高徳寺 (中津川市)

高徳寺は、岐阜県中津川市蛭川奥渡に位置する臨済宗妙心寺派の寺院で、寶林山を山号としています。本尊は十一面観音菩薩で、恵那三十三観音霊場の三十番札所となっています。また、境内にある蛙薬師は中部四十九薬師霊場の三十五番札所として知られています。

蛙薬師の由緒

蛙薬師は、伝説によると南北朝時代の1387年、後醍醐天皇の皇孫尹良親王に仕えた和田政忠が、この地に駐屯した際に南朝の戦没者を弔い、疫病に苦しむ村人のために薬師如来を奉安したのが始まりとされています。薬師如来が安置された巨岩が蛙の形に似ていたことから、「蛙薬師」と呼ばれるようになりました。正式には「蛙薬師瑠璃光如来」と称し、高徳寺の第二本尊とされています。

しかし、明治3年（1870年）の廃仏毀釈により、蛙薬師は木曽川に投げ込まれてしまいました。現在の蛙薬師は、昭和9年（1934年）に篤志家によって再建されたもので、名古屋の仏師によって作られました。

金剛院の歴史

高徳寺の歴史は、かつてこの地にあった金剛院に遡ります。昔、寶林山には纐纈伊勢守の山荘がありましたが、1443年に宇都峯宮守永親王の三回忌に際し、戦死者を弔うために山荘が寺院となりました。鎌倉の建長寺から観海行者を招き、寶林山金剛院が開山されました。

その後、1614年に苗木藩主の遠山友政が菩提寺を建立するにあたり、大仙寺の維天継縦を招こうとしましたが、高齢のため、代わりに夬雲玄孚が推挙されました。夬雲玄孚は梅龍寺と龍福寺を兼務していたため、雲林寺の創建は弟子の中華玄等に任せられました。中華玄等の後、一秀玄廣が雲林寺の三世となり、苗木藩領内の寺院を臨済宗妙心寺派に改宗させました。この時、金剛院に住んでいた山伏の佐藤寶林は、雲林寺の一秀玄廣から僧号を受け、松雲宗端となりました。

寶林寺の成立と廃寺

1626年、金剛院は臨済宗妙心寺派に改宗し、寶林寺となりました。松雲宗端が初代住職となり、山伏の寺であった頃の刀、法螺貝、錫杖などが残されていましたが、法螺貝は後に安弘見神社で保管されることになりました。しかし、1870年の廃仏毀釈により、寶林寺は取り壊され、廃寺となってしまいました。最後の住職は神官となりました。

六地蔵の歴史

1727年から1732年にかけて、寶林寺の住職墓地に村の信者が六地蔵を建立しました。しかし、1870年の廃仏毀釈の際、六地蔵は首を落とされて廃棄されそうになったため、土に埋めて隠されました。その後、発掘されて修理されましたが、長らく風雨にさらされた状態でした。1953年、六地蔵は高徳寺に移され、蛙薬師へ行く途中の鐘楼跡に安置されました。1973年には、六地蔵の位置を改めて供養会が行われました。

過去帳と普門院(普門庵)

寶林寺の過去帳は、廃仏毀釈を免れて現存しています。これは、寶林寺が中興した慶安年間から廃仏毀釈までの約220年間の記録です。現在、過去帳の原本は蛭川の神国教に保管されていますが、渓宗曹滴によって複製が作成され保存されています。1972年、高徳寺では盛大な過去帳供養が執り行われました。

また、かつてこの地には普門院(普門庵)という寺院がありました。1544年に木曽川の洪水で漂着した厨子に木曽義仲の旗紋があったことから、義仲の持仏と判明し、堂を建てて祀られました。1546年には鎌倉から導師が派遣され、開堂供養が行われました。堂の側から湧き出る冷泉は眼病と脳疾に効能があるとされ、多くの人が訪れましたが、その後、兵火で焼失しました。1674年に苗木藩主の遠山友春が、蛙薬師堂と観音堂を再建し、弟の寛室宗仁を開山住持として、奥渡山普門院(普門庵)と名付けました。1676年に寺鐘が完成し、遠山友春らが鐘供養を営みました。しかし、1870年の廃仏毀釈で普門院も取り壊されて廃寺となりました。本尊の十一面観音菩薩は信徒によって隠されましたが、後に持ち去られてしまいます。

高徳寺としての再興

1877年、長野県飯田で観音像の御開帳が行われた際に、蛭川村の村人が普門院の十一面観音菩薩であることを知り、返還を求めました。証拠として持参した観音像の頭部の破片を符合させたところ、返還に成功しました。1878年、浅野剛宗が飯田から返還された十一面観音菩薩を本尊として、岐阜県山県郡松尾村にあった高徳寺を普門院の跡地に移転させました。この時、廃寺となった寶林寺に因み、山号を寶林山としました。

その後、浅野剛宗は高徳寺を退去し、1923年に法界寺の渓宗曹滴が高徳寺の住持も兼務することになりました。1930年には渓宗曹滴が高徳寺に転住しました。1963年には梵鐘が再鋳造されました。

高徳寺の裏山

高徳寺の裏山には、弁財天を祀る池や六地蔵が安置されています。中腹には蛙薬師と稲荷社があり、小川を渡ると不動明王像、さらに登ると穴岩観音、山頂には立弘法像があります。