KDDI通信障害 (2022年)

KDDI通信障害について

2022年7月2日午前1時35分頃から7月5日午後3時36分にかけて、KDDIの大規模な通信障害が発生しました。この障害は、au、UQ mobile、povoの回線を利用する全国のユーザーに甚大な影響を与え、携帯電話業界で過去最悪の規模とも言われています。

発生原因

障害の直接的な原因は、音声通話システムのトラブルでした。具体的には、ルーターの交換作業中に不具合が発生し、その切り戻し作業中にデータ整合性の問題が発生しました。この結果、VoLTE交換機に大量のデータが集中し、データ量を制限せざるを得なくなり、通信障害を引き起こしました。

影響範囲

KDDIによると、この通信障害は最大で3915万回線、3091万人以上の利用者に影響が出た可能性があるとされています。影響は多岐にわたり、以下のような事例が報告されています。

運送業務

ヤマトホールディングス：荷物の問い合わせシステムに障害が発生し、ドライバーとの通信が困難になりました。
日本郵便：JR貨物の遅延などの影響により、一部の荷物の配達が遅れる可能性が生じました。
フードデリバリーサービス：Uber Eatsなどで、KDDI回線を利用する配達員への注文通知が届かなくなり、業務が停止しました。

交通機関

JR貨物：荷物の積み降ろしシステムの不具合により、作業に遅延が生じました。
JR東日本：駅のテレワークブースの予約が一時的に利用できなくなりました。
JR西日本：山陰地区の列車内で乗車券が購入できなくなる可能性が生じました。
バス会社：京成バス、小田急バスなどでバスロケーションシステムが機能せず、東武バスや東京空港交通ではICカード決済に不具合が発生しました。
航空会社：日本航空では、成田空港と羽田空港で従業員用無線機が一時的に使用不能になりました。

自動車関連

自動車メーカー：トヨタ、スバル、マツダ、スズキのコネクテッドカーで通信不能となり、スマートフォンからの車両情報確認や緊急時のコールセンターへの発信ができなくなりました。
駐車場サービス：パーク24の電子決済システム「Times PAY」で決済が困難になりました。

金融機関

大垣共立銀行：店舗外ATM221台中190台が利用不能になりました。
琉球銀行：職員の業務用携帯電話が一時的に不通になりました。

電力

中部電力パワーグリッド：一部スマートメーターが機能せず、電力使用量の測定が一時的に不可能になりました。

ホームセキュリティ

セコム：高齢者見守りアプリなどが利用しづらくなりました。

医療

牧港中央病院（沖縄県）：看護師や院外医師との連絡が困難になり、PCR検査結果の伝達も滞りました。

食品

伊藤園：電話が繋がりにくくなりました。
広島市中央卸売市場：バイヤーとの連絡が取れず、一部野菜の出荷が滞りました。

新型コロナウイルス感染症自宅療養患者

東京都：1日あたり120～130人と連絡が取れなくなり、健康観察に支障が出ました。
石川県：一部自宅療養者77人と電話が繋がらない状況が発生しました。
長崎県：数人の自宅療養者と連絡が取れなくなりました。
沖縄県：重症化リスクのある自宅療養者約120人と健康観察のための連絡が取れなくなりました。

緊急通報の遅延

交通事故：石川県でバイクの自損事故が発生した際、運転手が携帯電話で通報できず、目撃者が非常電話で通報する事態となりました。
海難事故：鳥取県では、プレジャーボートが消波ブロックに乗り上げた事故で、乗船者が携帯電話で通報できず、約5時間後に他の漁師によって救助される事態となりました。
遭難事故：北海道の登山客が遭難した際、携帯電話が通じず、LINE通話を通じて知人に救助要請を依頼しました。

その他

アメダス：気象庁のアメダスの一部観測点でデータが受信できなくなり、全体の5%にあたる288箇所でデータが欠落しました。
イベント：電子チケットの表示が困難になり、主催者側が対応に追われました。
アーケードゲーム：タカラトミーアーツの「ワッチャプリマジ！」でオンライン機能が利用できなくなりました。
児童見守りシステム：品川区の「まもるっち」が一時的に利用できなくなりました。

対応

KDDIは、高橋誠社長が会見で謝罪し、その後、技術担当者が復旧の見通しを示しました。音声通話が24時間以上利用できなかったユーザーには返金が行われ、契約者全員に一律200円のお詫び金が支払われました。povo 2.0ユーザーには、返金の代わりにデータトッピングが行われました。沖縄セルラー電話も社長が謝罪会見を行いました。

MVNO契約者については、KDDIが返金対象外としていましたが、一部のMVNO事業者が独自に返金や補償を行いました。

総務省は、KDDIに早期復旧と顧客への周知を要請し、岸田総理の指示でリエゾンが派遣されました。金子総務相（当時）は、この通信障害を「重大事故」と認識し、KDDIの対応を「利用者目線で十分ではなかった」と批判しました。

復旧

当初、復旧目標は7月3日の午前中とされていましたが、作業の遅れにより、最終的に7月5日午後3時36分に全面復旧が宣言されました。総務省は、この通信障害を「重大なる事故」と指摘し、KDDIへの行政指導を行う方針を示しました。

その他

この通信障害の影響で、auショップにWi-Fiを求める顧客が訪れたり、KDDIのコールセンターに約9万件の苦情が寄せられました。


この通信障害は、現代社会における通信インフラの重要性を改めて認識させる出来事となりました。

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