鷲頭氏

鷲頭氏：周防に興った大内氏庶流の一族

鷲頭氏（わしずし）は、多々良氏の流れを汲む大内氏の庶流にあたる氏族です。その歴史は、周防国都濃郡鷲頭庄（現在の山口県下松市切戸川流域）を拠点としたことに始まります。

鷲頭氏の出自

鷲頭氏の祖は、大内盛房の三男である盛保とされています。盛保は鷲頭庄を領地とし、鷲頭氏を名乗りました。居館は現在の旗岡山または鷲頭山の山麓にあったと推定され、白坂山や茶臼山にも城を構えていたと伝えられています。

南北朝時代の動乱

南北朝時代に入ると、鷲頭氏は大内氏宗家との間で激しい対立を繰り広げることになります。盛保の嫡男・親盛が後継者を残さずに亡くなったため、その娘である禅恵尼が養子を迎え、大内弘家の次男である長弘が鷲頭氏を継承しました。長弘は足利尊氏に取り入り、周防守護の地位を得ますが、これが宗家である大内弘幸との対立を招きます。

周防守護を巡る争い

長弘は、大内氏惣領として振る舞い、宗家の弘幸と対立しました。興国2年/暦応4年（1341年）には、長弘方の放火によって大内氏の氏寺である氷上山興隆寺が焼失するという事件も起きています。観応の擾乱が勃発すると、長弘と弘幸は足利直冬の陣営に与しますが、中央の情勢が変化する中で、弘幸とその子・弘世は鷲頭氏討伐を画策します。

正平6年/観応2年（1351年）に長弘が亡くなると、次男・弘直が尊氏に帰順して再び周防守護を継ぎますが、南朝も弘世を周防守護職に任じたため、周防守護職は北朝が任じた鷲頭弘直と南朝が任じた大内弘世が対立する事態となりました。正平9年/文和3年（1354年）には、鷲頭氏はついに大内宗家への従属を余儀なくされました。

室町時代以降の衰退

室町時代に入ると、鷲頭氏は大内氏の家臣として長門国深川に代官として遣わされるようになります。応永17年（1410年）には鷲頭弘忠が大寧寺を創建し、大内持世の信任を得て長門守護代に任じられ、深川城を築きました。しかし、大内教弘が新たな当主となると、弘忠は長門守護代を解任され、文安5年（1448年）に大内教弘によって攻め滅ぼされました。

弘忠は討死し、嫡男・弘貞をはじめ一族郎党も討ち取られ、鷲頭氏は衰退していきました。

鷲頭氏の主要人物

鷲頭盛保：大内盛房の三男。鷲頭氏の祖。
鷲頭親盛：盛保の子。
鷲頭長弘：大内弘家の次男。
鷲頭弘直：長弘の次男。
鷲頭貞弘：長弘の三男。
鷲頭弘忠：弘為の子。長門守護代。
鷲頭弘貞：弘忠の子。弘忠と共に自害。

鷲頭氏の系譜

（※詳細な系譜については、参考文献をご参照ください。）

参考文献

鹿毛敏夫ほか 著、鹿毛敏夫 編『大内と大友 : 中世西日本の二大大名』勉誠出版、2013年。
* 近藤清石『大内氏實録』山口県山口町、1885年。

外部リンク

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