風博士

『風博士』（かぜはかせ）は、坂口安吾が1931年に発表した掌編小説です。この作品は、同人誌『青い馬』の第2号に掲載され、発表直後から牧野信一や島崎藤村といった著名な文学者から絶賛を受けました。これにより、坂口安吾は作家としての地位を確立するきっかけの一つとなりました。

この作品は、第二次世界大戦前に書かれた初期の作品でありながら、その斬新な作風と独特な世界観は、現代においても多くの人々を魅了し続けています。特に、ウェブブラウザの名称に採用されるなど、様々な分野で影響を与えています。また、著作権が消滅した現在では、青空文庫で誰でも読むことができるようになっています。

あらすじ

物語は、主人公が警察の取り調べを受ける場面から始まります。主人公は、風博士の自殺を偽装した疑いをかけられていますが、彼は風博士が自ら死を選んだことを主張します。彼は、風博士と蛸博士の間の確執や、風博士が消えた状況などについて語り始めます。その語り口は、滑稽でナンセンスであり、読者を独特な世界へと引き込みます。物語全体を通して、人間の深層心理や社会への風刺が巧みに織り交ぜられており、読者の想像力を掻き立てます。

登場人物

作中には、風博士や蛸博士など、個性的な登場人物が登場します。これらの人物は、物語のナンセンスな雰囲気をさらに際立たせ、読者に強烈な印象を与えます。特に、風博士は、物語の中心人物として、その行動や言動を通じて、作品のテーマを深く掘り下げています。

書誌情報

『風博士』は、以下の雑誌や書籍に収録されています。

『青い馬 第2号』、岩波書店、1931年6月1日　※初出
『黒谷村』、竹村書房、1935年
『風博士』、山河書院、1948年
『風博士・夜長姫と耳男』、ほるぷ出版、1985年
『日本探偵小説全集 10』、創元推理文庫、1985年 ISBN 4488400108
『昭和文学全集 12』、小学館、1987年 ISBN 4095680121
『坂口安吾全集 1』1989年 ISBN 4480024611
ちくま日本文学全集『坂口安吾』、ちくま文庫、1991年 ISBN 448010206X
『木枯の酒倉から・風博士』、講談社文庫、1993年 ISBN 4061962159
『日本幻想文学集成 31』、富士川義之編、国書刊行会、1995年 ISBN 4336032416
『図書カードNo.42616 - 風博士』、青空文庫、2006年
『桜の森の満開の下・白痴 他12編』、岩波文庫、2008年 ISBN 9784003118221

翻案作品

『風博士』は、小説としての発表後、ラジオドラマや舞台など、様々な形で翻案されています。

ラジオドラマ

1989年には、別役実の作演出によりラジオドラマ化されました。このドラマは、NHK-FM放送で放送され、多くのリスナーに愛されました。

舞台（2003年）

2003年には、劇団21世紀FOXによって舞台化されました。北村想が脚本を手がけ、肝付兼太が演出を担当しました。

舞台（2019年）

2019年には、シス・カンパニーが「日本文学シアター」シリーズの第6弾として舞台化しました。北村想が脚本、寺十吾が演出を担当し、中井貴一、段田安則、吉田羊など豪華キャストが出演し、大きな話題を呼びました。東京と大阪で公演が行われ、多くの観客を魅了しました。

その他

『風博士』は、単なる小説としてだけでなく、そのタイトルがウェブブラウザの名称に用いられるなど、現代社会においてもその影響力は大きいと言えます。また、作中に登場する「義経=ジンギスカン説」も、読者の関心を引く要素の一つとなっています。この説は、風博士がバスク人は源義経の子孫であると主張するもので、物語に独特の深みを与えています。

外部リンク

『風博士』：新字新仮名 - 青空文庫
『風博士』：新字旧仮名 - 青空文庫
坂口安吾デジタルミュージアム
SIS company inc. Web produce シス・カンパニー公演　風博士

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