馬文禄

馬文禄：回民蜂起を率いた指導者

馬文禄（ば ぶんろく、Ma Wenlu、生年不詳 - 1873年）は、19世紀後半に中国西北部で発生した回民蜂起における重要な指導者の一人です。甘粛省粛州（現在の甘粛省酒泉市一帯）の出身で、当初は西寧の馬文義の蜂起に参加しましたが、後に自ら粛州で蜂起を率いることになります。

粛州での蜂起

1865年、馬文禄は回民を率いて故郷の粛州を占拠しました。粛州は堅固な城郭を有しており、清朝軍は容易に手出しができませんでした。その間、金積堡、河州、西寧など他の回民蜂起軍の拠点が次々と陥落し、多くの回民兵が粛州に逃れてきました。これにより、馬文禄は彼らから「兵馬大元帥」に推挙され、軍事的な指導者としての地位を確立します。

清朝軍の攻撃と防衛

1872年3月、清朝の将軍左宗棠は、徐占彪と楊世俊に命じて粛州を攻撃させました。しかし、楊世俊軍は包囲に失敗し、兵力の大半を失うという失態を演じてしまいました。左宗棠は態勢を立て直すべく、金順と宋慶を派遣し、粛州城郊外の塔爾湾を占拠させました。さらに張曜らを援軍として送り込み、粛州城を包囲します。

しかし、馬文禄率いる回民軍は、清朝軍の包囲を巧みに耐え抜きました。そのため、1873年8月には、左宗棠自身が督戦に赴き、劉錦棠も援軍として駆けつけました。これにより、清朝軍は60余営という大兵力で粛州城を完全に包囲することに成功しました。包囲が長期化するにつれ、馬文禄軍の食糧不足は深刻化し、兵站も限界に達しました。

包囲と降伏

さらに、馬文禄軍と協力関係にあった陝西回民蜂起軍の指導者、白彦虎が清朝軍に敗北し、東トルキスタンのヤクブ・ベクのもとに逃れたことが、馬文禄軍に大きな打撃を与えました。外部からの援軍の見込みが無くなった上、食糧も尽きかけており、抗戦を続けることが不可能になった馬文禄は、遂に清朝軍に投降することを選択しました。

降伏後、馬文禄は処刑され、その波乱に満ちた生涯を終えました。彼が率いた粛州の蜂起は、19世紀後半の回民蜂起における重要な出来事であり、清朝の支配に対する抵抗の象徴として、歴史にその名を刻んでいます。

参考文献

白寿彝主編『回族人物志』寧夏人民出版社
『中国歴史大辞典・清史（下）』上海辞書出版社

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