香港の競馬

香港競馬：歴史と魅力

香港競馬は、1845年にイギリス植民地時代の香港でポニーを用いた競馬が始まったことに端を発します。1846年にはハッピーバレー競馬場が開設され、1884年には香港ジョッキークラブが設立されて競馬運営の中枢を担うようになりました。その後、1918年のハッピーバレー競馬場火災という大きな悲劇に見舞われるなど、幾多の困難を乗り越えながら発展を遂げてきました。第二次世界大戦による壊滅的な被害からの復興を経て、1947年にはオーストラリアからの競走馬の輸入を機に競馬が再開。1960年代にはサラブレッドによる競走が本格化し、1971年には外国人騎手の騎乗が認められるなど、国際色豊かな競馬へと進化を遂げました。1973年にはナイター競走と場外馬券発売が開始され、1978年には沙田競馬場が開設されるなど、競馬場の整備も進みました。1988年には香港招待カップが開催され、2016年には国際セリ名簿基準書のパートI国に昇格するなど、国際的な地位を確立しました。2018年には中国本土にトレーニングセンターが開設されるなど、香港競馬は現在も発展を続けています。

香港競馬の開催と競走

香港では、中華人民共和国の賭博禁止法とは異なる特別行政区としての独自の法体系の下、馬券発売を伴う競馬が合法的に開催されています。香港ジョッキークラブが競馬のあらゆる面を統括し、開催時期は気温の高い夏季を避け、9月から翌年7月中旬までの期間を1シーズンとしています。毎週水曜日のナイター競走と、土曜日または日曜日の日中競走という週2回開催が基本ですが、祝日開催などにより、週1回のみの開催となる場合もあります。

競走はサラブレッドによる平地競走が中心で、芝コースが主体です。ダート競走はほとんど行われず、シャティン競馬場ではオールウェザートラックでの競走が一部行われるのみです。競走馬は沙田競馬場の厩舎で管理され、2018年の中国本土従化トレーニングセンター開設により、調教・管理体制が強化されました。ただし、従化トレーニングセンターからの直接出走は認められておらず、レース数日前に沙田競馬場の厩舎に輸送する必要があります。ハッピーバレー競馬場開催時は、当日輸送が行われます。

競走の大半はハンデキャップ競走です。フルゲートは14頭で、出走登録は開催約1週間前、出走馬と枠順は3日前までに確定し、前日より馬券発売が開始されます。出走取消の場合は予備登録馬が出走します。馬番はハンデキャップの重さ順（重い馬が1番）ですが、枠順は抽選です。発走はスターティングゲートの赤色灯点灯後、全馬ゲートインで開始されます。馬券発売締め切りはゲートオープンとベルの音です。

香港では、ドバイワールドカップミーティング、ブリーダーズカップ、欧州主要競走に加え、日本のスプリンターズステークス、ジャパンカップ、天皇賞などの主要G1競走の馬券も発売されています。香港開催のない日曜日は、日本の一般・特別競走も発売されます。かつては出走頭数14頭以上の場合、15頭目以降は別枠扱いでしたが、2009年の制度改正で24頭まで馬番通りに発売可能になりました。

香港競馬の馬券

香港競馬の馬券は、パリミュチュエル方式のみが合法で、ブックメーカーは違法です。競馬場内と場外発売所で、電話投票やインターネット投票も可能です。購入年齢は18歳以上です。馬券の種類は非常に豊富で、14頭という出走頭数ながら、大波乱も起こりうる点が魅力となっています。かつてはマークカードに手書きでしたが、現在は専用の投票券用紙に感熱印刷されています。発売単位は10ドルが基本ですが、「Flexi Bet」制度により、柔軟な購入が可能です。

馬券の種類は、単勝（Win）、複勝（Place）、馬連（Quinella）、馬単（Forecast）、ワイド（Quinella Place）、三連単（Tierce）、三連複（Trio）、四連複（First 4）、四連単（Quartet）など多岐に渡ります。さらに、複数のレースにまたがる「All Up（コロガシ）」、「Double（二重勝単勝式）」、「Treble（三重勝単勝式）」、「Double Trio（二重三連勝複式）」、「Triple Trio（三重三連勝複式）」、「Six Up（六重勝複勝式）」など、日本にはない独自の馬券も存在します。 また、騎手や調教師のポイントを予想する「Jockey Challenge」「Trainer Challenge」といった独自の投票方式もあります。

競走除外が発生した場合の払い戻し処理は日本と異なるため注意が必要です。All Upにおいては、単勝、複勝、馬連、ワイドは次レースに持ち越し、その他の重勝式は除外馬を1番人気馬とみなして計算されます。

香港競馬を取り巻く環境

香港では競走馬の生産は行われておらず、オーストラリアやヨーロッパなどからの輸入に頼っています。日本産馬も過去にいましたが、目立った成績は残せていません。競走馬の大半は騸馬で、牡馬は少なく、優秀な成績を収めた馬の中には種牡馬となったものもいます。牝馬は非常に少ないです。

騎手は、地元香港出身者もいますが、リーディング上位は多くの場合、海外出身者です。過去にはダグラス・ホワイト騎手（南アフリカ）が長期にわたりリーディングジョッキーでしたが、その後、ジョアン・モレイラ騎手（ブラジル）などが記録を更新しました。女性騎手も過去にいましたが、2018年に蒋嘉琦騎手が引退して以降は所属していません。

調教師は、海外出身者が多くを占める一方で、香港出身者も活躍しています。ジョン・ムーア調教師などは、日本でも管理馬を出走させています。

馬主は香港ジョッキークラブ会員でなければならず、会員になるには推薦と厳正な審査が必要です。組合馬主（共同所有）も一般的で、一人の馬主が所有できる馬は3頭に制限されています。会員になることは香港におけるステイタスシンボルでもあります。かつては外国人馬主が多かったですが、現在は香港住民が大半を占めています。日本人馬主もいます。

香港ジョッキークラブは、海外馬の馬名に英語表記とともに漢字表記を付与しています。単なる翻訳ではなく、意味や血統背景などを考慮した、見映えのする漢字表記が選定されます。

主要な競走

香港競馬には、香港国際競走（香港カップ、香港ヴァーズ、香港マイル、香港スプリント）、クイーンエリザベス2世カップ、チャンピオンズマイル、香港ダービー、香港スチュワーズカップ、香港ゴールドカップなど、多くの重要な競走があります。国際競走は世界中からトップクラスの競走馬が集まり、香港競馬の国際的な地位を象徴するものです。

メディア

香港競馬は、地元紙、競馬新聞、競馬雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットなどを通じて広く報道されています。TVBや有線テレビなどが競馬中継を行っており、ジョッキークラブのホームページではレース映像や関連番組を配信しています。

競馬場

主要な競馬場として、ハッピーバレー競馬場と沙田競馬場があります。沙田競馬場には、調教施設も併設されています。

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