エジプト航空990便墜落事故

エジプト航空990便墜落事故

1999年10月31日、エジプト航空990便（ボーイング767-200ER）が、ニューヨーク発カイロ行きの飛行中、大西洋上で墜落し、乗員乗客217名全員が死亡するという痛ましい事故が発生しました。

事故の概要

事故機は、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港を離陸して約30分後、マサチューセッツ州ナンタケット島沖の大西洋上に墜落しました。アメリカ国家運輸安全委員会（NTSB）の調査によると、事故直前まで機体は正常に飛行していましたが、機長が席を外した際、副操縦士が「神を信頼する」と呟きながら、操縦桿を強く押し込み、急降下を開始したとされています。機長が操縦室に戻り、機体を立て直そうと試みましたが、副操縦士は抵抗し、機体は操縦不能に陥り、墜落しました。

事故調査の難航

事故調査は、機体の電源系統の故障により、フライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）の記録が途中で途絶えたため、難航しました。また、事故原因の究明をめぐり、エジプト航空とボーイング社との間で対立が生じました。

エジプト側は、「事故機の昇降舵に不具合があったことが原因である」と主張しました。これは、ムバラク大統領（当時）が事故直後に個人的な見解として述べたことが影響していると見られています。しかし、ボーイング767型機において、昇降舵の重大な不具合が報告された事例は過去にありませんでした。アメリカ側も機体の故障の可能性を検討しましたが、客観的な証拠は見つかりませんでした。

副操縦士の異常行動

一方、アメリカ側は、副操縦士の異常な行動に注目しました。副操縦士は、墜落直前に「神を信頼する」という言葉を繰り返し発し、自動操縦を解除して急降下操作を行っていました。機長の回復操作にも協力せず、不可解な行動が見られました。アメリカ側や遺族は、副操縦士の行為が事故原因であると断定しましたが、エジプト側は、昇降舵の不具合に対する必死のリカバリー操作であったと反論しました。

事故原因とされた副操縦士は、定年を3か月後に控えたベテランであり、事故当日はバックアップ要員でした。しかし、離陸後すぐに本来の副操縦士に交代を要請し、交代しています。また、事故前にセクハラ行為を繰り返していたことが証言されており、精神状態に問題があった可能性も指摘されています。

最終報告と真相

NTSBは、2002年3月に最終報告書を発表し、事故原因を「副操縦士の故意の操作によるもの」と断定しました。しかし、エジプト側はこれを認めず、機械的故障が原因であると主張しました。真相は解明されないまま、事故は深い闇に包まれています。

エジプト航空990便墜落事故は、航空史に残る悲劇であるとともに、事故原因をめぐる対立が、真相解明を困難にしている事例として、記憶されることでしょう。

映像化

メーデー!:航空機事故の真実と真相 第3シーズン第8話「EGYPTAIR 990」
実録世界のミステリー 2013年9月9日放送分

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