M18 (駆逐戦車)

M18 ヘルキャット：高速自走砲の解説

M18ヘルキャットは、第二次世界大戦中にアメリカ軍が運用した対戦車自走砲です。その名の通り、高速を生かした戦法を得意とし、敵戦車を撃破しました。ここでは、M18ヘルキャットの開発経緯、構造、運用、派生型について詳しく解説します。

開発の背景

アメリカ陸軍は、対戦車戦闘を主任務とする戦車駆逐大隊に、M4中戦車の車体を流用したM10を配備していました。しかし、より軽装甲で高速な車両が求められるようになり、ビュイック社が設計を担当し、M18の開発が始まりました。

M18は、エンジンにライト・コンチネンタルR-975を搭載し、装甲を薄くすることで軽量化を図りました。砲塔はオープントップ式とし、最大速度80km/hという驚異的な速度を実現しました。当初は37mm砲を搭載する予定でしたが、対戦車能力不足のため、57mm砲、さらに3インチ砲へと強化されていきました。これらの試作を経て、最終的に76mm砲を搭載したM18として制式化され、1943年7月から1944年10月までに2,507輌が生産されました。

構造

M18は、圧延鋼板を溶接で組み立てた構造で、当時のアメリカ戦車とは異なり、洗練されたシルエットを持っていました。エンジンはM3/M4中戦車と同じ空冷星型コンチネンタルR975ですが、車高を下げるために伝導シャフトを水平に配置する工夫が凝らされています。また、車体後部が開閉可能で、エンジンをガイドレールで引き出せるなど、整備性にも優れていました。

装甲は最大でも25.4mmと薄く、重量は18トン以下に抑えられています。しかし、トーションバー式サスペンションと相まって、路上最大速度80km/hという、当時の装軌式装甲戦闘車両としては世界最速を誇りました。車体には渡橋重量を示す「18」の数字が表示され、軽量であることが示されています。

乗員は5名（車長、操縦手、操縦助手、砲手、装填手）で、M24軽戦車と同様に、車体前部に操縦手と操縦助手が並んで座り、どちらも同じ操縦装置を備えていました。

武装

M18の主砲は、76mm M1A1/M1A1C/M1A2戦車砲で、M4A1(76)/M4A3(76)中戦車に搭載されたものと同等です。ドイツ軍の7.5cm KwK 40戦車砲や7.5cm PaK 40対戦車砲に匹敵する装甲貫徹能力を持ち、高速徹甲弾を使用することで、さらに高い性能を発揮しました。M1A1CとM1A2には、後にマズルブレーキが追加されましたが、大戦中の多くの車両には未装備でした。

敵戦車との遭遇率が低下すると、M18は火力支援任務に投入されましたが、76.2mm砲よりも榴弾の炸薬量の多い75mm砲の方が適していました。また、砲塔上部のリングマウントに12.7mm機関銃を搭載し、現地改造で7.62mm機銃を増設した車両も存在します。

戦歴

M18は、1944年1月のイタリア、アンツィオ上陸作戦から実戦に参加しました。その高い機動性を活かし、ヒット・エンド・ラン戦法で、M4シャーマンの弱点であった重装甲のティーガーやパンターの側面や後面に回り込んで撃破しました。アラクールの戦いでは、M18の小隊が14輌のパンターを一方的に撃破し、数日間で39輌のドイツ戦車を撃破するなどの戦果を上げています。

バルジの戦いでは、バストーニュの戦いで第705駆逐戦車大隊が活躍し、ドイツ軍戦車隊を翻弄しました。戦いが終結すると、M18は敵陣地への砲撃任務をこなし、大量の捕虜を獲得しました。ヨーロッパ戦線では216輌を失いましたが、それ以上のドイツ軍戦車を撃破し、キルレシオは2.3：1となっています。

太平洋戦線では、日本軍戦車に対して過剰な攻撃力と脆弱な防御力から、主に支援砲撃用の自走砲として使用されました。しかし、ルソン島の戦いでは、M18と日本軍戦車との交戦記録も残っています。ソ連にも試験用として送られましたが、雪上での機動性や燃費の問題から、採用は見送られました。

戦後

M18は、戦車駆逐大隊の解散とともにアメリカ陸軍から退役しましたが、武装のないM39は輸送用装甲車として朝鮮戦争で使用されました。また、多くの車両が友好国に供与・売却され、ユーゴスラビアでは映画の撮影に使用されたり、T-55の砲塔を搭載した自走砲に改造されたりしました。台湾では、M42対空自走砲の車体にM18の砲塔を搭載した「64式戦車」が開発されました。

各型

T49: 57mm砲を搭載した試作車両
T67: 75mm砲を搭載した試作車両
T70: M18の試作型
M18 90mm砲搭載型: 90mm砲を搭載した試作車両
M39: 砲塔を撤去し、装甲兵員輸送車に改造した車両
64式戦車: M42の車体にM18の砲塔を搭載した台湾軍の車両

登場作品

M18は、ゲームなどの様々なメディアに登場し、その高速性能を活かした活躍を見せています。

まとめ

M18ヘルキャットは、第二次世界大戦において、その高速性能を活かして活躍した対戦車自走砲です。そのユニークな設計と戦歴は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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