鶴見川口駅

鶴見川口駅（つるみかわぐちえき）は、かつて神奈川県横浜市鶴見区末広町一丁目に存在した、日本国有鉄道（国鉄）鶴見線貨物支線の貨物駅でした。電報略号には「ツハ」が使用されていました。

この駅は、1982年（昭和57年）に独立した駅としては廃止され、浅野駅に統合される形でその機能を終えましたが、その後も1986年（昭和61年）まで、浅野駅の構内扱いとして貨物の取り扱いが継続されていました。

歴史

鶴見川口駅は、県営による埋立地として造成が進められていた末広町地区において、鶴見線を建設・運営していた私鉄、鶴見臨港鉄道が貨物輸送のために支線を延伸したことにより誕生しました。開業は1935年（昭和10年）12月1日です。当初、この貨物支線は弁天橋駅から分岐していましたが、開業当時の周辺地域にはまだ大規模な工場の進出は少なく、将来的な貨物需要を見越した先行投資であったと考えられます。

1943年（昭和18年）7月1日、鶴見臨港鉄道の鉄道事業が国によって買収され国有化されたことに伴い、鶴見川口駅は鉄道省（後に国鉄）鶴見線の一駅となりました。この国有化と同時期に、貨物支線の分岐点は弁天橋駅から浅野駅に変更されました。さらに時期は不明ですが、浅野駅から直接当駅へ向かうシンプルな配線から、一度鶴見小野駅付近まで進み、そこで折り返して当駅へ進入するという特徴的なスイッチバック式の配線に改められました。

国有化された同じ年、当駅に接続する初めての専用線として、東京瓦斯化学工業横浜工場（後の東京瓦斯横浜工場）への専用線が開通しました。この専用線では、当初は缶詰めのベンゾールやトルオールなどが出荷されていましたが、1958年（昭和33年）頃からは系列会社の所有するタンク車による輸送に移行しました。特に、1973年（昭和48年）からは輸入液化天然ガス（LNG）の輸送が始まり、東京瓦斯所有の専用タンク車（タム9600形）が、根岸でタンカーから陸揚げされたLNGをタンクローリーで当駅まで運び込み、さらにタンク車に積み替えて日立市まで輸送するという、特徴的なリレー輸送が行われました。ベンゼン等の輸送は1975年（昭和50年）頃に終了しましたが、LNG輸送は1986年頃まで続けられました。

2番目の専用線は、鶴見曹達の工場へ向けたもので、1956年（昭和31年）頃に開通しました。この専用線では、苛性ソーダや液化塩素といった化学薬品類が、自社所有の私有タンク車を用いて搬入・出荷されていました。また、1965年（昭和40年）頃には、この鶴見曹達専用線の途中から分岐し、東芝のタービン工場へ向かう専用線も一時的に使用されていましたが、こちらは短期間で廃止されています。鶴見曹達専用線は、当駅の廃止時期近くまで使用されていました。

1971年（昭和46年）には、旭硝子京浜工場への専用線も開通しました。この専用線では、原料となるドロマイトが東武鉄道会沢線の駅から専用の貨車（タキ21000形）で運び込まれていました。

1982年（昭和57年）11月15日、鶴見川口駅は独立した駅としての役目を終え、廃止されました。しかし、前述の通りその後も1986年（昭和61年）11月1日に最終的に貨物扱いが終了するまで、浅野駅の構内扱いでこれら3社の専用線による貨物輸送は続けられました。

年表

1935年（昭和10年）12月1日：鶴見臨港鉄道の駅として開業。
1943年（昭和18年）7月1日：国有化され、鉄道省（後の国鉄）鶴見線の駅となる。同年、東京瓦斯化学工業横浜工場への専用線が開通。この頃、鶴見小野駅付近で折り返す配線に変更。
1956年（昭和31年）頃：鶴見曹達専用線開通。
1965年（昭和40年）頃：東芝のタービン工場への専用線が短期間使用される。
1971年（昭和46年）：旭硝子京浜工場への専用線開通。
1973年（昭和48年）：東京瓦斯によるLNG輸送が開始される。
1975年（昭和50年）：東京瓦斯のベンゼン等輸送が終了。
1982年（昭和57年）11月15日：独立駅として廃止、浅野駅構内扱いとなる。
* 1986年（昭和61年）11月1日：浅野駅構内扱いとしても廃止。専用線による貨物扱いが終了。

現在の駅周辺と跡地

鶴見川口駅があった場所周辺は、現在、東亞合成横浜工場や横浜市環境創造局北部第二水再生センターなどが立地しています。東京瓦斯横浜工場跡地には、東京ガス環境エネルギー館が建設されました。すぐそばには鶴見川が流れています。

駅の跡地については、弁天橋駅付近の線路跡は一部が残っているのに対し、鶴見小野駅付近の折り返し点の跡地は歩道に転用されている箇所があります。

その他

浅野駅と鶴見川口駅を結ぶ貨物支線は、当駅から北へ進み、鶴見小野駅の西隣でスイッチバックを行った後、弁天橋駅の南隣を通り、最終的に浅野駅の西側にあった仕分線（操車場）へ進入するという複雑な線形を持っていました。また、当駅と鶴見小野駅付近の折り返し点との間では、日本鋼管の専用鉄道と二箇所で平面交差していました。

隣の駅（廃止時点）
日本国有鉄道鶴見線貨物支線：浅野駅 - 鶴見川口駅

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