1965年のテレビ (日本)

1965年のテレビジョン放送

1965年（昭和40年）は、日本のテレビジョン放送が大きく発展し、後の時代につながる重要な基盤が築かれた年でした。この年、放送インフラの整備や番組編成の変化、そしてカラー放送の普及といった多岐にわたる動きが見られました。

最大のトピックの一つは、10月4日にNHK放送センター（東京都渋谷区神南）が全面的な運用を開始したことです。これにより、NHKの制作・放送体制は飛躍的に強化されました。運用開始日には、一般向けの見学コース（現在のNHKスタジオパークの源流）もオープンし、多くの人々がテレビ制作の現場に触れる機会を得ました。

番組編成においては、平日の帯番組が相次いで登場した点が注目されます。NHK総合の『スタジオ102』、日本テレビの『おはよう!こどもショー』、日本テレビ・読売テレビ共同制作の深夜番組『11PM』、フジテレビのワイドショー『小川宏ショー』、そしてNET（現：テレビ朝日）の昼のワイドショー『アフタヌーンショー』など、いずれも日本のテレビ史に名を刻む長寿番組へと成長していきました。特に『アフタヌーンショー』は当初苦戦したものの、司会者の交代や内容の変更を経て人気番組となりましたが、後に不祥事で打ち切りとなる波乱もありました。『11PM』は深夜番組のパイオニアとして、成人向けの内容も含む斬新な企画で話題を呼びました。

カラー放送もこの年、着実に広がりを見せました。フジテレビでは、日本初の連続カラーテレビアニメとして手塚治虫原作の『ジャングル大帝』が放送開始。また、NHKは「大相撲中継」や「全国高等学校野球選手権大会（夏の甲子園）」、そして「国民体育大会」といった主要なスポーツ中継のカラー化を進めました。既存番組でも、『みんなの科学』や『テレビ演芸館』などが一部または全面的にカラー化されました。

CMの分野では、TBSが10月1日に全ての時間帯でテレビ10秒スポットCMを廃止し、さらに19時から21時のゴールデンタイムでは5秒スポットCMも廃止するという規制強化を行いました。これは、5秒スポットCMが中小企業の参入を促す一方で、内容の陳腐化や氾濫を招いたことへの対応でした。

この年始まった多くの番組も、強い印象を残しました。ドラマでは、NHK大河ドラマ第3作『太閤記』が放送開始し、織田信長役の人気から「助命嘆願」が殺到する社会現象を巻き起こしました。TBSの刑事ドラマ『ザ・ガードマン』は宇津井健の代表作となり、共演者の多くをスターダムに押し上げました。エミー賞国際賞を受賞した毎日放送・NET系のテレビ時代劇『源氏物語』も特筆されます。日本テレビ系では、石原慎太郎原作、夏木陽介主演の青春ドラマ『青春とはなんだ』が始まり、その後の人気シリーズの基礎となりました。

アニメーションでは、TBS系で丸美屋食品工業一社提供の『スーパージェッター』が始まり、テレビ局が著作権で収益を得る最初の事例となりました。フジテレビの『宇宙エース』はタツノコプロ制作の第1号作品です。そして、藤子不二雄原作のギャグアニメ『オバケのQ太郎』（第1作）がTBS系で放送開始され、子供たちの間で大ヒットしました。

演芸・バラエティ番組では、日本テレビ系の『金曜夜席』が後の長寿番組『笑点』の源流となり、初代司会者である立川談志が番組の基礎を築きました。視聴者参加型の『踊って歌って大合戦』は初代林家三平の司会で人気を博しましたが、「低俗番組」との批判も受けました。フジテレビ系の音楽番組『ミュージックフェア』では、長門裕之・南田洋子夫妻が長年にわたる司会を務めることになります。子供向け歌合戦番組『日清ちびっこのどじまん』も始まりました。

年末の風物詩である『NHK紅白歌合戦』は第16回がカラー放送で行われ、現存するカラー映像としてはこれが最古のものとなります。対抗するNET系では、演芸特番『笑って笑って大合戦』が始まりました。

視聴率では、『NHK紅白歌合戦』が78.1%を記録して年間最高をマークした他、ボクシング世界タイトルマッチや、社会の関心が高かった吉展ちゃん事件関連のニュースやドキュメンタリー、そして連続テレビ小説や大河ドラマ、プロ野球日本シリーズなどが軒並み高い数字を獲得し、テレビが社会に与える影響力の大きさを改めて示しました。

この他にも、NHKが沖縄テレビ放送との間で番組ネット契約を締結するといった動きもあり、テレビ放送の全国的な広がりも進みました。1965年は、日本のテレビがインフラ、番組、技術の各方面で大きな変革期を迎え、現在のテレビ文化の基礎を築いた重要な一年であったと言えるでしょう。

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