顕密

顕密とは

顕密（けんみつ）とは、仏教の教えを大きく二つに分ける際の区分の一つで、顕教（けんきょう）と密教（みっきょう）を合わせた概念です。本来は仏教の教相判釈における二分法であり、仏教そのものを指す言葉として用いられます。

顕教と密教

顕教：釈迦の教えを言葉や文字で表し、誰にでも理解できるように説かれた教え。
密教：言葉や文字では表現しきれない、深遠な真理を秘密の儀式や修行を通して体得する教え。

顕密は、これらの二つの側面を包括的に捉える概念として、仏教の多様性を理解する上で重要な視点を提供します。

顕密仏教、顕密体制

「顕密仏教」や「顕密体制」という言葉が用いられる場合、それは単に顕教と密教の両方を指すのではなく、特定の系統や体制を指すことが一般的です。具体的には、国家によって保護され、官僧の系譜を引く仏教勢力を指し、鎌倉時代に登場した新仏教（鎌倉新仏教）は含まれないことが多いです。この背景には、平安時代から中世にかけて、国家と仏教が深く結びつき、特定の宗派が政治的な権威を持ったという歴史的な経緯があります。

密教的思潮と本覚思想

顕密体制の基盤には、「密教的思潮」や「本覚思想」があると考えられています。

密教的思潮：現実世界と仏の世界が一体であるとする考え方で、具体的な儀式や瞑想を通して、即身成仏を目指す。
本覚思想：人間は生まれながらにして仏の性質を持っているという考え方で、この本覚を自覚することで悟りを開くことができる。

これらの思想は、顕密仏教が単なる教義だけでなく、実践的な宗教体系として発展する上で重要な役割を果たしました。

顕密体制論と関連人物

顕密体制は、日本の仏教史における重要な研究テーマの一つであり、多くの研究者によって議論されてきました。

顕密体制論：中世の仏教が国家体制とどのように結びついていたかを分析する理論。
黒田俊雄：顕密体制論を提唱した歴史学者。
平雅行：中世の仏教史研究者。
袴田憲昭：仏教思想史研究者。

これらの研究者による研究を通して、顕密体制が日本の歴史や文化に与えた影響を深く理解することができます。

まとめ

顕密は、仏教を理解するための基本的な概念であり、顕教と密教の両面から仏教の多様性を捉えることを可能にします。また、顕密仏教や顕密体制は、日本の歴史や文化の中で重要な役割を果たした勢力であり、その歴史的背景や思想的基盤を理解することで、より深く仏教を理解することができます。


参考文献

* 中村元、福永光司・田村芳朗・末木文美士・今野 達 編『岩波仏教辞典』（第二版）岩波書店、2002年。ISBN 4-00-080205-4。

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