ICD-10 第7章:眼および付属器の疾患

眼および付属器の疾患（H00-H59）について

この文書は、世界保健機関（WHO）が定める国際疾病分類（ICD-10）の第7章「眼および付属器の疾患」に分類される疾患を網羅的に解説したものです。ICD-10は、世界中で疾病の統計や疫学研究に使用される標準的な分類体系であり、眼科領域の疾患も詳細に分類されています。この一覧は、眼の構造や機能別に疾患を整理し、それぞれの病態を理解するための基礎となります。

(H00-H06) 眼瞼、涙器および眼窩の障害

H00 麦粒腫および霰粒腫: まぶたにできる炎症性の疾患で、麦粒腫は細菌感染による化膿性の炎症、霰粒腫は慢性的な炎症性疾患です。
H01 眼瞼のその他の炎症: 眼瞼炎、眼瞼の非感染性皮膚症、その他の眼瞼の炎症などが含まれます。
H02 眼瞼のその他の障害: 眼瞼内反や眼瞼外反、兎眼、眼瞼下垂など、まぶたの構造や機能の異常に関する疾患が含まれます。
H03 他に分類される疾患における眼瞼の障害: 全身性の疾患が原因で眼瞼に生じる障害を指します。
H04 涙器の障害: 涙腺炎、流涙、涙道の炎症や狭窄など、涙の生成や排出に関わる疾患を指します。
H05 眼窩の障害: 眼窩の炎症、眼球突出、眼球陥入など、眼球が収まっている骨のくぼみである眼窩に関する疾患です。
H06 他に分類される疾患における涙器及び眼窩の障害: 全身疾患に関連して生じる涙器や眼窩の障害を指します。

(H10-H13) 結膜の障害

H10 結膜炎: 結膜の炎症で、感染性やアレルギー性など様々な原因があります。
H11 結膜のその他の障害: 翼状片、結膜変性、結膜出血など、結膜の構造や機能の異常に関する疾患です。
H13 他に分類される疾患における結膜の障害: 全身疾患が原因で結膜に生じる障害を指します。

(H15-H22) 強膜、角膜、虹彩および毛様体の障害

H15 強膜の障害: 強膜炎、上強膜炎など、眼球の外層を構成する強膜の炎症性疾患です。
H16 角膜炎: 角膜潰瘍、表層角膜炎、角膜血管新生など、角膜の炎症性疾患です。
H17 角膜瘢痕及び混濁: 角膜の傷跡や混濁に関する疾患です。
H18 角膜のその他の障害: 角膜着色、水疱性角膜症、円錐角膜など、角膜の構造や機能の異常に関する様々な疾患が含まれます。
H19 他に分類される疾患における強膜及び角膜の障害: 全身疾患に関連して生じる強膜や角膜の障害を指します。
H20 虹彩毛様体炎: 虹彩や毛様体の炎症性疾患です。
H21 虹彩及び毛様体のその他の障害: 前房出血、虹彩や毛様体の血管障害、変性、癒着など、虹彩や毛様体の構造や機能の異常に関する疾患です。
H22 他に分類される疾患における虹彩及び毛様体の障害: 全身疾患に関連して生じる虹彩や毛様体の障害を指します。

(H25-H28) 水晶体の障害

H25 老人性白内障: 加齢に伴い水晶体が混濁する疾患で、最も一般的な白内障です。
H26 その他の白内障: 外傷性白内障、併発白内障、薬物誘発性白内障など、様々な原因で起こる白内障です。
H27 水晶体のその他の障害: 無水晶体、水晶体偏位など、水晶体の構造や機能の異常に関する疾患です。
H28 他に分類される疾患における白内障及び水晶体のその他の障害: 全身疾患に関連して生じる白内障や水晶体の障害です。

(H30-H36) 脈絡膜および網膜の障害

H30 網脈絡膜の炎症: 網膜と脈絡膜の両方に炎症が起きる疾患です。
H31 脈絡膜のその他の障害: 脈絡膜瘢痕、脈絡膜変性、脈絡膜剥離など、脈絡膜の構造や機能の異常に関する疾患です。
H32 他に分類される疾患における網脈絡膜の障害: 全身疾患に関連して生じる網脈絡膜の障害です。
H33 網膜剥離及び裂孔: 網膜が眼球壁から剥がれてしまう疾患です。
H34 網膜血管閉塞症: 網膜の血管が詰まって血液が流れなくなる疾患です。
H35 その他の網膜障害: 背景網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性など、網膜の様々な疾患が含まれます。
H36 他に分類される疾患における網膜の障害: 全身疾患に関連して生じる網膜の障害です。

(H40-H42) 緑内障

H40 緑内障: 眼圧の上昇により視神経が障害される疾患で、放置すると失明に至ることもあります。
H42 他に分類される疾患における緑内障: 全身疾患に関連して生じる緑内障です。

(H43-H45) 硝子体および眼球の障害

H43 硝子体の障害: 硝子体出血、硝子体混濁など、眼球内のゼリー状の物質である硝子体の障害に関する疾患です。
H44 眼球の障害: 化膿性眼内炎、変性近視、低眼圧など、眼球全体の疾患を指します。
H45 他に分類される疾患における硝子体及び眼球の障害: 全身疾患に関連して生じる硝子体や眼球の障害を指します。

(H46-H48) 視神経および視覚路の障害

H46 視神経炎: 視神経の炎症性疾患です。
H47 視神経[第２脳神経]及び視(覚)路のその他の障害: 視神経萎縮、乳頭浮腫、視交叉の障害など、視覚情報を脳に伝える視神経や視覚路の疾患です。
H48 他に分類される疾患における視神経[第２脳神経]及び視(覚)路の障害: 全身疾患に関連して生じる視神経や視覚路の障害です。

(H49-H52) 眼筋、眼球運動、調節及び屈折の障害

H49 麻痺性斜視: 眼球運動を制御する神経の麻痺によって生じる斜視です。
H50 その他の斜視: 共同性斜視、間欠性斜視など、神経麻痺以外の原因で生じる斜視です。
H51 両眼運動のその他の障害: 共同注視麻痺、輻輳不全など、両眼の動きに異常が生じる疾患です。
H52 屈折及び調節の障害: 遠視、近視、乱視、老視など、眼の屈折異常や調節機能の障害です。

(H53-H54) 視機能障害及び盲(失明)

H53 視覚障害: 廃用性弱視、複視、視野欠損、色覚異常、夜盲など、様々な視覚の異常を指します。
H54 盲(失明)及び低視力: 両眼または片眼の失明、低視力に関する疾患です。

(H55-H59) 眼及び付属器のその他の障害

H55 眼振及びその他の不規則眼球運動: 眼球が不規則に動く眼振やその他の異常な眼球運動に関する疾患です。
H57 眼及び付属器のその他の障害: 瞳孔機能異常、眼痛など、眼やその付属器に生じるその他の障害です。
H58 他に分類される疾患における眼及び付属器のその他の障害: 全身疾患に関連して生じる眼や付属器の障害を指します。
H59 眼及び付属器の処置後障害、他に分類されないもの: 眼科手術後の合併症など、医療行為によって生じた眼の障害です。

この一覧は、眼科領域の様々な疾患を包括的に理解する上で非常に役立ちます。各疾患の詳細については、専門の医療機関での診察と診断を受けることが重要です。

参考文献

標準病名マスター

外部リンク

標準病名マスター作業班 > ICD階層病名ブラウザ

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