1991年のイギリスツーリングカー選手権

1991年のエッソRACイギリスツーリングカー選手権は、このシリーズの歴史において重要な転換点となるシーズンでした。34シーズン目を迎えたこの年は、それまでのグループA複数クラス混走から、スーパーツーリング時代への完全移行が実現した年だからです。

それまで、フォード・シエラRS500がその圧倒的な強さでグループAを支配していましたが、1990年の移行期間を経て、1991年シーズンはグループA車両の参加は認められつつも、スーパーツーリング車両と同等の性能制限を受けることとなりました。これにより、グループA時代は終わりを告げようとしていたのです。

スーパーツーリングカテゴリーへの移行により、BMWとボクスホールが本格的に参戦を開始しました。特にBMWは、ワークスのプロドライブチームに加え、セミワークスのヴィック・リー・モータースポーツも参戦させるなど、圧倒的なマシン数を誇りました。一方、ボクスホールとトヨタはそれぞれ2台、フォードはロブ・グラヴェット率いるトラックスターチームの1台のみという状況でした。日産はプリメーラで参戦を開始するも、シーズン途中で元F1ドライバーのジュリアン・ベイリーを起用するなど、徐々に戦力を強化していきました。三菱もランサーGTI、そしてギャランでシリーズに復帰しています。

このシーズンにおけるタイトル争いは、ウィル・ホイとジョン・クレランドの2人のドライバーによって展開されました。ホイは序盤で2連勝を飾るなど好調なスタートを切りましたが、シーズンが進むにつれてクレランドが頭角を現し始めました。ホイは安定した走りでポイントを重ね、14ラウンド目のスラクストンではタイトル獲得の可能性を大きく広げましたが、ここで予期せぬ事態が発生します。BMWチームの戦術によりレースの先頭に立ったホイでしたが、ワークスのBMWドライバーであるジョナサン・パーマーとの接触、そしてコースアウトによりリタイアを喫したのです。クレランドはダメージを負ったマシンで8位に入賞し、タイトル争いは最終戦までもつれ込むこととなりました。

そして迎えた最終戦。ホイはクレランドを上回る順位でフィニッシュし、初代スーパーツーリングチャンピオンの栄光を手にしました。トヨタのアンディ・ロウズが3位、ドイツツーリングカー選手権との兼ね合いもあったスティーブ・ソパーが4位という結果となりました。

この1991年シーズンは、イギリスツーリングカー選手権の歴史における重要な転換期であり、スーパーツーリング時代における新たな競争の幕開けを象徴するシーズンでした。BMWとボクスホールの参戦、そしてホイとクレランドの手に汗握るタイトル争いは、多くのファンを魅了し、シリーズの新たな伝説の始まりを告げたのです。 参加チームとドライバー、そして各ラウンドの開催カレンダーと優勝者についても、記録として詳細にまとめられています。しかし、豪雨による中断や、騒音規定違反によるペナルティなど、様々な出来事がこのシーズンのドラマ性を高めていたことも忘れてはならないでしょう。 ドライバーズチャンピオンシップ、マニファクチャラーズチャンピオンシップの結果も、この激動のシーズンを象徴する重要なデータとなっています。 ホイの勝利は、単なる優勝以上の意味を持ち、スーパーツーリング時代の幕開けを告げる、歴史的な瞬間だったと言えるでしょう。

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