魏大中

魏大中（ぎ だいちゅう、1575年 - 1625年）は、明代末期の官僚であり、東林党の主要な人物の一人です。字は孔時、号は廓園と称しました。彼は嘉興府嘉善県の出身で、その生涯は激動の時代における官僚の理想と悲劇を象徴しています。

生涯

若い頃から学問に励み、高攀龍に師事して品行を磨きました。家は非常に貧しかったものの、些細なことにはこだわらない、さっぱりとした性格の持ち主でした。郷試に合格した際、家族が新しい衣服を準備しましたが、魏大中はこれを拒否し、その質素な生活態度を示しました。1616年（万暦44年）に進士に及第し、行人の官に任じられました。彼は勅命を帯びて各地に使者として派遣されましたが、その任務を遂行する上で、赴任先で騒動を起こすようなことは一切ありませんでした。

1621年（天啓元年）、魏大中は工科給事中に抜擢されました。当時、楊鎬と李如楨の処刑が確定していましたが、東閣大学士の韓爌が減刑を上奏しました。これに対し、魏大中は激しく反論し、王徳完を批判する上疏を提出しました。この行動が天啓帝の不興を買い、王徳完との間で激しい論争が繰り広げられました。この事件は、韓爌の辞任につながるなど、朝廷内に大きな混乱をもたらしました。

1622年（天啓2年）、魏大中は同僚の周朝瑞らと共に東閣大学士の沈紘を弾劾する上疏を二度にわたり提出しました。この中で、彼は魏進忠と客氏の不正についても言及しました。また、泰昌帝の死因をめぐる紅丸の案に関連して、方従哲、崔文昇、李可灼の処刑を求め、さらにすでに亡くなっていた鄭国泰を皇太子暗殺未遂の罪で非難しました。彼は東林党迫害のきっかけを作ったとされる太常寺少卿の王紹徽を憎み、彼の排斥を求めて上疏しました。これにより、王紹徽は官を辞任することになりました。その後、魏大中は礼科左給事中に転任しました。

1624年（天啓4年）、魏大中は吏科都給事中に昇進しました。楊漣が魏忠賢の二十四大罪を弾劾する上疏を提出すると、魏大中もこれに同調し、魏忠賢の排除を求めました。しかし、魏忠賢は魏広微と結託し、御史の陳九疇を通じて魏大中を弾劾させ、魏大中は官位を三級降格され、地方に左遷されました。1625年（天啓5年）、御史の梁夢環によって再び弾劾され、楊鎬や熊廷弼から賄賂を受け取ったという冤罪を着せられて投獄されました。許顕純による苛烈な拷問を受け、同年7月に54歳で獄死しました。

魏大中の死後、崇禎帝が即位すると、その功績を認められ、太常寺卿の位が追贈されました。諡は忠節とされました。彼の著作として、『蔵密斎集』25巻が残されています。

子女

魏大中には二人の息子がいました。

魏学洢（長男、字は子敬）：父の死を嘆き悲しみ、病に倒れ亡くなりました。
魏学濂（次男）：1643年に進士に及第しましたが、翌年に李自成が北京を陥落させると、戸部司務の職を恥じて自殺しました。

魏大中の生涯は、明朝末期の政治腐敗と、それに抗った官僚たちの姿を色濃く映し出しています。彼の清廉潔白な人柄と、不正を許さない姿勢は、後世に大きな影響を与えました。

参考文献

* 『明史』巻244 列伝第132

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