1996年の鉄道

1996年、鉄道は新たな時代へ

1996年（平成8年）は、国内外の鉄道において様々な変化が見られた一年でした。新線開業や既存路線の延伸・電化が進み、ネットワークが拡大した一方で、多くの車両がその役目を終え、世代交代が加速しました。また、ダイヤ改正による運行体系の見直しや、残念ながら事故も発生しています。この年は、未来に向けた投資と過去からの転換が同時に進行した、日本の、そしてアジアの鉄道史における重要な節目のひとつと言えるでしょう。

広がる路線ネットワーク

年明けの1月には、韓国で大韓民国鉄道庁の一山線（大化～紙杻間19.2km）が新たに営業を開始し、沿線に多くの新駅が誕生しました。3月には、首都圏のJR埼京線が恵比寿駅まで延伸し、都心アクセスが向上。また、八高線の八王子～高麗川間や、西日本の山陰本線園部～福知山間、北近畿タンゴ鉄道の宮津・宮福線の一部区間が直流1500Vで電化され、利便性が向上しました。同月には台湾でも台北大衆捷運公司（台北捷運）の木柵線が開業するなど、海外の都市鉄道でも発展が見られました。さらに、東京臨海高速鉄道の臨海副都心線（新木場～東京テレポート間4.9km）や東葉高速鉄道の東葉高速線（西船橋～東葉勝田台間16.2km）が開業し、新たな地域へのアクセスが開かれました。

その後も、4月には立山黒部貫光の無軌条電車線（室堂～大観峰間）がトロリーバスとして開業、7月にはJR九州の宮崎空港線（田吉～宮崎空港間1.4km）が開業し、空港アクセスを担うようになりました。ソウル地下鉄5号線は段階的に延伸を重ね、8月には汝矣島まで、12月には往十里まで路線を延ばしました。また、10月には7号線、11月には8号線が開業し、ソウルの都市鉄道ネットワークが大幅に拡充されています。12月には大阪市交通局の鶴見緑地線が長堀鶴見緑地線と改称され、心斎橋駅まで延伸しました。

既存路線の変化としては、JR札沼線の一部区間や西武鉄道多摩川線などでワンマン運転が開始され、合理化が進みました。北陸鉄道浅野川線は電圧が600Vから1500Vに昇圧され、ワンマン運転も導入されています。

ダイヤと列車の動き

3月のダイヤ改正では、JR東海で急行「東海」が特急に格上げされ、東京～大垣間の夜行快速「ムーンライトながら」の運転が始まりました。JR西日本では、特急「タンゴディスカバリー」などが運転を開始し、北近畿方面へのアクセスを強化しました。3月末には秋田新幹線建設に伴う田沢湖線の改軌工事のため、特急「たざわ」が短縮され、代替として暫定特急「秋田リレー号」が運転を開始しています。静岡鉄道では静岡清水線の急行が廃止され、東京急行電鉄では新玉川線・田園都市線から快速が姿を消しました。

災害からの復旧と事故の発生

前年の阪神・淡路大震災で被災した神戸高速鉄道大開駅は、1月17日に営業を再開し、復旧が進みました。しかし、残念ながら事故も発生しています。4月にはJR只見線で、6月にはJR高山本線で特急列車が落石に突入し脱線する事故が起きました。12月にはJR函館本線で貨物列車が脱線する事故が発生しています。

新旧交代する車両たち

この年は、多くの新型車両が登場しました。JR北海道の731系、JR西日本の283系「オーシャンアロー」、JR四国の6000系など、各社が新しいタイプの電車を投入。JR貨物からは新世代電気機関車EF210形が登場しました。私鉄でも京王1000系、小田急30000形「EXE」、近鉄16400系など、多くの新形式が営業運転を開始しています。海外では、韓国の鉄道庁やソウル都市鉄道、台湾の台北捷運でも新型車両が導入されました。

その一方で、多くの旧型車両が引退しました。JR八高線や鶴見線で活躍した旧型気動車や電車、JR西日本の高速試験車両「WIN350」などが姿を消しています。地方私鉄でも、北陸鉄道浅野川線の昇圧に伴い多くの旧型車両が廃車となったほか、京王電鉄5000系初代や西武鉄道5000系、E851形電気機関車など、各社で長年親しまれてきた車両が引退しました。また、営団地下鉄や京王電鉄、京成電鉄などから地方私鉄への車両譲渡も行われています。

受賞車両

1996年には、鉄道友の会によるブルーリボン賞にJR九州の883系電車「ソニック」が、ローレル賞にはJR東海383系電車「しなの」とJR貨物コキ71形貨車が選ばれました。特に883系はブルネル賞も受賞し、そのデザインと性能が高く評価されました。その他、複数の車両がグッドデザイン商品に選定されています。

1996年は、国内外で鉄道網が拡大し、新型車両が登場するなど明るい話題が多い一方で、過去の車両が引退し、事故や災害からの復旧が進むなど、鉄道の歴史が着実に積み重ねられた一年でした。

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