香坂高宗

香坂高宗の生涯

香坂高宗（こうさか たかむね、生年不詳 - 応永14年（1407年））は、鎌倉時代末期から室町時代初期にかけて活躍した武将です。信濃国に位置する大河原城を拠点とし、南朝に仕えた忠臣として知られています。特に、信濃宮宗良親王を30年間にわたり庇護したことがその名を広めています。

人物背景

香坂高宗は滋野氏（根津氏）の傍流の一族で、北信濃の上水内郡を中心とする山間地区に勢力を築いていました。彼の先祖に関しては諸説あり、1326年（建武3年）に南朝方として牧城で挙兵した香坂心覚の存在が言及されています。しかし、高宗の伊那香坂氏がこの心覚とどのように関係しているかは明確ではなく、実際には彼の一族は望月氏の傍流であると指摘されています。

南朝への忠節

高宗は、1343年冬（あるいは1344年）に後醍醐帝の皇子である宗良親王を大河原城に迎え、さらに奥地に仮の御所を設けました。周辺には諏訪神党に属する知久氏や桃井氏が集まり、宗良親王に対する庇護を行いました。この時期、伊那は天竜川の東岸が南朝の勢力圏で、西岸は北朝方の小笠原氏によって支配されていました。

高宗は、自らの領地である大草郷（上伊那郡中川村）から大河原（下伊那郡大鹿村）までを管理しており、宗良親王には「信濃宮」と呼ばれるほかに、その土地を反映した「大草の宮」や香坂に由来する「幸坂の宮」として認知されていました。

転戦とその後

残念ながら、高宗自身の具体的な戦功については記録が残っていませんが、宗良親王に従い各地で戦ったと推測されています。彼が庇護した大河原は、信濃だけでなく東国や北陸道における南朝方の戦略拠点とされていました。1352年（正平7年/文和元年）には、宗良親王が越後や信濃の南朝勢力を集結させ、武蔵野合戦に出陣しますが、敗れたため再び信濃に逃げ帰ります。1355年には北朝方の信濃守護である小笠原長基との戦い（桔梗ヶ原の戦い）に臨みますが、ここでも敗北を喫しました。

1369年には、関東管領で信濃守護職の上杉朝房が大河原に攻め寄せてきますが、高宗はその地を守り抜くことに成功しました。このように、数々の困難を乗り越えながらも、南朝に対する忠節を貫く姿勢は評価されていました。

終焉と後の評価

1374年、失意のまま宗良親王は吉野に去りますが、その後も何度も大河原を訪れていたと伝えられています。高宗は、1407年に大河原城で亡くなりました。その後、大正4年（1915年）には、宗良親王に対する忠義が評価され、特旨をもって従四位が贈られました。

家族と子孫

伝承によれば、高宗には少なくとも2人の子どもがいたとされ、特に第2子とされる松平二郎の居館跡は現在の松平神社とされています。こうした伝承は、高宗の人生とその影響を後世に伝える重要な証拠となっています。

彼の生涯は、南朝の武将としての忠誠心を示すものであり、信濃の歴史に名を刻む重要な人物であったことが分かります。

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