Mac OS 8

Mac OS 8は、Apple Computer（現Apple）が1997年9月26日にリリースしたオペレーティングシステム（OS）です。これは、漢字Talk 7.1以来、約5年ぶりとなる大規模なOSのアップデートであり、多くの新機能が、かつて野心的なOSとして開発されながらも失敗に終わったCoplandプロジェクトの技術開発から生まれました。1997年当時、Mac OS 8は、発売後最初の2週間で米国で120万本を販売し、ソフトウェアリリースとして大きな成功を収めました。

Coplandプロジェクト

Coplandは、1994年3月に初代Power Macintoshシリーズと共に発表された、次世代OS開発プロジェクトのコードネームでした。当初、System 8としてリリースされる予定でした。PowerPCネイティブのOSとして、マイクロカーネル、インテリジェントエージェント、GUIのテーマを変更できるアピアランスマネージャ、ハードウェアの抽象化、そしてFinderにはデータベースの統合が図られる予定でした。Coplandの後継であるGershwinでは、メモリ保護や完全なプリエンプティブマルチタスクが実現されるはずでした。CoplandはMac OSを完全に書き換えるものであり、AppleはMicrosoft Windows 95に対抗するために、わずか1年でリリースすることを目指していました。

しかし、Coplandの開発は遅延を重ね、リリース予定は度々延期されました。当初は1995年末とされていたのが、1996年、そして1997年へとずれ込んでいきました。プロジェクトの度重なる遅延により、Appleは500人もの開発者と25億ドルもの予算を費やすことになりました。その間、CEOや開発責任者も交代し、1996年8月には、前月就任したCTOのエレン・ハンコックによってCoplandプロジェクトは凍結され、Apple社外のOSを検討することが発表されました。その結果、AppleはNeXTを買収し、後のMac OS Xの開発へとつながることになります。

1997年1月のMacWORLD Expo/San Franciscoにて、当時のCEOギル・アメリオは、Coplandのリリース中止を発表しましたが、開発された機能は半年ごとに追加していくことを発表し、Mac OS 7.6をリリースしました。そして、その半年後、Mac OS 8.0がリリースされることになりました。

Mac OS 8.0

開発コード名Tempoとして開発されたMac OS 8.0は、米国では1997年7月26日、日本では1997年9月26日に日本語版がリリースされました。サードパーティへの最後のライセンスとして、1998年7月までUMAXに供給されました。

Mac OS 8.0の主な改良点と新機能は以下の通りです。

プラチナアピアランス：新しいユーザーインターフェースデザイン
PowerPCネイティブのマルチスレッド対応Finder：Finderの動作が高速化
ユーザーインターフェイスのカスタマイズ強化：より柔軟な操作環境
ことえり2.0による日本語入力機能強化：日本語入力がより快適に
フォルダナビゲーション：フォルダの操作性が向上
コンテキストメニュー：右クリックメニューの導入
ウィンドウシェード：ウィンドウをタイトルバーのみにする機能
カラーピッカーの改良：色選択機能の改善
インターネットへの対応強化：Webブラウジングの機能向上
QuickTime VR 2.0とQuickTime 2.5：マルチメディア機能の強化
Cyberdog 2.0：インターネット関連機能の追加
作業環境マネージャ：作業環境を保存・復元する機能
Web共有：ローカルネットワークでのファイル共有機能

Mac OS 8.1

Mac OS 8.1は、米国では1998年1月19日、日本では1998年2月18日に日本語版がリリースされました。Mac OS 8.0のユーザーには無償でアップデートが配布されました。68040搭載機をサポートする最後のMac OSです。信頼性とパフォーマンスの改善に重点が置かれ、新しいファイルシステムとしてHFS Plusが初めて採用され、大量のファイルや大きなファイルサイズ、大容量HDDをサポートしました。また、Microsoftとの提携により、Netscape Navigatorに代わり、Internet Explorer 3が標準アプリケーションとして設定されました。

DVD-ROM, UDFサポート：DVDメディアに対応
FAT32サポート：FAT32ファイルシステムに対応
Carbonサポート：Carbon APIを利用したアプリケーション開発をサポート
Mac OS Runtime for Java 2.0 (JDK 1.1.3サポート)：Javaアプリケーションの実行をサポート

Mac OS 8.5

Mac OS 8.5は、1998年10月17日に初めて世界同時発売されました。日本では、発売時に当時の原田永幸社長がシャーロック・ホームズの扮装で秋葉原を訪れたことが話題になりました。動作機種はPowerPC搭載機のみとなりました。発売直後には、Microsoft Office 98や日本語入力プログラムの不具合を修正するMac OS 8.5アップデートが配布されました。

インストーラの改良：OSインストールの操作性が向上
言語解析機能を利用したSherlockによる自然言語検索：高度な検索機能
標準でマルチリンガル対応：複数の言語をサポート（従来は別売のLanguage Kitが必要）
ネットワーク機能の高速化：通信速度の向上
AppleScriptのPowerPCネイティブ化と高速化：スクリプト実行速度が向上
ネットワークタイムサーバによる時間の自動補正：時刻を自動的に正確に保つ機能
インターネットを使ったユーザー登録：オンラインでの登録が可能

Mac OS 8.5.1

1998年12月21日にリリースされたMac OS 8.5.1では、以下の不具合修正と改善が行われました。

ドライブ設定
AppleScript
HFS Plus
Sherlockのプロキシ対応
ADB機器の認識
フォント表示

Mac OS 8.6

1999年5月10日にリリースされたMac OS 8.6では、マルチプロセッシングサービス2.x以降の開発者APIを使用した、プリエンプティブタスクを処理するMac OSナノカーネルのサポートが追加されました。これにより、PowerBookのバッテリー寿命が改善され、Sherlock 2.1が追加されました。この無料アップデートにより、システムの安定性と速度が向上し、起動画面にOSバージョンが表示されるようになりました。ただし、プロセス分離はまだなく、システムは依然としてプロセス間で協調的なマルチタスキングでした。マルチプロセッシングサービスは、ブルータスクで実行する部分があり、それを認識しない全てのプログラムを実行するタスク、および唯一のタスクが68kのコードを実行できました。

もう一度検索