黄河文明

黄河文明：古代中国文明の源流

黄河文明は、黄河の中・下流域で栄えた古代中国の文明です。かつては「世界四大文明」の一つとして知られていましたが、近年では長江文明など他の文明の発見により、その位置づけも変化しつつあります。本記事では、黄河文明の全体像を、新石器時代から青銅器文化へと発展していく過程を追いながら解説します。

黄河文明の黎明：新石器時代の文化

黄河文明の基盤は、新石器時代の多様な文化によって築かれました。それぞれの文化は、独自の生活様式や技術を持っていました。

裴李崗文化（はいりこうぶんか）

紀元前7000年頃から紀元前5000年頃にかけて存在したとされる裴李崗文化は、河南省新鄭県裴李崗が代表的な遺跡です。人々は円形や方形の竪穴建物に住み、アワなどの畑作農業を営んでいました。特徴的なのは、艶出しされた紅褐色の陶器や磨製石器です。

老官台文化（ろうかんだいぶんか）

紀元前6000年頃から紀元前5000年頃にかけて存在したとされる老官台文化は、陝西省華県の老官台遺跡が代表的です。裴李崗文化と同様に、円形の竪穴建物に住み、アワなどの畑作農業を行っていました。暗紅色の夾砂陶が特徴です。

北辛文化（ほくしんぶんか）

紀元前6000年頃から紀元前5000年頃にかけて存在したとされる北辛文化は、山東省滕県官橋鎮北辛村が代表的な遺跡です。黄褐色の陶器が特徴です。

磁山文化（じざんぶんか）

紀元前6000年頃から紀元前5000年頃にかけて存在したとされる磁山文化は、河北省武安県磁山が代表的な遺跡です。円形や楕円形の竪穴建物に住み、アワなどの畑作農業を営んでいました。紅褐色の夾砂陶が特徴です。

仰韶文化（ぎょうしょうぶんか）

紀元前4800年頃から紀元前2500年頃にかけて存在した仰韶文化は、1921年に河南省澠池県仰韶村で発見されました。彩陶と呼ばれる、赤地に彩色された土器が特徴です。

前期には紅陶が主流で、陝西省西安市半坡が代表的な遺跡であり、仰韶半坡類型文化と称されています。母系制社会であり、農村の階層化が見られました。紀元前4000年頃には、ろくろの使用が見られる仰韶廟底溝類型文化が現れました。

後期には、半坡後期類型、西王村類型、大司空類型、秦王塞類型の四つの文化に分かれ、貧富の差が見られるようになり、社会の分業化や階層化が進みました。

後岡文化（こうこうぶんか）

紀元前5000年頃から紀元前4000年頃にかけて存在したとされる後岡文化は、河南省安陽市後岡が代表的な遺跡です。北辛文化を継承して発展しました。

大汶口文化（だいぶんこうぶんか）

紀元前4300年頃から紀元前2400年頃にかけて存在した大汶口文化は、1959年に山東省寧陽県磁窯鎮堡頭村で初めて遺跡が発見されました。後に山東省泰安市大汶口でも遺跡が発見され、こちらが代表的な遺跡となりました。

前期には紅陶が主流でしたが、後期には黒陶や灰陶が主流となりました。後期の卵殻黒陶の高柄杯は、精巧で美しく、山東龍山文化に受け継がれました。

龍山文化（りゅうざんぶんか）

紀元前2500年頃から紀元前2000年頃にかけて存在した龍山文化は、1930年に中国中央研究院歴史語言研究所によって山東省章丘県龍山鎮で発見されました。黒陶や灰陶が特徴です。黒陶は薄手で精巧に作られた黒色の土器で、製作にはろくろが使用されていました。焼成温度は約1000度以上でした。

後期には銅器の鋳造も行われていました。中原龍山文化（陝西龍山文化、晋南豫西龍山文化、河南龍山文化）と山東龍山文化に分かれます。

中原龍山文化は仰韶後期文化を継承し、灰陶が主流でした。骨を焼いてひび割れを見る占卜もこの頃始まったとされています。山東龍山文化は大汶口文化を継承しており、黒陶が主流でした。

二里頭文化（じりとうぶんか）

紀元前2000年頃から紀元前1600年頃にかけて存在した二里頭文化は、1959年に河南省偃師県二里頭で発見されました。

遺跡は約2キロ四方で、中心部には二つの宮殿跡があります。この遺跡の人々は、晋南豫西龍山文化や河南龍山文化を継承し、青銅鋳造の技術を持っていたと考えられています。

黄河文明から中国文明へ

二里頭文化は、後の殷や周といった青銅器文明へと繋がっていきます。黄河文明は、東アジアにおける文明の重要な源流の一つと言えるでしょう。

参考

• - 中国の新石器文化の一覧
• - 中国の青銅器
• - 長江文明
• - 遼河文明

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