1952年の日本競馬

1952年（昭和27年）の日本競馬界

戦後の復興が進む1952年、日本の競馬界は新たな体制の構築や国際的な交流の再開といった、重要な局面を迎えていました。この年は、競馬の民営化を巡る議論が活発化し、関連する法案の策定や組織の設置が進められたほか、長らく途絶えていた海外からの馬の輸入が本格的に再開されたことが特筆されます。当時の馬齢は旧表記で統一されています。

主な出来事

年の初め、関西地方では競馬専門誌に関わる団体が設立され、これを機に騎手や厩務員への専門誌賞が年2回贈られるようになりました。1月下旬から2月にかけては、競馬部によってアメリカから多数の競走馬が輸入され、国内の競走レベル向上への期待が高まりました。3月には自由党の政調役員会で、民営化を柱とする新しい競馬法案の主要点が決定され、競馬運営の大きな転換期が訪れる兆しが見えました。

春には阪神競馬場が拡張工事を終え、厩舎などの施設も増強されました。これは京阪神競馬会社と競馬部との間で賃貸借契約が初めて結ばれるきっかけとなりました。民間でも馬の輸入が再開され、啓衆社の代表がアメリカから繁殖馬などを複数回に分けて導入しました。また、大井競馬の主催者である東京都や特別区競馬組合なども共同で、若齢のサラブレッド牝馬を輸入しています。競馬の公正性を高めるため、5月には競馬公正委員会が設置されました。この委員会はレースの監視や厩舎の監察、問題のある馬主の排除などを行う一方、優秀な人材を表彰する役割も担いました。農林省も戦時中に中断していた外国産馬の輸入を再開し、サラブレッド、ノルマン、ペルシュロン、アングロアラブといった様々な品種の馬を導入しました。民営化実現に向けた動きはさらに進み、農林大臣の諮問機関として競馬制度審議委員会が設けられました。

夏には名古屋競馬株式会社が設立され、翌年の開場を目指して新しい競馬場の建設が進められました。秋には競馬共助会の監事により、ニュージーランドから競走馬を含む多くの馬が輸入されています。10月には天皇、皇后両陛下が国民体育大会の馬術競技をご覧になるため、福島競馬場へ行幸啓されました。年末には、日本競馬会の清算人が国に対し、戦後すぐに締結された資産継承契約の無効を訴える裁判を起こしました。これは国の継承行為が憲法に違反するのではないかという訴えで、「長森裁判」として知られ、提訴が取り下げられるまで2年以上にわたり争われました。

その他の状況として、当時の地方競馬は全国に78カ所の競馬場があり、主催者数も143団体に上っていました。地方競馬の売得金も増加傾向にありました。また、千葉県の柏競馬場がこの年に廃止されています。

主な競走成績

この年のクラシック競走では、桜花賞と優駿牝馬（オークス）をスウヰイスーが制して牝馬二冠を達成しました。牡馬クラシックでは皐月賞と東京優駿競走（日本ダービー）をクリノハナが制し、牡馬二冠馬となりました。天皇賞は春をミツハタが、秋をトラツクオーがそれぞれ優勝。菊花賞はセントオーが勝利を収めました。障害競走では、中山大障害が春はカツシロ、秋はサチヒカリによって勝利されています。

誕生と死去

この年には、後に名馬として名を馳せるカバーラップ二世、メイヂヒカリ、オートキツ、セカイオーなどが誕生しました。また、将来の日本競馬を担う多くの騎手や調教師もこの年に生まれています。競走馬では、繁殖などに貢献したヤシマドオターがこの世を去りました。

1952年は、戦後の混乱から立ち上がり、競馬の運営体制の近代化や国際化への第一歩を踏み出した、日本競馬の歴史における重要な節目となった一年と言えるでしょう。

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