1986年のル・マン24時間レース

1986年のル・マン24時間レース概要

1986年のル・マン24時間レース（24 Heures du Mans 1986）は、54回目の開催となり、フランスのサルト・サーキットで1986年5月31日から6月1日の間に実施されました。例年より早い時期に行われた理由は、フォーミュラ1に参戦するドライバーも参加できるように配慮されたためです。

コースは改修され、ミュルサンヌコーナーの角度が緩くなり、全体的に距離が短縮されましたが、ラップタイムへの影響はほとんどありませんでした。前年のレースでは厳格な燃費規制の影響を受け、ワークスポルシェのパフォーマンスが制約されたため、観客の興味が薄れたことを受けて、1986年はより多くの燃料が使用可能となる方針が取られました。この年は、1984年同様に2550リットルを使用できることが決まりました。

観客数の減少はポルシェの圧倒的な強さによるものでもありましたが、日本におけるル・マン24時間レースの人気は高まっており、日本メーカーも多くの注目を集めていました。この年は特に、日本の報道陣が200人以上集まったことが特徴的でした。また、ポルシェのヨースト・レーシングにタカキュー、クレマーにケンウッドと、日本企業がスポンサーを務める場面も見られ、「ジャポンアタック」として報じられるなど、日本の存在感を示しましたが、実力的には勝利が期待される段階ではありませんでした。なお、この年はランチアは姿を見せませんでした。

C1カテゴリー

ポルシェはエースドライバーのジャッキー・イクスが引退したため、大幅なチーム編成を行いました。エンジンは935/82型を改良し、その排気量を2.86リットルに拡大しました。935/83型の開発も進行中でした。さらに、テスト目的でデュアルクラッチトランスミッションを装備したポルシェ・962PDKも出場しました。この年、初めて参加した高橋国光もクレマーポルシェのメンバーとして名を連ねました。

ジャガーはTWR体制となり、V型12気筒エンジンを搭載した新型のジャガー・XJR-6を出場させて、戦力を強化しました。また、ザウバー・メルセデス・ベンツはC8型を2台エントリーしましたが、信頼性に若干の不安があり、まだ本格的な戦力とはなりませんでした。

ニッサンはワークス体制のニスモで参戦し、シャシーとメンテナンスはマーチが行い、パフォーマンスの向上を目指しました。V型6気筒ターボエンジンはポルシェを脅かす存在とされ、ポルシェ側も「日産の挑戦を歓迎する」と表明しました。

GTXおよびGTPカテゴリー

ポルシェは四輪駆動車のポルシェ・959をベースにしたレース仕様車ポルシェ・961も出場させました。マツダはエンジンを従来の2ローター13B型から3ローターの13G型に変更し、上位入賞を目指す戦略を展開しました。

予選

予選では、ジャガーがマシン調整に重点を置きつつも良好な結果を残しました。ポルシェは予選1位を確保しましたが、前年のタイムには及びませんでした。ニッサンは内部問題に悩まされ、トヨタも満足に走れない状態でした。

決勝

レースは午後4時にスタートし、ヨーストはポルシェワークスとの競争によるペースを上げました。ザウバー・メルセデス・ベンツはトラブルにより早々と戦列を離れ、ジャガーも最初は良好でしたが、各車両が次々にリタイアする中、ポルシェもオイルトラブルや接触事故に見舞われました。

最終的にデレック・ベル、ハンス＝ヨアヒム・スタック、アル・ホルバート組のポルシェ・962Cが優勝を飾りました。ポルシェ陣営は全体でもトップ10台中9台を占める結果となった一方で、多くの車両がリタイアする厳しい状況となりました。

日本車では、ニッサンのみが16位で完走し、これは日本国内で大きな注目を集める結果となりました。マツダはトラブルに見舞われ、全滅となりました。この結果は、1987年に向けた日本メーカーの期待を繋ぐこととなりました。

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