5フィート軌間

5フィート軌間（ロシア軌間）とは

5フィート軌間は、その名の通り軌間が5フィート（1524mm）である広軌の一種です。この軌間は、後にロシア帝国とその周辺諸国で鉄道の標準として採用されたため、ロシア軌間とも呼ばれています。その後、ソビエト連邦によって1520mmに再定義されました。

主な使用地域

5フィート軌間（または1520mm軌間）が使用されている主な地域は、旧ソビエト連邦（ロシア、バルト三国、ジョージア、ウクライナなど）、モンゴル、そしてフィンランドです。これらの地域には、約225,000kmに及ぶ鉄道路線が運行されています。ロシア軌間の鉄道は、標準軌に次いで世界で2番目に広く使用されています。

歴史

イギリス

1748年、イギリスでは軌間5フィートの鉄道が敷設されました。これは、炭鉱で産出した石炭を運搬するためのものでした。1839年には、イースタン・カウンティ鉄道が、翌1840年にはノース・アンド・イースト鉄道が同じ軌間で建設されましたが、両鉄道とも1844年には標準軌（1435mm）に改軌されました。1903年にはケーブルカーのイーストヒルクリフト鉄道が開通しましたが、これも5フィート軌間でした。

アメリカ合衆国

アメリカでは、1827年にサウスカロライナ運河鉄道会社の技師ホレイショ・アレンが5フィート軌間での鉄道敷設を始め、南部を中心に鉄道網が整備されました。一方、北部ではペンシルバニア鉄道やニューヨーク・セントラル鉄道などが標準軌で建設され、南北戦争時には兵員や物資の輸送に支障をきたしました。南北戦争後の1886年までに、アメリカ国内にあった約1500kmの5フィート軌間の線路はほぼ全線が標準軌に改軌されました。

ロシア帝国

ロシア初の鉄道は、1837年にツァールスコエ・セローとパヴロフスクを結ぶ実験路線として、軌間6フィート（約1829mm）で建設されました。この軌間の選択は、7フィート1/4インチ（2140mm）を採用したブルネルのグレート・ウェスタン鉄道の影響を受けたものでした。この鉄道は実用性は高くありませんでしたが、ブルネル軌間の採用の可能性を示しました。一方、ロシア帝国の支配下にあったポーランドでは、ワルシャワ-ウィーン鉄道が標準軌で1845年に開通しました。

ロシアの最初の主要路線であるモスクワ・サンクトペテルブルク鉄道の建設では、アメリカの鉄道技師ジョージ・ワシントン・ウィスラーがコンサルタントとして招聘されました。ウィスラーは、6フィート軌間よりも安価で、標準軌よりも利点があるとして、5フィート軌間の採用を推奨しました。また、西ヨーロッパの鉄道に接続されることはないため、軌間の不連続を心配する必要はないと主張しました。最終的に、ウィスラーの報告書に基づき、運輸建築局の主任が5フィート軌間を採用し、1843年にニコライ1世によって承認されました。その後、建設された路線もこの軌間で敷設され、1860年にはロシアのすべての主要鉄道が5フィート軌間で建設されることが政令で定められました。

軍事的な理由ではない軌間選択

ロシア帝国が標準軌よりも広い軌間を選択した理由は、軍事的なものではなく、潜在的な侵略者がロシアの鉄道を利用するのを防ぐためではないかと誤解されることがあります。しかし、1841年のロシア軍技師の書類には、撤退時には鉄道が利用できなくなる可能性があるため、そのような危険はないと記されています。ワルシャワ-ウィーン鉄道が標準軌で建設されたのは、ポーランドの輸送をプロイセンに依存しないようにするためでした。モスクワ・サンクトペテルブルク鉄道では、標準軌は選択肢になく、1524mmまたは1829mmの間で選択が行われました。歴史的に見ても、侵入を避けるためにわずかに異なる軌間を採用する方法は効果がないことが証明されており、第二次世界大戦中にはドイツ軍がソ連の鉄道を容易に利用しました。

拡張

5フィート軌間は、ロシア帝国全土の標準となり、その後のソビエト連邦にも継承されました。旧ソビエト連邦の国々だけでなく、周辺国のフィンランドとモンゴルもこの軌間を採用しています。

ロシアの鉄道技師は、19世紀後半に中国東北部に建設された東清鉄道も、シベリア鉄道からのルート短縮のために5フィート軌間で敷設しました。しかし、日露戦争後、旅順までの支線は日本によって改軌されました。その後、東清鉄道の残りの部分も標準軌に変換されました。

ソ連が樺太を実効支配下に置いた際、日本が敷設した鉄道システムはそのまま使用されました。サハリン南部は、日本の鉄道省路線と同じ1067mm軌間のままで、ソ連が敷設したロシア軌間の路線と共存していました。その後、2019年に1520mm軌間への改軌が完了しました。

パナマ

パナマ地峡鉄道は、1850年に5フィート軌間の鉄道として敷設されました。パナマ運河の建設中には、運河建設を担い、船舶を牽引する電気機関車の線路も同じ軌間が選択されました。この軌間の選択は、アメリカ南部の鉄道会社の影響を受けました。2000年、パナマ地峡鉄道は標準軌に改軌されましたが、運河の水門に沿って船舶を牽引する電気機関車は、現在も1524mm軌間の線路を使用しています。

フィンランド

フィンランド初の鉄道は1862年に開通しました。当時、フィンランドはロシア帝国の一部であったため、ロシアと同じ5フィート軌間で建設されました。フィンランドとロシアの間には、現在、アレグロと呼ばれる旅客サービスがあり、ペンドリーノ列車がヘルシンキとサンクトペテルブルク間を運行しています。貨物輸送については、4つの国境検問所があります。

技術的側面

軌間の再調整

1960年代後半、ソビエト連邦は、線路の軌間を1520mmに再定義し、同時に公差を厳格化しました。車両の走行装置は変更されなかったため、速度と安定性が向上しました。この改定は1970年から1990年代初頭にかけて行われました。

フィンランドでは、公差は同様の方法で調整されたものの、フィンランド国鉄はもともとの定義である1524mmを維持しました。エストニアでは、旧ソビエト連邦から独立後、軌間をフィンランドに合わせて1524mmに戻しました。

これらの規格変更は、既存の線路に対しての変更ではなく、新規および改修された線路に適用されます。

公差

フィンランドでは、1級路線では軌間を1520〜1529mmの範囲に収めています。鉄道車両の車両限界が一定の制限内に保たれている場合、ロシアとフィンランドとの乗り入れが可能です。

ヘルシンキからサンクトペテルブルクまでのカレリアントレインズSm6電車は、軌間1522mmとして指定されています。ロシアとフィンランドの間で採用された策は正しく機能していますが、高速列車では軌間の不一致に関する許容度が低いという問題があります。

同様の例として、バルセロナ地下鉄の1号線も、歴史的な理由からスペインの古い軌間（1674mm）で建設され、長年、従来のスペイン路線と接続していましたが、現在はその接続は取り外されています。

車両限界

車両限界は、1520mm軌間の方が大きいため、標準軌の鉄道を混合軌線に適合させる必要がある場合、橋の架け替えや線路間の間隔の拡大などが必要になります。また、車両に制限を設ける必要があり、鉄道の運行条件や収益性を制限する可能性があります。

現状

鉄道網

1520mm軌間のいくつかの短い区間は、ポーランド、スロバキア東部、スウェーデン、アフガニスタン北部に広がっています。ハンガリー国内には約150kmの1520mm軌間の線路があり、ウクライナ国境近くのザホニー物流エリアまで達します。また、北朝鮮では豆満江駅と羅津駅間の32kmで、標準軌と1520mm軌間の混合軌間に改修されました。

ポーランド国鉄65号線は、ウクライナ国境からシレジア地方の東端まで延びる、最も西に位置する1520mm軌間の線路です。

ライトレールと路面電車

1520mm軌間は、ライトレールや路面電車では非常にまれですが、旧ソ連の路面電車網のほとんどはこの軌間を使用しています。初期には狭軌だったものが、1520mmに改軌された例も多くあります。ロシアでは、ほとんどの路面電車網が1520mm軌間ですが、一部の例外もあります。

近似の軌間

1676mm、1668mm、1600mm、1435mmといった軌間は、幅が非常に近似しているため、1520mm軌間との三線軌条を設置することは困難です。そのため、四線軌条で敷設して、他の軌間の列車の通行を可能にした例があります。

導入例

1524mm（5フィート）

イギリス
アメリカ南部
パナマ
フィンランド

1520mm（4フィート11+27/32インチ）

旧ソビエト連邦
モンゴル

参考文献

(省略)

注記

(省略)

外部リンク

Asociación Estratégica 1520
Railway gauge width : 1 519 / 1 520 / 1 524 / 1 525

もう一度検索