香港上海銀行・香港本店ビル

香港上海銀行・香港本店ビル（HSBC Main Building）は、世界的な金融グループであるHSBCグループの中核、香港上海銀行の本店として、香港の中心部にそびえ立つ超高層ビルです。イギリス人建築家、ノーマン・フォスター卿によって設計され、1985年に完成しました。香港を代表するランドマークであり、ハイテク建築の傑作として世界的に知られています。

歴史と背景

現在、香港上海銀行本店ビルが建つ場所には、1865年から銀行の施設が存在していました。この場所は、香港の中心である中環（セントラル）地区に位置し、かつてはイギリス統治時代の象徴でもありました。中環地区が現在の政治・経済の中心地になったのは、香港政庁の施設や香港上海銀行本店が設置されたことが大きく影響しています。

1933年から1935年にかけて建てられた3代目の本店ビルは、当時、極東で最も高い70mの建築物であり、シカゴ派建築の影響を受けていました。第二次世界大戦中には、日本軍の占領下で総督部の本部として使用され、戦後、現在の建物に建て替えられるまで利用されました。

1983年、香港上海銀行は、ノーマン・フォスターに新たな本店ビルの設計を依頼しました。その際、長期間にわたり陳腐化しないデザインという条件が出されました。1985年に完成した新しい本店ビルは、高さ178.8m、44階建てで、当時、中環地区で最も高い建物となりました。この建物は、フォスターの代表作の一つとして評価されています。

建築の特徴

この建物は、最先端の建築技術が惜しみなく投入されました。超高層ビルとしては世界初となる吊り構造を採用しており、時折、床に揺れを感じることがあります。ガラスを多用したデザインは、ミニマリズム建築に通じ、自然光を最大限に取り入れる工夫がなされています。この設計思想は、後にフォスターが手がけたドイツのコメルツ銀行タワーにも受け継がれています。また、設計には風水の専門家も関わったとされ、香港らしいエピソードとして語り継がれています。

地元では、建物側面の鉄骨の形状から「蟹ビル」という愛称で親しまれています。また、この建物のデザインは、東京のセンチュリータワーに影響を与えたとされています。HSBCグループの持ち株会社は、設立当初はここを拠点としていましたが、現在はロンドンに本部を置いています。

施設

地上階の皇后像広場側には、1935年から設置されている獅子像があります。この像は、香港上海銀行のシンボルであり、紙幣にも描かれています。雄叫びをあげている像は「Stephen」、もう一方は「Stitt」と呼ばれ、20世紀前半の経営幹部の名に由来します。一般の顧客は、地上階のATMコーナーと3階の窓口のみ利用できます。セキュリティのため、他の階への立ち入りは制限されています。店内には、建物の概要を記したパンフレットが配布されていますが、展望施設はありません。

風水

設計にあたり、風水師の助言が取り入れられました。ピロティや緩やかな段差は、「龍の道」を遮らないように考慮されています。当初、下向きに設計された鉄骨は、風水師の指摘により上向きに変更されました。屋上のゴンドラは、中国銀行タワーの尖った部分に対抗するために設置されたという説もありますが、これらは非科学的な都市伝説の域を出ていません。

周辺施設

香港上海銀行本店ビルの周辺には、MTR中環駅、香港駅、香港国際金融中心、香港特別行政区終審法院、中国銀行タワー、スタンダードチャータード銀行、香港証券取引所、シティバンクタワー、ジャーディン・ハウス、大会堂、香港郵政総局、太子大廈、長江センター、遮打大廈、マンダリン・オリエンタル香港、歴山大廈などの施設があります。

交通

MTR港島線・荃湾線の中環駅、MTR機場快線・東涌線の香港駅から徒歩圏内です。香港トラム、スターフェリー、バス、ミニバスなどの公共交通機関も利用できます。

外部リンク

香港上海銀行のサイト（日本語）
HSBC公式サイト（英語版）
Hong Kong & Shanghai Bank - Emporis
* ノーマン・フォスター公式サイト（英語版）

香港上海銀行・香港本店ビルは、香港の歴史と経済、そして現代建築の粋を集めた象徴的な存在です。その美しいデザインと機能性は、訪れる人々を魅了し続けています。

もう一度検索

香港上海銀行・香港本店ビル