馬ウイルス性動脈炎

馬ウイルス性動脈炎（EVA）

馬ウイルス性動脈炎（Equine Viral Arteritis、EVA）は、ウマに特有のウイルス感染症です。この病気は日本において家畜伝染病予防法によって届出伝染病として指定されています。主にウマが感染するこの病気の原因は、馬動脈炎ウイルスです。このウイルスは、ニドウイルス目アルテリウイルス科のアルテリウイルス属に属する一本鎖RNAウイルスであり、エンベロープを持つ球形の粒子（直径約60nm）です。

原因と症状

感染源は、感染動物の精液、尿、流産した胎盤や胎児であり、ウマ類に特異的に発生する病気です。潜伏期間は約3日から14日で、初期症状には発熱、感冒様症状、結膜炎、そして浮腫などがあります。組織学的には、小動脈炎と小動脈の中膜の変性壊死が見られることが特徴です。ただし、目に見える症状は比較的軽微なことが多いです。

特に繁殖牝馬が感染すると、流産を引き起こす危険性があります。また、急性期を過ぎた牡馬は、症状が現れないキャリアとなるケースが多いのもこの病気の特徴です。

この病気は世界中に存在しますが、日本は非常に珍しい清浄地域であり、過去の発生例はありません。

対処法

感染が確認された場合、特定の治療法は存在せず、対症療法が行われるのが一般的です。日本では、感染馬には届出や隔離の義務が課されていますが、感染が必ずしも殺処分につながるものではありません。ただし、流産を引き起こす可能性があり、畜産業界、特に競走馬生産にとっては経済的な影響を及ぼす感染症です。

サラブレッドなどの生産が行われている国や地域では、常に警戒される病気のひとつです。EVAに対しては生ワクチンと不活化ワクチンが実用化されており、日本では不活化ワクチンの備蓄があります。また、国際的な衛生条件により、EVAに対して陰性が確認されない馬は、日本への入国が許可されないのが一般的です。

そのため、海外のセールで馬を購入する際、日本のバイヤーは必ず最初にEVAの陰性を確認することが重要なプロセスです。市場関係者はこの手続きをよく理解しており、上場者側も日本のバイヤーが多く集まるセールでは、検疫の際に陰性が確認できるように、出品馬にEVAワクチンを接種しないのが常識です。

エピソード

2007年11月25日に予定されていたジャパンカップに出走予定だったアイルランドの競走馬ディラントーマスは、入国検疫時に馬ウイルス性動脈炎の陰性が確認できなかったため、出走を断念せざるを得ませんでした。このケースでは、ディラントーマス自身にEVAの症状は見られなかったものの、来日以前のアメリカ滞在中にEVAワクチンを接種していたため、ワクチン抗体が原因で陰性が確認できなかったと考えられます。しかし、陰性が確認できなかった時点で、日本とアイルランドの衛生条件を満たすことができず、入国が不許可となりました。

関連項目

• - 海外悪性伝染病
• - 馬ゲタウイルス病
• - 馬鼻肺炎

これらの情報から、馬ウイルス性動脈炎の重要性が分かります。この病気に関する最新のガイドラインや研究は、ウマに関わる人々にとって非常に価値のあるものであると言えるでしょう。

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