2020年の航空

2020年（令和2年）の航空界は、歴史的な激動の年となりました。年明けには複数の航空事故が発生し、安全への懸念が浮上。新型旅客機ボーイング777Xやエアバスの大型貨物機ベルーガXLなど、注目を集める航空機の初飛行が行われ、技術革新の進展が期待されました。しかし、春先からの新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行は、航空業界に未曾有の打撃を与え、多くの航空会社が経営危機に陥り、事業の継続が困難となる事態が相次ぎました。

年初からコロナ禍以前の動き

年の初めには、台湾軍のヘリコプター墜落事故（1月2日）や、イランでのウクライナ国際航空機墜落事故（1月8日）、ロサンゼルスでのデルタ航空機の燃料投棄による事故（1月14日）など、複数の航空事故が報告されました。また、ロサンゼルス郊外では、元NBA選手のコービー・ブライアント氏らを乗せたヘリコプターが墜落するという悲劇（1月26日）も発生しました。

一方で、新しい動きもありました。エアバスの新型貨物機ベルーガXLが就航を開始（1月9日）し、大型構造物の輸送能力が向上しました。イタリアのレオナルド社はUAV「Falco Xplorer」の初飛行（1月15日）に成功。アメリカでは、ボーイング社の次世代大型旅客機777Xが待望の初飛行（1月25日）を遂げました。レオナルド社は、ヘリコプター開発企業であるスイスのコプター社を買収（1月28日）し、事業強化を図りました。

2月に入ると、トルコでのペガサス航空機の着陸失敗・炎上事故（2月5日）が発生。大西洋路線では、大型低気圧の影響でブリティッシュエアウェイズ機がニューヨーク・ロンドン間の最短飛行記録（2月9日）を樹立しました。経営関連では、エア・イタリーが清算手続き（2月11日）に入り、カナダのボンバルディアはA220事業から撤退（2月13日）し、エアバスに株式を売却することを発表しました。新しい航空機としては、ガルフストリーム G650が初飛行（2月14日）を行い、オーストラリアではBAEシステムズの無人機PHASA-35も初飛行に成功（2月17日）しました。スペイン空軍の曲技飛行隊の練習機墜落事故（2月27日）も発生しました。

3月には、イギリスの格安航空会社（LCC）であるFlybeが経営破綻（3月5日）し、運航を停止しました。フィリピンのニノイ・アキノ国際空港では小型機が離陸直後に墜落（3月29日）する事故が発生。また、日本の羽田空港では、混雑緩和などを目的とした新ルートの運用が開始されました（3月29日）。

新型コロナウイルスの壊滅的な影響

4月以降、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化し、世界中の航空会社の経営を直撃しました。オーストラリアのヴァージン・オーストラリアが経営破綻（4月21日）を発表。計画されていたボーイング社によるブラジルのエンブラエル社商用機部門の買収合意は白紙撤回（4月25日）されました。

5月には、コロンビアのアビアンカ航空の親会社であるアビアンカ・ホールディングス（5月10日）、タイ国際航空（5月19日）、LATAM航空グループ（5月26日）、メキシコのアエロメヒコ航空（6月30日）など、南米やアジアの主要航空会社が相次いで連邦破産法や会社更生手続きの適用を申請する事態となりました。パキスタンのカラチでは、パキスタン国際航空の旅客機が墜落し、多くの犠牲者が出る事故（5月22日）も発生しました。軍用機では、米空軍のF-22（5月15日）やカナダ軍の曲技飛行隊スノーバーズの機体（5月17日）、米空軍のF15C（6月15日）やF16（6月30日）、インドネシア軍のヘリコプター（6月6日）の墜落事故が発生しました。一方で、アメリカではセスナ408スカイクーリエ（5月17日）、台湾では高等練習機勇鷹（6月10日）がそれぞれ初飛行を行いました。

航空需要の激減に対し、各国政府や企業は対応を迫られました。香港政府はキャセイパシフィック航空への大規模な資本増強（6月9日）を決定。運休が続いていた中部国際空港では一部国際線の運航が再開（6月17日）されました。タイのノックスクートは事業終了と会社清算を決定（6月26日）。日本の航空自衛隊ブルーインパルスは、医療従事者への感謝と敬意を示すため、東京上空で展示飛行（5月29日）を実施し、話題となりました。

年後半の動き

7月には、エアバス・ヘリコプターズのH160がEASAの型式証明を取得（7月1日）しました。8月には、インドのカリカット国際空港でエア・インディア・エクスプレスの旅客機が着陸に失敗し、多数の死傷者を出す事故（8月7日）が発生しました。

10月には、旭川空港が民営化（10月1日）され、運営が北海道エアポートに移管されました。国内の航空会社では、エアアジア・ジャパンが全路線の廃止届を提出（10月5日）し、事業からの撤退を決定。その後、東京地裁に破産手続き開始を申請（11月17日）しました。

2020年は、新型コロナウイルスという予期せぬパンデミックにより、世界の航空業界が存亡の危機に瀕した一年でした。多くの航空会社が経営の立て直しを迫られ、路線の再編や運航体制の見直しが進みました。一方で、新型航空機の開発や空港インフラの整備など、未来を見据えた動きも並行して行われ、困難な状況下でも航空業界の進化に向けた努力が続けられたことが示されています。

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