鴨祐之

鴨祐之：江戸時代中期の国学者と神職

鴨祐之（かも の すけゆき、1659年-1723年）は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した、国学者にして神職です。本姓は賀茂県主氏、家名は梨木、号は桂斎で知られています。京都で鴨祐永の子として生まれ、幼少期から神道の世界に身を投じました。

下鴨神社（賀茂御祖神社）の禰宜に任じられた鴨祐之は、若くして正三位という高い位階に叙任されました。その後、国学や垂加神道の大家として名高い山崎闇斎に師事し、その教えを深く受け継ぎました。

鴨祐之が歴史に名を刻むこととなったのは、下鴨神社の再興に尽力したことにあります。17世紀初頭から途絶えていた葵祭の復活を目指し、朝廷にその現状を訴え、実現に大きく貢献しました。この功績により、鴨祐之は垂加神道における代表的な神職として広く知られるようになりました。

神職としての活動と並行して、鴨祐之は和歌古学にも精通し、数々の著作を著しました。その学識は多岐に渡り、神道のみならず、歴史研究にも大きな足跡を残しています。代表的な著作物として、『大八洲記』、『神代和解』、『日本逸史』などが挙げられます。『日本逸史』は、歴史書『日本後紀』の欠損部分を補う全40巻に及ぶ大著であり、彼の博覧強記ぶりを示すものです。

鴨祐之の学問への貢献は、没後も長く人々の記憶に刻まれました。京都市上京区の西園寺には、彼の墓が建立され、現在もその功績を偲ばせる場所となっています。また、その孫には鴨祐為（梨木祐為）がおり、家系を通して神道や国学が受け継がれていったことが伺えます。

鴨祐之は、単なる神職としてだけでなく、国学の振興、そして歴史研究にも貢献した重要な人物です。彼の残した著作は、現代においても貴重な史料として研究され、江戸時代の文化や思想を解き明かす上で重要な役割を果たしています。下鴨神社の葵祭再興という具体的な行動、そして数々の著作を通して、鴨祐之は後世に大きな影響を与え続け、江戸時代における国学、神道、そして歴史研究の発展に貢献しました。彼の生涯と業績は、日本の歴史文化を理解する上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。

主な著作物

『大八洲記』
『神代和解』
『日本逸史』(全40巻、『日本後紀』の残欠書)

参考文献

デジタル版 日本人名大辞典+Plus（講談社）『鴨祐之』- コトバンク
* 朝日日本歴史人物事典（朝日新聞出版）『鴨祐之』- コトバンク

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