1956年のロードレース世界選手権

1956年FIMロードレース世界選手権：イタリアメーカーの時代到来

1956年のFIMロードレース世界選手権は、第8回大会として、マン島TTレースを皮切りに、全6戦で争われました。フランスとベルギーがカレンダーから外れたものの、全クラスのレースが開催された初めてのシーズンとなりました。ドイツGPは、前年のニュルブルクリンクからソリチュードに戻って開催されました。

このシーズンは、イタリアンメーカーの全クラス制覇という、新たな時代の幕開けを告げるものとなりました。1960年代に日本のメーカーが台頭するまで、この状況は続きます。中でもMVアグスタは、特に125ccと250ccクラスで圧倒的な強さを誇り、そしてこの年、念願の500ccクラスのタイトルも獲得しました。開幕2戦でジレラが欠場したことも追い風となりましたが、MVアグスタの実力は本物でした。特にベルギーGPでは、全クラス優勝という快挙を達成しています。

一方、もう一つのイタリアンメーカーであるモト・グッツィは、350ccクラスで熟成された単気筒マシンを駆り、1953年以来のタイトル防衛に成功しました。500ccクラスには革新的なV8エンジンを搭載したマシンを投入しましたが、信頼性不足により完走が難しい状況が続きました。

イタリア勢以外の注目は、ドイツのBMWです。500ccクラスに燃料噴射装置付きマシンで本格参戦を開始しました。優勝こそ逃しましたが、ワルター・ツェラー選手が度々表彰台に上がり、ランキング2位を獲得するなど、その存在感を示しました。

各クラスの詳細

500ccクラス:

開幕戦マン島では、MVアグスタと契約したジョン・サーティース選手が初優勝を飾ると、その後も3連勝を達成しました。前年チャンピオンのジレラ勢はボイコット騒動の影響で欠場していたため、サーティース選手の快進撃はより際立ちました。第3戦ベルギーで復帰したジレラでしたが、ジェフ・デューク選手がトラブルでリタイヤするなど、苦戦が続きました。第4戦ドイツでは、サーティース選手が350ccクラスで転倒し腕を骨折、シーズン後半戦を欠場することになりました。このレースでレグ・アームストロング選手が勝利し、ジレラが意地を見せましたが、続くアルスターGPで2位につけていたワルター・ツェラー選手がリタイヤしたため、サーティース選手が欠場しながらもチャンピオンに輝きました。

BMWは、ツェラー選手の活躍によりランキング2位を獲得しました。また、アルスターGPではジョン・ハートル選手がノートンで2年ぶりの勝利を挙げました。

350ccクラス:

このクラスでは、モト・グッツィの水平単気筒エンジンのマシンが圧倒的な強さを見せました。ケン・カバナ選手とビル・ロマス選手が序盤を制し、第3戦ベルギーでサーティース選手がMVアグスタ、そして4気筒エンジンで初勝利を挙げましたが、第4戦ドイツでサーティース選手が転倒、重傷を負い、シーズンを棒に振ることになりました。その後、ロマス選手がドイツGPとアルスターGPを連勝し、自身2年連続、モト・グッツィ4年連続のタイトルを獲得しました。

250ccクラス:

MVアグスタは、前年の125ccマシンのボアアップ版ではなく、新型のフルサイズマシンを投入しました。カルロ・ウビアリ選手はこのマシンを駆り、6戦中5勝という圧倒的な強さでチャンピオンに輝きました。ウビアリ選手が唯一勝てなかったアルスターGPでも、MVアグスタのルイジ・タベリ選手が勝利しました。

125ccクラス:

MVアグスタとウビアリ選手のコンビは、125ccクラスでも最強でした。開幕からベルギーGPまで3連勝し、前年から続く連勝記録を8に伸ばしました。ドイツGPでジレラのロモロ・フェリ選手が勝利し、ウビアリ選手の連勝をストップさせましたが、ジレラマシンの信頼性の低さが響き、フェリ選手は2レースしかポイントを獲得できませんでした。最終的にウビアリ選手は、ドイツGP以外全てのレースで勝利し、2年連続3度目のタイトルを獲得しました。アルスターGPでは、60歳のフランク・コープ選手が5位入賞を果たし、ロードレース世界選手権におけるポイント獲得の最年長記録を樹立しました。

最終成績とポイント:

各クラスの上位入賞4戦分のポイントが有効とされました。詳細な順位やポイントは、参考文献を参照してください。

参考文献:

ジュリアン・ライダー / マーティン・レインズ『二輪グランプリ60年史』（2010年、スタジオ・タック・クリエイティブ）
ケビン・キャメロン『THE GRAND PRIX MOTORCYCLE』（2010年、ウィック・ビジュアル・ビューロウ）
* マイケル・スコット『The 500cc World Champion』（2007年、ウィック・ビジュアル・ビューロウ）

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