導に尽力しました。袁世凱との間に築かれた深い信頼関係は、その後の宣純の活動に大きな影響を与えることになります。

帰国後、参謀本部付や師団司令部付などを経て、再び清国公使館付として派遣されました。明治35年（1902年）には砲兵大佐に昇進し、野戦砲兵第14連隊長を務めた後、再び清国での任務に就いています。この頃、北京で活動していた漢学者の中島竦と知り合い、後に蒙古に関する研究書の編纂を依頼するなど、中国の文化や地域研究への関心も深めていました。

日露戦争開戦後の明治37年（1904年）、宣純は満洲軍総司令部付として北京に駐在し、特務機関としての性格を持つ「特別任務班」を率いて諜報活動に従事しました。敵の補給路や通信網を撹乱するため、馬賊を利用した工作や鉄道・電線破壊を指揮するなど、後の「謀略将軍」という異名に繋がるような秘密裏の任務を遂行しました。日露戦争中も清国公使館付として活動し、特に袁世凱の高い信用を得ていたことから、袁を説得して日本の対露協力に引き出すなど、情報戦や外交工作において重要な役割を果たしました。

戦後、明治40年（1907年）には陸軍少将、大正2年（1913年）には陸軍中将へと昇進し、旅順要塞司令官に就任しました。軍事的な要職を務める一方、大正6年（1917年）からは約6年にわたり、再び北京へ渡り、当時の北京政府大総統であった黎元洪の軍事顧問を務めるなど、退役が近い時期まで一貫して中国との関係性を持ち続けました。大正8年（1918年）に予備役、大正10年（1921年）には後備役に編入されています。

数々の功績に対し、宣純は国内外から多くの栄典を受けています。位階は従七位から正四位まで昇り、勲章においては瑞宝章、旭日章、さらには功二級金鵄勲章などを受章しました。没後には勲一等旭日大綬章を授けられています。また、清朝やロシア帝国からも勲章を贈られています。

青木宣純は、単なる軍人という枠を超え、明治・大正期における日本の中国政策や情報活動において、その類まれな語学力、現地での人脈、そして謀略手腕を駆使して大きな影響力を持った人物でした。特に袁世凱との特別な関係性は、彼のキャリアの要となり、日本にとって有利な局面を作り出す上で重要な要素となりました。その波乱に満ちた生涯は、佐藤垢石による伝記『青木宣純 - 謀略将軍』に描かれています。娘婿に陸軍中将の磯谷廉介がいます。

もう一度検索