高階成章 (公卿)

高階成章：地方官から公卿への華麗なる転身と波瀾万丈の人生

高階成章は、平安時代中期に活躍した公卿です。高階業遠を父に持ち、幼少期から朝廷においてキャリアを積みました。彼は、主殿権助や春宮（後の後一条天皇）の蔵人として仕え、将来を嘱望される若手官僚の一人でした。

後一条天皇の即位後、成章は昇進を重ねます。六位蔵人に任じられ、式部少丞を兼ねると、ほどなくして従五位下・筑後権守に叙任されました。その後、紀伊守を経て、治国の功績により従五位上に昇進するなど順風満帆なキャリアを歩みます。

しかし、彼のキャリアは平坦なものではありませんでした。治安元年（1021年）、平安京で、敦明親王の従者から凄惨な暴行を受けます。成章は、髪を掴まれ地面に引きずり倒され、執拗に蹴り飛ばされたのです。この事件は、敦明親王が紀伊国に所有する荘園に関わる成章への恨みから発生したと伝えられています。

その後も、成章は地方官として活躍します。春宮・敦良親王（後の後朱雀天皇）の春宮大進に任じられると、肥後守、大宰大弐と九州の地方官を兼務しました。後朱雀天皇の即位に伴い、正五位下に昇叙され、さらに春宮・親仁親王（後の後冷泉天皇）の春宮権大進に任じられます。近江守を兼ねた彼は、その後従四位下・主殿頭に昇進しますが、親仁親王の即位を見ることなく春宮権大進の職を辞します。

その後、阿波守、伊予守と四国の国司を歴任したのち、妻の藤原賢子（大弐三位）が後冷泉天皇の乳母であった縁もあり、後冷泉朝の永承年間には従四位上、正四位下と昇進を続けました。

天喜2年（1054年）、成章は大宰大弐に任ぜられ再び九州に赴任。翌年には、その功績を認められて従三位に叙せられました。これは、高階氏としては大伯父の高階成忠以来約70年ぶりとなる公卿への昇進でした。さらに、天喜6年（1058年）には常寧殿造営の功績により正三位に昇進しますが、同年の2月に69歳で亡くなりました。

成章は地方官を歴任し、莫大な富を蓄えたことから「欲大弐」と呼ばれていました。また、勅撰歌人としても知られ、『後拾遺和歌集』に1首が収録されています。彼の妻である藤原賢子は、著名な歌人であり、「大弐三位」として知られています。この称号は、成章が「大宰大弐」に、賢子が「三位」に叙任されたことに由来します。二人の間には、のちに後冷泉天皇の落胤を養子とした高階為家など多くの子供がいました。

高階成章の人生は、地方官としての地道な努力と、朝廷での複雑な人間関係、そして数々の昇進と挫折が織りなす、波乱に満ちたものでした。地方官としての実務能力と、朝廷での巧みな人脈形成によって、彼は着実に地位を築き上げ、最終的に公卿の地位に上り詰めたのです。彼の生涯は、平安時代中期の政治や社会を知る上で貴重な資料となっています。

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