LAMモザンビーク航空470便墜落事故

LAMモザンビーク航空470便墜落事故の真相

2013年11月29日、LAMモザンビーク航空470便（エンブラエル ERJ-190、機体記号C9-EMC）が、モザンビークのマプトからアンゴラのルアンダへ向かう途上、ナミビア東部のブワブワタ国立公園に墜落しました。この事故により、乗員乗客33名全員が犠牲となりました。

事故機の背景

事故機であるERJ-190（製造番号581）は、2012年10月に製造され、翌11月にLAMモザンビーク航空に納入されたばかりの新鋭機でした。総飛行時間は2,905時間と短く、モザンビーク航空が保有する機材の中では最新のものでした。事故前日の11月28日には、エンジンと機体の定期検査を受けており、機体に異常は見られませんでした。

事故の経緯

470便は、2013年11月29日午前11時26分（中央アフリカ時間）にマプト国際空港を離陸し、午後2時10分（西アフリカ時間）にルアンダのクアトロ・デ・フェベレイロ空港に到着する予定でした。しかし、ボツワナ上空を巡航高度11,582メートルで飛行中、突然毎秒30メートルの急降下を開始し、高度914メートルでレーダーから姿を消しました。

機体が予定時刻に到着しなかったため捜索が開始され、翌11月30日にブワブワタ国立公園の湿地帯で、焼け焦げた機体の残骸と犠牲者の遺体が発見されました。事故当時の天候は荒れており、飛行経路付近では豪雨となっていました。

事故原因の究明

事故原因の調査は、国家運輸安全委員会 (NTSB) とモザンビーク民間航空協会 (IACM) が中心となり、ボツワナ、アンゴラ、ブラジル、中国、ナミビアの専門家が参加して行われました。回収されたフライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）は、アメリカのNTSBの研究所で解析されました。

IACMは、2013年12月21日に予備調査報告書を公表し、機長が意図的に自動操縦の設定を変更し、機体を墜落させようとした「明確な意思」があったことを発表しました。報告書によると、機長はコックピットのドアをロックして閉じこもり、オートスロットルを切ってエンジン推力を手動で調整し、減速用のスポイラーを作動させました。さらに、自動操縦装置の飛行高度を3回にわたって変更し、最終的には地表よりも低い180メートルに設定していました。アブレウ氏は、「機長は墜落直前まで、様々な警報音や副操縦士によるドアを叩く音を聞いていたはずだ」と述べています。

機長がなぜこのような行動に出たのか、当初は不明でした。しかし、その後の調査で、機長が息子の自殺、娘の入院、離婚調停といった深刻な問題を抱えていたことが明らかになりました。これらの個人的な苦悩が、彼の精神状態に影響を与え、最終的に自らの命を絶つとともに、乗員乗客全員を巻き込むという悲劇を引き起こしたと考えられています。

事故の教訓

この事故は、パイロットの精神的な健康管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。また、航空業界全体で、同様の事故を未然に防ぐための対策を講じる必要性を示唆しています。

映像化

この事故は、航空事故をテーマにしたドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」の第18シーズン第9話「Cockpit Killer」で取り上げられました。番組に出演した捜査官は、「この事故の教訓が世界中で徹底されていれば、ジャーマンウイングス9525便墜落事故を防げたかもしれない」と述べています。

関連事故

日本航空350便墜落事故
ロイヤル・エア・モロッコ630便墜落事故
シルクエアー185便事故
エジプト航空990便墜落事故
* ジャーマンウイングス9525便墜落事故

LAMモザンビーク航空470便墜落事故は、航空史に残る悲劇として、私たちの記憶に深く刻まれています。この事故の教訓を忘れず、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、安全対策の徹底とパイロットのメンタルヘルスケアの充実が求められています。

もう一度検索