1993年のテレビ (日本)

1993年の日本のテレビ

1993年（平成5年）は、日本のテレビ放送史において、スポーツイベントの開幕、広範な番組改編、そして多くの話題を提供した一年でした。特に、プロサッカーリーグ「Jリーグ」の開幕は、テレビ界に新たな波をもたらし、関連番組が多く制作・放送されました。また、各局でニュース・情報番組を中心に大規模な改編が行われ、視聴者を取り巻くテレビ環境が大きく変化しました。

激動の報道・情報番組

この年は、報道や情報番組において大きな出来事が続きました。年明け早々には、1月6日に皇太子妃に小和田雅子氏が内定したとの緊急ニュースが入り、テレビ各局は放送中の番組を急遽打ち切って報道特別番組に切り替えました。7月には第40回衆議院議員総選挙が行われ、夜には各局で選挙特番が組まれました。続く8月には非自民・非共産の連立による細川護熙内閣が発足し、その記者会見が生中継されるなど、政治の動きが迅速に伝えられました。

一方、テレビ報道の信頼性を揺るがす事態も発生しました。2月にはNHKスペシャルのやらせ疑惑が報じられ、NHKは訂正放送と謝罪を行いました。3月には郵政省から厳重注意の行政指導を受ける事態に発展しました。さらに、9月には当時のテレビ朝日報道局長による選挙報道に関する発言が問題視され、「椿事件」として放送メディアに大きな波紋を呼び、証人喚問も行われました。

個人的な出来事としては、フリーアナウンサーとして絶大な人気を誇っていた逸見政孝氏の動向が注目を集めました。9月6日、逸見氏は自ら癌であることを記者会見で告白。この会見は各局で生中継され、国民に大きな衝撃を与えました。病気療養に入った逸見氏の出演番組は代役を立てて継続されましたが、惜しくも12月25日に逝去。テレビ界は偉大な才能を失い、フジテレビや日本テレビでは追悼特別番組が放送されました。

ドラマのヒットと新たな展開

1993年は多くの話題作が放送されました。冬クールにTBS系「金曜ドラマ」枠で始まった『高校教師』は、野島伸司氏の脚本によるセンセーショナルな内容が社会現象となり、高い視聴率を記録しました。フジテレビ系「月9」枠では、春クールに放送された『ひとつ屋根の下』が江口洋介氏、福山雅治氏らを擁して大ヒットし、「月9」枠歴代最高視聴率（当時）をマークしました。秋クールには『あすなろ白書』も若者を中心に人気を集めました。NHK大河ドラマは『琉球の風』と『炎立つ』の2作が放送されました。特に『琉球の風』は大河史上初の沖縄舞台、半年間の短期放送という異例の試みでした。

ドラマ枠の変革としては、長年単発ドラマ枠として親しまれてきたTBS系『東芝日曜劇場』が、37年の歴史に幕を閉じ、4月から連続ドラマ枠として再出発しました。第1作は山田太一氏脚本の『丘の上の向日葵』でした。また、年末には日本テレビ系で1985年から続いた『年末時代劇スペシャル』が『鶴姫伝奇 -興亡瀬戸内水軍-』をもって終了するなど、長寿ドラマシリーズが幕を閉じる動きも見られました。

バラエティ、音楽、子供番組の新旧交代

人気バラエティ番組ではレギュラーの交代や枠移動がありました。フジテレビ系『森田一義アワー 笑っていいとも!』では、春の改編でダウンタウンや片岡鶴太郎氏が降板し、秋には新たなレギュラーが加入しました。TBS系土曜19時30分枠の『クイズダービー』後番組として『クイズテレビずき!』が始まりましたが、この枠は長年続いたロート製薬一社提供の最終番組となりました。フジテレビ系『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』は、スタジオ事故によりゲスト出演者が死亡するという悲劇が起き、番組は打ち切りとなりました。

新番組では、TBS系深夜枠で音楽ランキング番組『COUNT DOWN TV|COUNT_DOWN_TV』がスタートし、その後長寿番組となりました。NHK総合では若者向け音楽番組『ポップジャム』、子供向けアニメ『忍たま乱太郎』が放送開始。『忍たま乱太郎』は後にEテレへ移り、現在も続く人気シリーズとなります。NHK教育（現Eテレ）では『天才てれびくん』が始まり、こちらも様々な改題を経て現在まで続く人気番組となりました。フジテレビ系では料理エンターテイメント番組『料理の鉄人』がスタートし、鹿賀丈史氏の主宰ぶりや個性的な料理人たちが人気を集めました。日本テレビ系では読売テレビ制作のトークバラエティ『ダウンタウンDX』が始まり、現在も放送されています。

長寿番組の終了も目立ちました。テレビ朝日系では平日朝の顔だった『モーニングショー』が29年の歴史に一旦幕を下ろし、『スーパーモーニング』へ継承されました。また、『アフタヌーンショー』から続いた正午枠のワイドショー（他系列への時差ネット含む）も終了しました。フジテレビ系の『キンカン素人民謡名人戦』が32年の歴史に、テレビ朝日系の『100万円クイズハンター』が12年の歴史に幕を下ろしました。TBS系の『水曜ロードショー』もこの年で終了し、同局のゴールデンタイム映画枠が一時撤退しました。石ノ森章太郎氏原作の東映不思議コメディーシリーズも『有言実行三姉妹シュシュトリアン』をもって12年の歴史に終止符が打たれました。

業界構造の変化と周年

テレビ業界全体の動きとしては、ネットチェンジがありました。山形テレビ（YTS）はフジテレビ系からテレビ朝日系へとネットを切り替え、山形放送（YBC）がNNN/NNSフルネット局となりました。また、山口朝日放送（YAB）と大分朝日放送（OAB）が開局し、これによりテレビ朝日系のフルネット局が21局となりました。福岡地区では、NHK福岡、RKB毎日放送、九州朝日放送、テレビ西日本の親局が福岡タワーに集約されるというインフラ面の変化もありました。

この年は多くの局や番組が周年を迎えました。日本テレビは開局40周年、読売テレビ、テレビ西日本、関西テレビ、東海テレビなどは開局35周年を迎えました。NHK紅白歌合戦や大河ドラマは放送開始40周年を迎え、フジテレビの『ひらけ!ポンキッキ』は放送20周年を機に『ポンキッキーズ』に改題・リニューアルされました。

視聴率と特番

視聴率面では、フジテレビが年間視聴率12年連続三冠王を達成し、日本テレビが全日帯で視聴率トップとなりました（これは2003年まで続きます）。年間最高視聴率は、テレビ東京が中継したワールドカップサッカーアジア地区最終予選「日本×イラク」、いわゆる「ドーハの悲劇」が記録的な48.1%をマークしました。年末の『NHK紅白歌合戦』も2部で50.1%と高い数字を記録しました。

特別番組も数多く放送されました。年末にはTBS系で大型報道特番『関口宏の報道30時間テレビ』が初めて放送されました。12月31日には日本レコード大賞が日本武道館で開催され、香西かおり氏が「無言坂」で大賞を受賞しました。

1993年は、Jリーグ開幕というスポーツ界の大きな動きに連動した番組展開、各局の積極的な改編、そして社会的な話題を提供したドラマや報道、一方で長年親しまれた番組の終了や悲しい出来事もあった、日本のテレビにとって記憶に残る一年でした。

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