59番街橋の歌 (フィーリン・グルーヴィー)

サイモン&ガーファンクルが1966年に発表した楽曲「59番街橋の歌 (フィーリン・グルーヴィー)」は、彼らのキャリアを代表する作品の一つとして、今なお世界中のリスナーに親しまれています。原題は「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」。そのタイトルの通り、聴く者に心地よい、満ち足りた気分（フィーリン・グルーヴィー）をもたらすような、穏やかで軽快なサウンドが特徴です。

この楽曲は、1966年 10月10日にリリースされた彼らの通算3作目のスタジオアルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に収められました。アルバム発表後、その人気から翌年の1967年 2月27日には、シングル「動物園にて（At the Zoo）」のカップリング曲、つまりB面としてシングルカットされ、さらに広い層にその存在を知られることとなりました。

楽曲のタイトルにある「59番街橋」とは、実際にはニューヨーク市のマンハッタンとクイーンズ地区を結ぶクイーンズボロ橋の通称です。イースト川に架かるこの橋は、ニューヨークの景観を構成する重要な要素の一つであり、歌詞ではこの橋の上やその周辺の日常的な風景が、温かく、そして少し哲学的な視点から描かれているかのようです。

この楽曲のレコーディングには、ジャズ界で非常に著名なミュージシャンが参加しています。伝説的なジャズピアニスト、デイヴ・ブルーベックが率いたカルテットのメンバーであるユージン・ライトがダブル・ベースを演奏し、同じくデイヴ・ブルーベック・カルテットのジョー・モレロがドラムスを担当しました。彼らの洗練された演奏が、サイモン&ガーファンクルによるフォーク・ロックの基盤に、ジャズ特有のグルーヴ感と深みをもたらし、楽曲に独自の彩りを加えています。

「59番街橋の歌」は、サイモン&ガーファンクルのライブパフォーマンスにおいても重要なレパートリーでした。彼らのキャリアにおける歴史的なコンサートでたびたび演奏され、その感動的な瞬間は複数のライブレコーディング作品に記録されています。

1967年1月22日にニューヨークのフィルハーモニック・ホールで行われたライブの模様は、『ライヴ・フロム・ニューヨーク・シティ 1967』に収録されています。
同じく1967年、世界中の音楽ファンが注目したモントレー・ポップ・フェスティバル（6月16日開催）での演奏は、イベントを記録したドキュメンタリー映画『Monterey Pop』の中で観ることができます。
1969年11月8日、イリノイ州カーボンデールでのライブでのパフォーマンスは、アルバム『ライヴ1969』に収められています。
解散後に行われた1970年のニューヨーク・カーネギー・ホールでのライブからの音源は、1972年に発売されたベスト盤『Simon and Garfunkel's Greatest Hits』に収録され、多くのリスナーに届けられました。
そして、歴史に残る1981年9月19日のニューヨーク・セントラル・パークでのフリー・コンサートでの演奏は、大ヒットしたライブアルバム『The Concert in Central Park』に収録され、その感動が再び蘇りました。

この楽曲は、そのキャッチーなメロディとポジティブな雰囲気が多くのアーティストを魅了し、発表以来、様々なジャンルや国境を越えて数えきれないほどのカバーバージョンが生み出されています。特に初期の代表的なカバーとしては、ハーパース・ビザールによるものが有名です。彼らは1967年にこの曲をシングルとしてリリースし、全米チャートで最高位13位を記録するヒットとなりました。彼らのバージョンは、オリジナルの持つソフト・ロックやポップの要素をさらに強めたアレンジが特徴です。

また、ブルースやロックの分野で活躍したマイク・ブルームフィールドとアル・クーパーは、二つのライブアルバムでこの曲を取り上げています。特にアルバム『フィルモアの奇蹟』（1968年録音）に収録されたバージョンでは、原作者の一人であるポール・サイモンが特別にコーラスをオーバーダビングするという、ファンには嬉しい参加を果たしています。もう一つの『フィルモア・イーストの奇蹟』（1968年録音）にも異なるテイクが収録されています。

その他にも、国内外の幅広いアーティストによってカバーされています。以下にその一部を挙げます。

ザ・シーカーズ (1967年)
ザ・フリー・デザイン (1967年)
フォー・フレッシュメン (1968年)
ナナ・ムスクーリ (1969年)
ザ・ゴールデン・カップス (1969年)
ベッツィ&クリス (1970年)
ジョニー・ハートマン (1973年)
ピチカート・ファイヴ (1985年)
アート・ガーファンクル (1996年) - セルフカバー
リズ・キャラウェイ (2001年)
レイチェル・マクファーレン (2012年)

「59番街橋の歌 (フィーリン・グルーヴィー)」は、ニューヨークの情景と日常のささやかな幸福感を結びつけた普遍的なテーマ、そして誰にでも口ずさめる親しみやすいメロディラインによって、世代を超えて愛され続けるスタンダードナンバーとなりました。様々なアーティストによる解釈は、この楽曲が持つ多様な魅力を引き出し、その生命力を現代に伝えています。この曲を聴けば、きっとあなたも「フィーリン・グルーヴィー」な気分になることでしょう。

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