M75装甲兵員輸送車

M75装甲兵員輸送車

M75装甲兵員輸送車は、アメリカ合衆国で開発された装軌式の装甲兵員輸送車です。

概要

M75は1952年12月から1954年2月にかけて生産され、朝鮮戦争に投入されました。アメリカ軍では、より小型で安価、かつ水陸両用機能を持つM59装甲兵員輸送車によって代替されました。また、M75は軍事援助としてベルギーに供与され、これらの車両は1980年代初期まで使用されました。

本車の概算コストは72,000ドルであり、早期の生産停止を招いた要因の一つです。また、車高が高いことも否定的な要因となりました。加えて、空冷エンジンの吸排気口が小火器に弱いという指摘もありました。しかし、駆動機構の信頼性は、後継となったM59装甲兵員輸送車よりも優れていました。

開発

第二次世界大戦終結時に、M18駆逐戦車をベースとしたM44（T16）と呼ばれる全密閉式装甲兵員輸送車が開発されていました。M44は大型で、戦闘重量は約22,950kg、24名の歩兵と操縦士、砲手、車長を輸送可能でした。戦後、フォート・ノックスとアバディーン性能試験場で評価試験を受けましたが、陸軍はM44が大きすぎると判断し、採用を見送りました。当時の戦術教義では10名からなる歩兵分隊の輸送能力が求められていたためです。結果として、M44は少数のみが製造され、補助的な任務に就きました。

1945年9月21日、分隊規模の装甲兵員輸送車のための仕様が定められ、T43カーゴキャリアーの車体を基礎として開発が進められることになりました。1946年9月26日、4輌の試作車輌の製造契約がインターナショナル・ハーベスター・コーポレーション（IHC）と結ばれ、T18装甲多用途車輌の開発が承認されました。

原型であるT18E1は非武装で、M13キューポラにM2重機関銃を装備していました。評価試験前には、キューポラが様々な機銃マウントに換装されました。初期のモックアップには、2基の遠隔操縦式50口径重機関銃が装備され、車長と2名の銃手によって遠隔照準が可能でした。この場合の総搭乗員数は14名でした。

試作1号車T18では副操縦士が削除され、遠隔操縦式の機関銃は残されました。T18E1試作車は非武装となり、車長用の高いキューポラを備えていました。この車両は試作番号4と呼ばれることもあります。T18E2は、車長用キューポラをT122機銃マウントに換装し、30口径または50口径の機銃を装備可能でした。

試作車輌は6気筒コンチネンタルAO-895-2空冷ガソリンエンジンで駆動され、車体側面のグリルから排気を行いました。このエンジンは後にT18E1用のAO-895-4に換装され、車両前方から水平に配管されたパイプを通じて排気されました。

M75は、M41軽戦車と車体や緩衝機構の部品を多数共有しており、コンチネンタル空冷エンジンで駆動していました。クロスドライブトランスミッションを装備し、超信地旋回が可能でしたが、操舵は2本の垂直ハンドルを介して行われ、初期型車輌の側方への操縦はクラッチアンドブレーキ方式を想定していました。

1952年、受領試験後にT18E1はM75として生産に移るよう命令されました。M75はIHCで開発され、契約では1,000輌がIHCに、730輌がフード・マシナリー・アンド・ケミカル・コーポレーションに割り当てられました。製造中にコスト削減と複雑な設計の見直しが行われ、両側面にそれぞれ4箇所あったショックアブソーバーの数が2箇所に半減され、補助発電・暖房装置が撤去されました。2基のゴム製75ガロン燃料タンクは、1基の金属製150ガロン燃料タンクに換装されました。

製造が中止されるまでに、1,729輌が生産されました。

構造

M75は鋼製車体を溶接で組み立てており、装甲厚は2.5-3.8cmです。車体正面の装甲厚は4-5cmです。車輌総重量は約19,051kgです。

M75は、後のアメリカの装甲兵員輸送車とほぼ同一のレイアウトで作られています。操縦士は車体前方左側に座り、その右側には空冷水平対向6気筒コンチネンタルAO-895-4ガソリンエンジンが位置します。操縦士には4基のM17ペリスコープと、後期型ではM19暗視ペリスコープが装備されました。エンジンと操縦士席の後方には、車長が車輌中央に位置し、ハッチ周辺には6箇所のビジョンブロックが配置されています。車長のキューポラには通常、M2重機関銃が装備され、弾薬1,800発が車輌に搭載されました。車長の後方の大きな区画に歩兵が搭乗しました。追加装備として、M20スーパーバズーカ1門、ロケット弾10発、M1またはM2カービン1挺、小銃用弾薬180発が搭載されました。

エンジンは2,660rpmにおいて最大約295馬力（220kW）を出力し、最高速度69km/hを発揮しました。568リットルのガソリンを携行し、約185kmの航続距離を持っていました。車体両側面には5個の転輪と3個の上部転輪が装着されています。

性能

渡河深度: 48インチ (渡河キット使用時80インチ)
超えられない段差: 18インチ
超えられる溝: 66インチ
登坂能力: 60%

採用国

アメリカ
ベルギー
モロッコ

参考文献

R. P. Hunnicutt. Bradley, A History Of American Fighting and Support Vehicles. ISBN 0-89141-694-3
後藤仁「戦後の米軍装甲兵員輸送車」『グランドパワー』第285号、デルタ出版、2018年2月。

関連項目

G-ナンバーズ（G260）
M44 装甲汎用車

外部リンク

Armored Carrier Gives GIs Lift 1951年の記事、M75(T18E2)の詳細な写真あり

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