駱駝騎兵

駱駝騎兵

駱駝騎兵とは、ラクダ（駱駝）に騎乗して戦闘を行う騎兵の一種です。通常の騎兵が馬に乗るのに対し、ラクダの特性を活かした戦い方が特徴です。

概要

長所

砂漠での高い機動性: 灼熱の砂漠を迅速かつ安全に移動できます。
敵騎兵・戦象の撹乱: ラクダの体臭は馬や象が苦手とするため、敵を混乱させられます（ただし、味方の騎兵や戦象への対策が必要）。
高所からの攻撃: 馬よりも背が高いため、高い位置から攻撃できます。細長い剣や槍が有効です。
高い積載能力: 馬よりも重い荷物を運搬でき、二人乗りや物資輸送も可能です。

短所

小回りが利かない: 機敏な動きは苦手です。
操縦の難しさ: ラクダは気性が荒く、熟練者でなければ扱えません。
再騎乗の困難さ: 一度降りると再騎乗が難しく、竜騎兵のような運用には不向きです。
乾燥地以外での有効性の低さ: 砂漠以外の地形では能力を発揮しにくいです。

歴史

ラクダ騎兵の起源は定かではありませんが、ラクダが家畜化された紀元前2500年頃には、騎乗のアイデアがあったと考えられます。ニネヴェで発掘された紀元前7世紀のアッシリア王アッシュールバニパルの宮殿跡のレリーフには、アラビア人がラクダに騎乗して戦う様子が描かれています。また、紀元前6世紀には、アケメネス朝ペルシアの将軍ハルパゴスがラクダ騎兵を編成し、勝利に貢献しました。

砂漠地帯では、隊商が略奪者から身を守るために武装し、ラクダに乗って自衛していました。こうした武装した隊商や略奪者が、ラクダ騎兵の原型になったと考えられます。6～7世紀以降、サハラ砂漠の砂漠化が加速し、北アフリカの住民はラクダを導入し、商業を中心とした生活様式に移行しました。ベルベル人のトゥアレグ族は、サハラ砂漠の通商を牛耳り、ラクダを利用した戦闘に長けていました。

現代でも、中東や北アフリカの諸国では、砂漠地帯の警備のために正規軍としてラクダ騎兵が組織されることがあります。

軽装の駱駝騎兵

砂漠での機動力を活かしたゲリラ戦を得意とします。敵に奇襲を仕掛け、追撃を困難にする戦法や、敵を砂漠におびき寄せて壊滅させる戦法を用います。ローマと戦ったセレウコス朝シリアや、十字軍に対するアラビア人の騎兵が知られています。彼らは重装備の敵を、砂漠での戦いで打ち破りました。近代では、ヨーロッパ列強の植民地化に対し、ベドウィンやベルベル人がラクダに騎乗し、銃でゲリラ戦を展開しました。

重装の駱駝騎兵

ローマ帝国と戦ったパルミラのラクダ騎兵は、騎手とラクダに装甲を施したカタフラクトでした。機動性は低いものの、槍や細長い剣で突撃し、歩兵主体のレギオンを苦しめました。ローマ軍は、ラクダの足に効果的なまきびしを使用し、突撃の威力を削ぎました。

その他の駱駝騎兵

チンギス・ハーン率いるモンゴル帝国では、太鼓奏者がフタコブラクダに太鼓を乗せて、攻撃の指揮を伝えていました。また、イスラム帝国4代目カリフのアリーと戦ったムハンマドの未亡人アーイシャは、ラクダに乗って軍隊を指揮しました。この戦いは「ラクダの戦い」と呼ばれています。

近代以前のアラブ人は、戦争の際にラクダを物資の運搬や負傷者の輸送に利用しました。自動車が発達した現代でも、ラクダ騎兵は砂漠地帯のパトロールなどに利用されています。

関連項目

軽装騎兵
動物兵器
ジャンジャウィード
ザンブーラキ

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