2020 SW

2020 SWは、2020年9月に地球のごく近くを通過した、アテン群に属する小さな地球近傍小惑星です。その発見は地球への最接近のわずか6日前であり、この接近がもたらした軌道の変化や、小惑星自体の物理的な特徴に関する貴重な情報が得られました。

発見

2020 SWは、2020年 9月18日に、アリゾナ州ツーソン近郊にあるレモン山天文台で行われているレモン山サーベイによって発見されました。具体的には、天文学者カクペル・W・ヴィエルツホス氏によって見出されました。発見された当時、この小惑星はペガスス座の方向に位置しており、見かけの等級は21.4でした。地球からの距離は約300万キロメートル（0.02天文単位）で、天球上を毎分1.41秒角という速度で移動しているのが観測されました。

この発見の後、小惑星は小惑星センターの地球近傍天体確認ページ（NEOCP）に「C378AD2」として一時的にリストアップされました。パンスターズやカタリナ・スカイサーベイを含む世界各地の複数の観測施設からの追跡観測が行われ、その存在が確認されました。発見から1日後の2020年 9月19日には、「2020 SW」として正式に公表されました。

地球への接近と軌道変化

2020 SWは、発見から間もない2020年 9月24日11時13分（協定世界時）に地球へ最接近しました。その際の地球表面からの距離はわずか21,600キロメートル（約13,400マイル）以内であり、これは多くの静止衛星が周回する高度（約36,000キロメートル）よりもはるかに内側でした。この極めて近い接近通過により、小惑星は地球の強い重力の影響（摂動）を大きく受けました。

この接近による摂動の結果、2020 SWの軌道は劇的に変化しました。接近前は、太陽から1天文単位よりもわずかに遠い位置を公転するアポロ群に分類される軌道でした。軌道長半径は約1.015天文単位、公転周期は約1.02年でした。しかし、地球接近後、軌道長半径は約0.941天文単位となり、太陽から1天文単位よりも近い位置を公転するアテン群に分類される軌道へと移行しました。現在の公転周期は約0.91年です。現在の軌道では、近日点距離が0.743天文単位、遠日点距離が1.140天文単位であり、金星軌道と地球軌道の両方を横断しています。これにより、これらの惑星との接近が起こり得ます。金星と地球に対する最小軌道交差距離（MOID）は、それぞれ約362万キロメートル（0.02421 au）と約6.3万キロメートル（0.00042 au）です。

この軌道変化により、2020 SWは今後200年間にわたり、地球から150万キロメートル（0.01天文単位）より近くに接近することはなくなると予測されています。

物理的特性

2020 SWの物理的なサイズは非常に小さいと考えられています。絶対等級29.06に基づき、典型的な小惑星のアルベド（反射率）を仮定すると、直径はおよそ4メートルから9メートル程度と推定されています。このサイズは、小型のスクールバスと同程度です。

これほど小さなサイズであるため、仮に地球の大気圏に突入したとしても、そのほとんどは突入時の摩擦熱によって燃え尽き、明るい火球として観測されるでしょう。地上に到達する破片があったとしても、それはごく一部であり、広範囲に飛散する可能性がありますが、地球に壊滅的な影響を与えるような大きさではありません。

地球への接近通過は、2020 SWの形状や自転について詳細な観測を行う絶好の機会となりました。特に、最接近の約10時間前から行われた光度曲線の継続的な観測により、小惑星の明るさの変化が精密に測定されました。このデータ解析の結果、2020 SWは細長い形状をしており、そのアスペクト比（最も長い軸と短い軸の比率）は約1.6であることが示唆されています。また、約28.5秒という非常に速い周期で自転していることも明らかになりました。これは、このサイズの天体としては比較的速い自転速度です。

2020 SWに関する観測データは、小さな地球近傍天体の発見、軌道力学、そして物理的性質について理解を深める貴重な事例となりました。この小惑星の事例は、将来的に潜在的な脅威となりうる天体を早期に発見し、その特徴を把握することの重要性を示しています。

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