DEV LARGE

DEV LARGE（D.L）: 日本ヒップホップ界の巨星

DEV LARGE（デヴラージ）、本名：今 秀明（こん ひであき）は、1969年11月24日に東京都渋谷区代々木で生まれ、2015年5月4日に急逝した日本のヒップホップミュージシャン、MC、トラックメイカー、プロデューサー、DJ、リミキサーです。1990年代には、伝説的なヒップホップグループBUDDHA BRANDのMC、リーダーとして活躍し、そのカリスマ性と革新的な音楽性で、日本のヒップホップシーンに多大な影響を与えました。2005年にはアーティスト名をD.Lに改名し、ソロアーティストとしての活動を本格化させました。また、自身のレーベル「EL DORADO RECORDS」と「DEVASTATOR RECORDING」を主宰し、多くのアーティストを輩出しました。

生い立ちとBUDDHA BRAND結成

小学4年生の時に親の転勤でニューヨークに移住し、中学卒業までを過ごしました。その後、日本に戻り高校を卒業。1988年に再び渡米し、ニューヨークでCQ、NIPPS、DJ MASTERKEYと出会い、ヒップホップグループ「うわさのチャンネル」を結成しました。1990年にグループ名をBUDDHA BRANDに改名し、本格的に活動を開始しました。

この時期、DEV LARGEはアメリカのヒップホップグループ、ウルトラ・マグネティック・MC'Sと親交を深め、彼らの楽曲「Two Brothers with Checks（The Four Horsemen）」のミュージックビデオにカメオ出演しました。1995年に日本に帰国し、LAMP EYEの楽曲「証言」に参加したことが、その名を日本のヒップホップシーンに知らしめるきっかけとなりました。

1996年5月22日、BUDDHA BRANDのMCとして、シングル「人間発電所」でメジャーデビューを果たしました。同年7月7日に開催された伝説的なヒップホップイベント「さんピンCAMP」では、BUDDHA BRANDとしての出演に加え、BUDDHA BRANDとSHAKKAZOMBIEのユニット大神としての出演や、LAMP EYEの「証言」のMCとしてもステージに立ち、その圧倒的な存在感を示しました。1998年には自身のレコードレーベル「EL DORADO RECORDS」を設立し、LUNCH TIME SPEAXやSUIKENなどの才能あるアーティストを世に送り出しました。

2000年までにBUDDHA BRANDはシングル4枚、ミニアルバム1枚、ベストアルバム1枚を発表しましたが、その後、BUDDHA BRANDとしての活動は休止状態となりました。

客演とソロ活動

BUDDHA BRAND時代から、DEV LARGEは多岐にわたる客演や楽曲提供にも積極的に取り組みました。2000年以降も、NIPPSの楽曲「GALAXY PIMP 3000」、「GOD BIRD」や、DJ MASTERKEYの楽曲「ONE LIFE」などに参加。また、ミクスチャーロックバンドYKZによるザ・モップスのカバー「御用牙〜牙のテーマ〜」では、NIPPSと共にラップではなく歌を披露し、新たな一面を見せました。2002年のフジロックフェスティバルでは、YKZのステージにNIPPSと共にゲスト出演し、BUDDHA BRANDの楽曲からのラップも披露しました。

2004年には加藤ミリヤのデビューシングル収録曲「夜空」のプロデュースを手掛け、「発電所使って全然いいから。せっかくだったら一緒に色々なことをやろう。BUDDHAのメンバーも集めるから」と加藤に語り、同曲ではBUDDHA BRANDの「人間発電所」をサンプリングしました。また、同シングルに収録されたリミックスバージョン「夜空〜DO THE BOBO JAMES RMX.〜CD version」には、NIPPS、CQと共にラップで参加しました。

2004年6月19日には、K DUB SHINEへのDIS曲「ULTIMATE LOVE SONG」を発表し、ビーフに発展しました。K DUB SHINEがアンサーソング「1 THREE SOME」を返すと、それに対して「前略ケイダブ様」を発表し、大きな話題を呼びました。

2005年3月30日、DEVLARGE THE EYEINHITAE名義で1stインストアルバム『KUROFUNE 9000』をLibyus Musicからリリース。このアルバムは、約1ヶ月という短期間で制作され、インストゥルメンタルの作品であることについては、「BUDDHA BRANDのリーダー、ラッパーというイメージを壊したかった」と述べ、自身がトラックメイカー、プロデューサー、コンポーザーであることを改めて示したかったとしています。

同年、BUDDHA BRANDのMC3名によってILLMATIC BUDDHA MC'sを結成し、新たな活動を開始しました。2005年11月23日には、D.L名義でシングル「D.L presents THE SINGLE ; MUSIC REVOLUTION β」をNeOSITEから発売。また、自身が過去にプロデュースした楽曲のコンピレーションアルバム『HIS MASTERS WORKS』も同日にリリースしました。

2006年4月12日には、シングル「盲目時代〜BLIND AGE 2006〜」をリリースし、同年11月29日には、初のスタジオ・アルバム『THE ALBUM (ADMONITIONS)』を発表しました。収録曲「鋼鉄のBLACK / PUNCHLINE B.B. & ミドリのBRUCE BURNER」のミュージックビデオが、SPACE SHOWER Music Video Awardsの「BEST HIP-HOP/R&B VIDEO部門」にノミネートされるなど、高い評価を得ました。

突然の死と遺産

2009年5月27日、日本のヒップホップの楽曲から選りすぐったコンピレーション・ミックスCD『HARD TO THE CORE version 1』をリリース。日本のヒップホップを立て直すプロジェクト「BACK TO DA HIP HOP」の下でDEV LARGEが完全監修し、MSCらによる「暴言」等の入手困難であった音源も収録されました。また、マイク・リレー物の楽曲が多く収録され、「そういうところでお得感を出したかった」と語っています。

2009年12月2日には、日本のヒップホップの楽曲から選りすぐったコンピレーション・ミックスCD『DJ BOBO JAMES a.k.a D.L.presents ABSOLUTELY BAD 〜日本語ラップ黄金期セレクション外伝〜』を発売。2000年前後に発表された楽曲を中心に選曲し、キミドリの「八方美人」等の入手困難であった音源も収録しました。

2010年4月からは、渋谷のクラブ「THE ROOM」にて、クボタタケシと共にイベント「DOUBLE SIDER」を開始しました。

2011年1月19日には、BUDDHA BRAND関連音源を使用したミックスCD『D.L presents : Official Bootleg Mix-CD "ILLDWELLERS" g.k.a ILLMATIC BUDDHA MC'S Mixed by MUTA』をcutting edgeより発売。BUDDHA BRANDのメンバーそれぞれのソロ作品や客演作品からも選曲され、ミックスはCQから紹介されたDJ MUTA（JUSWANNA）が担当しました。このミックスCDを制作することになったきっかけについて、「出来の悪いBUDDHA BRANDのミックスCDが半ばオフィシャルな状態で勝手に出されてる」との報告を受け、「変なもんをブッダのファンが掴まされないためにオフィシャルを作らなければならないと思わされた。」とコメントしています。

2011年5月11日には、BUDDHA BRANDや自身のソロ、プロデュース用に制作した未発表楽曲を収めた2ndインストアルバム『OOPARTS(LOST 10 YEARS ブッダの遺産)』をリリースしました。タイトルは、「場違いな工芸品」を意味するオーパーツと、色々な時代の様々な音楽からサンプリングして制作したことと照らし合わせて名付けられました。

2013年12月28日には、代官山UNIT+SALOONで行われたイベント「IN BUSINESS」に出演しました。

2014年9月26日には、自身が約10年前に発売し廃盤となっていたミックステープシリーズ『Ghetto Funk』をCDで再発売し、併せて新作『Ghetto Funk Vol.3』も発売しました。

Pヴァインとタワー[[レコード]]とのコラボレーションによるジャズ・ファンクに焦点をあてたミックスCDシリーズ企画『FREEDOM JAZZ FUNK』の第1弾として2014年12月24日に「Everything I Dig Gonna Be Funky」を、2015年4月2日には、第2弾「Mellow Storm」をリリースしました。

2015年5月4日早朝に急逝。その突然の訃報は、日本のヒップホップシーンに大きな衝撃を与えました。5月5日にKダブシャイン、ZeebraらがTwitter等のSNSで報じ、6日には所属レーベルのPヴァインによって公式に発表されました。同年6月25日には、東京・SOUND MUSEUM VISIONにて追悼イベント「D.L PRESENTS HUSTLERS CONVENTION NIGHT」が開催され、BUDDHA BRANDのメンバーであるCQ、NIPPS、DJ MASTERKEYのほか、ECD、ILLICIT TSUBOI、Kダブシャイン、SHAKKAZOMBIE、スチャダラパー、YOU THE ROCK★、RHYMESTERなど、多くのアーティストが出演しました。同イベントの模様は、7月15日（14日深夜）にスペースシャワーTVの番組『Black File』で放送され、DEV LARGEを偲ぶ対談などが紹介されました。

人物像

BUDDHA BRANDでは、全てのプロデュースを担い、自主のジャケット、ブックレット、フライヤー、Tシャツ等のデザインも手がけていました。膨大な数のレコードコレクターとしても知られ、ヒップホップ以外にもソウル、ファンク、ジャズ、ロック、日本の歌謡曲など、幅広いジャンルのレコードを収集していました。初めて買ったレコードは、小学生の時に日本で買ったダウンタウンブギウギバンドの『白昼の死角』、アメリカで初めて買ったレコードは、アフリカ・バンバータの『プラネット・ロック』だったそうです。

デビュー前には、ブルックリンの「ファンキー・スライス・スタジオ」でインターンシップとして働いていました。2009年のインタビューでは、一番カッコ良いと思う日本のラッパーとしてTWIGYとRINOの名前を挙げています。

アーティスト名であるDEVについては、アメリカのスラングで「FAT」は良いイメージであるにもかかわらず、日本での俗称である「デブ」にはネガティブイメージしかないため、それを変えたいと思ったこと、また、アジ（インドの神）デブ・ラ・アジから来ているそうです。LARGEについては、当時「LARGE」という言葉が流行していたことや、グラフィティ時に「DEV-L」を使用していたこと、アメリカの音楽プロデューサー、ラージ・プロフェッサーが好きであったことなどから付けられたそうです。2005年にソロ活動を本格化させるにあたり、MC名をD.Lに改名。DJでは主にBOBO JAMES名義を使用し、その他にも多数の別名義（aka）を持っていました。BUDDHA BRANDメンバーや関係者からは、本名をもじった「コンちゃん」や「ヒデ」などと呼ばれていました。

DEV LARGEは、その音楽的才能とカリスマ性で、日本のヒップホップシーンに多大な影響を与えた人物でした。彼の音楽への情熱と革新的な姿勢は、今もなお多くのファンを魅了し続けています。

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